2016/05/13

ノースカロライナ州の「トランスジェンダー差別法」について、米司法長官のスピーチが話題に

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米司法長官のスピーチ

*ロレッタ・リンチ司法長官

 

米・ノースカロライナ州議会は今年の3月に、公的施設において自身の性自認ではなく、出生児の性別に基づいてトイレを使うよう義務付けるトランスジェンダー差別にあたる法案、通称「ハウスビル2」を通し、施行した。

 

トランスジェンダーの人々への差別に値するこの法律を懸念したオバマ政府は、議会と知事が州を性別と性自認に基づいた差別を禁止する連邦法と正反対の方向に導いたとして、法律の見直しを要求したところ、州は司法省に対して訴訟を起こした。これに対し、連邦政府も訴訟を提起し応戦することが5月9日の司法省による記者会見で明らかとなった。

 

ロレッタ・リンチ司法長官は記者会見で、これまでのアメリカ合衆国の平等への歩みの歴史を語りながら、ハウスビル2がいかに差別的で取り下げられるべきであるかを訴えた。

 

ちなみに、ロレッタ・リンチ氏といえば、アフリカ系アメリカ人女性として初の司法長官に就任した人物だ。

 

そのスピーチが、「キング牧師の『私には夢がある』演説に匹敵する」などとして、海外LGBTメディアを中心に話題を呼んでいる。

そのスピーチ全文日本語訳を以下に掲載する。(動画は下部にあり)

 

 

─スピーチ全文─

みなさんこんにちは。今日我々は、ハウスビル2として知られている、ノースカロライナ州の公衆施設におけるプライバシーと安全についての法令に対し重大な法的措置を執ることを発表いたします。

 

ノースカロライナ州議会は、今年の3月23日に特別議会にて、ハウスビル2を通過させました。この法案は、同州で最近通過した差別禁止条例を無効にするだけでなく、トランスジェンダーの人々に対して、公的施設において自身の性自認ではなく、出生児の性別に基づいたトイレの使用を命ずるものです。

法案は、即日署名され、法律になりました。法案の通過により、議会と州知事は、ノースカロライナ州を性別と性自認に基づいた差別を禁止する連邦法と正反対の方向に導きました。

さらに、彼らは、安全で最もプライベートな設備の利用をただ単に求めているトランスジェンダーの人々に対し、州をもってして差別を行ったのです。我々のほとんどが、この様な設備を利用する権利を当たり前に享受しているにも関わらずです。

 

先週、我々政府の公民権局は、州の官僚にハウスビル2が連邦公民権法に反することを伝えました。また、我々は彼らに、ハウスビル2が明記するトイレの利用の制限が実行されないよう、今日の終わりまでに証明することを求めました。我々は、ノースカロライナ州より証明の延期を要求されたため、前向きに検討していました。

しかしながら、ノースカロライナ州と州知事は今朝、我々の提案に答えるわけでも、証明書を提示するわけでもなく、司法省に対して訴訟を起こしました。彼らがそのような決断をするのであれば、我々も然るべき対応をします。

 

本日、我々はノースカロライナ州、ノースカロライナ州知事パット・マクロリー、ノースカロライナ州公安局、そしてノースカロライナ大学に対して連邦公民権訴訟を起こしました。我々はこの訴訟で「ハウスビル2のトイレ利用の制限は容認できないほど差別的であり、法律の施行を禁止する」という判決が下されることを求めています。また我々はそのような判決を求める一方で、ノースカロライナ州公安局とノースカロライナ大学に対する政府の資金援助を削減する選択肢も持っていることをここに明言しておきます。

 

この訴訟は、トイレについて以上のことを扱っているのです。これは、我々国民の尊厳と尊重、そして我々全国民を守るために施行してきた法についての訴訟なのです。これは、我々がつまずきながらも決して諦めずに求め続けてきた、全ての国民への公平性、受容性、平等性についての、またこの国を導き続けてきた建国の精神についての訴訟なのです。

 

我々の国が前進する歴史的な瞬間に、差別的な反応を受けるのは、これが初めてのことではありません。

我々は、奴隷開放宣言の後にジム・クロウ法を見ました。我々は、ブラウン判決の後に過激で広範囲にわたる反対運動を見ました。我々は、同性愛者のいつか結婚することができるかもしれないという希望を潰すかのように急激に増えた、同性カップルのシビル・ユニオンを禁止する多くの州を見ました。

 

もちろん、同性婚は現在、我々の憲法においてしっかりと保証されていますが、これまでの歴史的な勝利に漏れず、我々は今、LGBTコミュニティを狙った州による法案を次から次へと見ています。このような反応の中には、知らないものに対して人間が抱く恐怖や不確かな変化に対する不快感が反映されているものもあるでしょう。

しかし、今は恐怖を行動に表す時ではありません。今は、我々国民の美徳、受容性、多様性、共感、広い心を呼び起こす時です。我々が、何があっても絶対にしてはいけないこと、それは、我々の隣人や家族、国民を彼ら彼女らがコントロールできない何かについて攻撃すること、そして彼ら彼女らを人間たらしめることを否定することです。そのような理由で我々は、州がアイデンティティについての法を制定しようと首を突っ込んだり、ある人がその人でない何かであると主張したり、差別やハラスメントを起こす根拠のない問題を生み出したりすることを黙って見過ごすわけにはいかないのです。

 

私の出身地、美しい州であるノースカロライナに住む人々に言いたいことがあります。「この法律は、弱い人たちを害悪から守るものだ」と教えられていると思いますが、それは事実ではありません。それどころか、この法律はこれまで必要以上に苦しんだ人々に更なる侮辱を与えるものです。この法律は社会に何の利益ももたらしません。ただ、罪のない国民に害を与えるだけです。

 

我々の隣人から、友人や同僚から顔を背ける代わりに、歴史から学び、過去の過ちを繰り返すことを避けようじゃありませんか。

州が認めた差別が、後になってよく見えたことなんて一度もないという、当たり前だけど無視されがちな教訓を反映しようではありませんか。ノースカロライナ州を含めた合衆国全土で、トイレや水飲み器、様々な公共施設に標識を設け、無用な区別をもとに人々を締め出していたのは、それほど前の話ではありません。我々は、あの暗い日々は乗り越えましたが、苦痛や苦悩、闘いが前進し続ける中で無いわけではありません。今回は、違うストーリーを書きませんか。恐怖や誤解を行動に表すのをやめて、受け入れることを、多様性を、この国を素晴らしいものにする全ての敬意を行動で表しませんか。

 

トランスジェンダーの人々に対しても言いたいことがあります。

何十年も自由に生きてきた人たちもいるでしょう。その一方で、どうすれば生まれた通りに、ありのままに生きることができるかと悩んでいる人たちもいます。

 

例えあなたが今日どんなに孤独や恐怖を抱えていても、司法省そしてオバマ政権は、あなたたちを見ています。あなたの側に立っています。あなたの将来を守るためにできることはすべてやります。それを知ってください。そして、歴史はあなたの側にあるということを知ってください。

この国はすべての人の平等の権利の約束と共に建国されました。そして私たちは、少しずつ、一日また一日と、どうにかその約束に近づいてきました。簡単では無いかもしれません。でも、私たちはきっとそこへ辿り着きます。

 

 

 

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