家を借りるのにもカミングアウト?「LGBT入居可能物件」騒動を受けて

February 22nd, 2017
文:英司(コラムニスト)

 

春の訪れを感じつつも、花粉症に悩まされている筆者ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 

そんな最中、下記のようなニュースが飛び込んで来ました。

 

賃貸サイト「SUUMO」、LGBT入居可能物件の検索サービス開始へ

 

LGBT当事者の中でも歓迎の声と疑問を呈する声など、賛否両論が巻き起こっている本件ですが、今回はこちらのテーマを扱いたいと思います。

 

 

 

 

賃貸契約にLGBT差別があると言うけど、実際のところどうなの?

 

NHKの出典元の記事(2017年2月22日現在削除済)によると、賃貸住宅を契約する際に、LGBTであるがゆえに制限されたり、賃貸契約を結べないケースなどに当事者たちが苦しめられたりしている、とのこと。

 

筆者も最初は「?」という印象を受けましたか、どうやらこれは、主に男性同性愛者が同棲をする際に同性同士での入居であるがゆえに入居を断られるケースがある、ということらしいです。

 

筆者は社会人になってからずっと単身住まいで、同棲やルームシェアをしたことがないため、本当にそのようなケースがあるのかわからなかったので、周囲の同棲を経験した友人などに聞いてみました。

 

近年はルームシェアをする人が増えて来たため断られることも少なくなって来たようですが、数年~10年前くらいまでは、やはり同性同士であるがゆえに断られるケースも珍しくなかったようです。

 

 

これは本当に「LGBT差別」」案件なのか

 

引き続き本件を追って行く中で当事者の声や続報のニュースをよくよく聞いてみると、入居を断られたケースとして最も見られたのは「男性同士であることを理由に入居を断られた」というものです。

 

大家さんや管理会社側の言い分として、「男性同士は部屋の使い方が汚い」という理由を挙げていますが、これは先入観に他なりません。しかしながら、そこに「LGBT」や「同性愛」という言葉や概念は出てきません。

 

つまりこれは単なる「男性差別」案件であり、確かに結果として男性同性愛者が不便な思いをしてはいるものの、「LGBTが差別されている」と結論付けるにはやや飛躍が起きているかな、と感じたのが筆者の印象です。

 

 

「ペット可」「楽器可」「LGBT可」…

 

NHK NEWS WEBで報道されたところによると、住宅情報サイトのSUUMOでは、LGBTの入居が可能だと謳う賃貸住宅の情報について、2017年3月から物件のサイトへの登録を開始し、夏頃を目処に検索できる機能を搭載するようになるそうです。

 

出典:NHK NEWS WEB

 

つまり、同性同士の入居ができる家を探しやすくなることを売りにし、LGBTマーケットの支持を狙おうという試みのようですが、当事者たちの支持を得るのはそう簡単なことではなさそうです。

 

今後、サイトには □ペット可 □楽器可 のようなチェックボックスに並んで □LGBT可 なんてチェックボックスが加えられるわけですが、ペットや楽器などと同列に並べられることに対して、SNS上等で不快感を呈する声も聞かれました。

 

 

家を借りるくらいのことでカミングアウトが必要?

 

本件を見ていると「カミングアウト」に対する一般当事者たちの考え方と、LGBTアクティビストやアライ(LGBTの支持者)の考え方との間にかなりの隔たりがあると思いました。

 

多くの一般当事者にとってカミングアウトは、極力不必要な場面では避けたいものであり、それが周囲との摩擦を生む可能性があれば黙っておくべきこと、という心得で生活をしているように見えます。

 

そう考えている当事者にとって、これまでセクシュアリティとはまったく関係のなかった家探しという日常の行動についてもカミングアウトの必要性が発生してきたことに、不安感を覚えた人もいたのではないかと思います。

 

むしろ、勤め先や収入、家賃の支払い能力という高度な個人情報を開示している大家さんや管理会社に対し、それらとは無関係なセクシュアリティという非常にプライベートな情報を不本意に知られることに対し、安心感よりも「プライバシーを侵害される」と不安を感じた人がいても不思議ではありません。

 

今後、当該のサイトでLGBT可物件にチェックを入れ、不動産屋さんの窓口で自分たちを同性愛者のカップルであると公言して家を探す人はそこまで増えないのではないかと、筆者は見ています。

 

それよりも、既にある「ルームシェア可」のチェック項目について、(セクシュアリティの如何にかかわらず)同性同士であることを理由に入居を断ってはいけない等、その掲載基準をより厳格に設定することの方が、「極力明確なカミングアウトは避けたい」と考える当事者のニーズには寄り添った形なのではないかと思いました。

 

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