全編iPhoneで撮影!トランス・コメディ映画『タンジェリン』監督インタビュー

January 8th, 2017

全編iPhoneで撮影したLGBT映画『タンジェリン』が、1月28日(土)より劇場公開される。

 

LA在住のトランスジェンダーを起用した、全く新しい「トランス・コメディ」として話題を呼んでいる本作を手掛けたショーン・ベイカー監督に、来日を機にインタビュー。

映画製作の秘話をたっぷりと語ってもらった。

 

 

©2015 TANGERINE FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

 

『タンジェリン』STORY

ロサンゼルスのクリスマス・イブ。街角のドーナツショップで一個のドーナツを分け合うトランスジェンダーの二人、シンディ(キタナ・キキ・ロドリゲス)とアレクサンドラ(マイヤ・テイラー)。

 

28日間の服役を終え出所間もない娼婦シンディは、自分の留守中に恋人がノンケの金髪女と浮気したと聞きブチ切れ。彼女を探し出してとっちめてやろうと街へ飛び出す。

歌手を夢見る親友のアレクサンドラは、その日の夜に自分が出演するライブのことで頭がいっぱい。さらに、彼女たちとも関係を持つアルメニア人の移民のタクシー運転手ラズミックも巻き込んで、カオスに満ちた1日がけたたましく幕を開ける!

 

以下、映画予告編。

 

 

 

米インディペンデント界の気鋭ショーン・ベイカー監督にインタビュー

 

ショーン・ベイカー監督(写真中央)
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なぜ全編iPhoneで撮影しようと思ったのでしょうか?

 

元々、脚本の開発をしている時から、「この予算では撮影できないな」と思っていました。

 

その時に、iPhone5Sが発売さればっかりで、カメラの性能が飛躍的に向上していると知りました。また、iPhoneには専用のアタッチメントをつけることで、映画並のワイド画面で撮れることがわかったんです。

 

そこで、低予算を逆手に取って、iPhoneを使った新たな表現技法にチャレンジしようと思いました。

 

 

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実際にiPhoneで撮影した際に感じたメリットとしては、とても秘密裏に撮影ができることですね。

役者の顔近くに寄って撮っても、役者が緊張感を感じずに演技ができる。また小回りが利くので密着した撮影にはとても便利です。

 

この映画は「とてもエネルギッシュだ」と評価されていますが、これはiPhoneの機敏性によるものが大きいです。

 

 

本作はトランスジェンダーをテーマにした映画ですが、このテーマを選ばれた理由とは?

 

まず最初に言っておきたいのは、この映画は全てのトランスコミュニティを代表するように描いているわけではなく、LAのトランスコミュニティの話、もっと狭めて言えばキキとマイヤの個人的なストーリーを描いています。

 

どうしてこの話を選んだかというと、本作のメイン舞台であるLAのハイランドとサンタモニカの交差点は、セックスワーカーが多くドラッグが横行する、LAで最も悪名高い地域として有名です。

 

 

実際にLAにあるドーナツショップで撮影を敢行
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私の作品は全て現実に則したストーリーですので、その地域をテーマに映画を撮りたいと考えました。

映画でセックスワーカーが主役であれば、その地域で多く存在するセックスワーカーに従事するトランスジェンダーたちを選んだのは、ごく自然の流れでした。

 

ただ、私自身も共同脚本家もシスジェンダーの白人男性ですので、トランスコミニティーからすると完全なアウトサイダーです。

 

なので、実際のトランスコミュニティと異った脚本やプロットを作るつもりは全くなく「まずはコミュニティについて知ろう」と思い、徹底的にリサーチを行いましたね。

 

リサーチを行う中で、運良く主人公のキキとマイヤに出会うことができました。

彼女たちは実際にその地区でセックスワーカーとして働くトランスジェンダーで、その地域を知り尽くしている存在でした。

彼女たちの体験談から、具体的にストーリーを構成していったという流れですね。

 

 

トランスコミュニティを知るために膨大なリサーチをされたんですね

 

私はいつも作品を撮る時に膨大なリサーチを行っています。撮るべき世界に我々が没入することが大事だと考えるからです。リサーチだけで1年掛かることもありますからね。

 

 

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今回の作品で私が大事にしたことは、全ての撮影の段階において、キキとマイヤに承認を取ることです。

 

彼女たちのみならず、彼女のトランスの友人たちの視点も含めて一緒に考えていきました。

映画が彼女たちに害を及ぼす内容であれば撮る意味がないとさえ思っています。

なので彼女たちと一緒に作り上げるという、とても密なコラボレーションが出来たと思っています。

 

 

今回大胆にも演技経験のない二人を主役として起用しましたね。彼女たちの演技はどうでしたか?

 

二人とも信じられないぐらい素晴らしい演技でした!

この二人の才能に出会えて、私は映画監督としてラッキーです。

 

あまり大っぴらに話してはいないのですが、二人以外にも複数のトランスジェンダーの方々をオーディションしたのですが、全くもってダメだったんです。

 

 

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またマイヤに至っては、トランスジェンダー女性としては史上初めて「ゴッサム賞」と「スピリット賞」の両方を獲得しました。もちろんキキも多くの映画賞にノミネートされて高く評価されているので、本作のキャスティングにはとても満足しています。

 

多くの映画監督は、キャスティングして撮影を進めているうちに「なんでこの人をキャスティングしてしまったのだろう…」と必ず思うものですが、今回は全くそれが無かったんです。最高のキャスティングでしたね。

 

 

二人の今後の活躍に期待できますね

 

キキとマイヤは才能に溢れる素晴らしい女優ですし、この二人を世間が高評価するならば、役者としての素晴らしい未来が待っていると思っています。

 

ただ、ハリウッドが変われるかは少し疑問です。

ハリウッドというのは、いつも責任を取るのが最後なんです。

 

インディペンデント作品がすべてをやり尽くしたあとに、重い腰を上げてやっと取り組んだと思ったら、全部自分たちが最初にやっていたかのような顔をする。

 

「ダイバーシティの欠如」がハリウッドにおける大きな課題ですね。

LGBTのみならず、女性、有色人種といったダイバーシティを考慮した役を与えるべきだと思っています。

これは何も役者に限ったことではなく、映画を作る側にも同じことがいえます。

 

映画におけるダイバーシティとは、カメラの前と、カメラの後ろ、その両方で起きなければいけないのです。

 

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