世界情勢から見る、2017年のLGBT事情

January 1st, 2017

その5ヶ月後、アメリカでも同じことが…

 

「移民が職を奪っている」「自分たちの大切な税金が彼らに使われている」「働く人の賃金を彼らが押し下げている」等…これらの主張には聞き覚えがあるかもしれません。

この主張は11月に行われたアメリカ大統領選挙で勝利を納めたドナルド・トランプ次期大統領の主張とそのまま重なります。

彼は移民に対する厳しい態度を取るとともに、対抗馬のヒラリー・クリントン氏が、経済のグローバル化をリードして推し進めてきたウォール街の証券会社等から多額の献金をもらっていることを度々批判しました。

 

選挙活動中に何度も彼が叫んだ「America first」は、読んで字のごとく「自国第一主義」と言う意味であり、グローバル化が進みすぎた今、移民や様々なマイノリティが、多数派のアメリカ国民の平穏な暮らしを脅かしているという主張を繰り返しました。

その主張は、アメリカ国民がなんとなく思っていてもあまり口に出せなかった移民への不満や、マイノリティへの配慮などに疲れてしまっていた心理にうまく入り込み、支持を広げて行き、果てには彼を大統領の座へと導きました。

 

つまり、これまで様々なバックグラウンドを持った移民を受け入れ、彼らの働く意欲や野心をそのまま国家の原動力に変換させることで国を成長させてきたアメリカ合衆国という国が、イギリスに続いて「グローバリゼーション」から「ナショナリズム」に大きく舵を切ったというわけです。

 

つまり2016年という年は、20世紀後半から続いてきた「グローバリゼーション」を中心となって推し進めて来た2つの大国が相次いでその潮流から離脱した年として、歴史上重要な分岐点であったと記録されることになると思います。

 

 

2017年も続くと予測される「ナショナリズム化」の潮流

 

そして2017年も、世界のこの大きな流れは続くものと予測されています。

4月~5月にかけて、フランス大統領選が予定されています。

 

フランスと言えば、現職のオランド大統領が就任早々に同性婚を合法化するなどして、一時期脚光を浴びました。しかしここ最近では、移民による深刻なテロが多発しており、フランスに関するニュースは物騒なものが増えてきています。

その上、前大統領であるサルコジ氏も、現職のオランド大統領も、揃って雇用政策に失敗しており、共和党と社会党という既存の二大政党制に対する大きな失望感が国民の間には漂っていると聞きます。

 

そこに浮上したのが、国民戦線という極右政党です。彼らはまず、高止まりした失業率は、大量の移民を受け入れたことによるものだと主張しています。また、頻発するテロ事件とも絡め、フランス国民を脅かせる要因はすべて国外からもたらされたものであり、つまり、グローバリゼーションが進みすぎたことによって起きたものであると主張し、EUからの離脱や移民排斥などの公約を掲げています。

 

国民戦線自体は古くからある政党でしたが、長年少数政党として強い発言力は持たない組織でした。しかし、近年この政党は党勢を拡大し、ついには同党党首のルペン氏が次期大統領選の有力候補として名前が上がるほどの情勢になっています。

例えルペン氏が大統領に選ばれなかったとしても、一定の支持を集めている以上次期大統領はある程度は国民戦線の掲げている、ナショナリズム色の強い政策決定をしていく必要に迫られるかもしれません。

 

 

理想主義、性善説に立ちすぎたドイツの移民政策

 

そして、2017年の9月にはドイツの連邦議会選挙が予定されています。長年、堅実な政権運営と安定した経済情勢によって「ヨーロッパの優等生」「欧州連合の盟主」と呼ばれてきたドイツですが、2017年はドイツにとっても大きな転換期となるでしょう。

 

ドイツのメルケル首相は、東欧方面から難民や移民を大量に乗せた列車がドイツに到達し続ける現状を目の前にしても、人道的視点から難民を受け入れ続けました。

結果、ドイツには難民・移民が100万人以上も流入することとなり、受け入れ体制がパンク寸前になっていたのは、ニュースでも度々報道されていました。

 

つまり、ドイツも前述したイギリスやアメリカ、フランスと同じ状況に陥っており、国民の間でも難民や移民に対する反感が広まっています。(しかも、2016年暮れのクリスマスマーケットでもテロ事件が起きてしまいました)

こうした国民感情を反映してか、2016年にあった地方選挙では、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟は次々と惨敗。メルケル首相自身も、敗北の原因は移民政策にあったことを素直に認めています。

 

その代わりに躍進を遂げたのが、新興極右政党の「ドイツのための選択肢」です。この政党も、例によって移民排斥、欧州連合離脱を主張するナショナリズム色の強い政党です。連邦議会選挙を前に、この極右政党は支持率を伸ばし続け、2016年秋の世論調査では2大政党に次ぐ支持率を獲得するまでの勢いを見せています。

こうした現状を受けてか、メルケル首相は2016年12月に難民・移民の受け入れの厳格化と、ドイツ国内でのブルカ、ニカブ(イスラム教徒の女性が身につける黒いベール)の着用禁止を支持する声明を発表しました。

 

これは「ドイツのための選択肢」の躍進を受けた方針転換であることは明らかで、今後ドイツもナショナリズム的政策に転換して行くものと思われます。

 

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