ドラァグクイーンを追ったドキュメンタリー『Berlin Transgression』寺田監督にインタビュー

February 23rd, 2016

 

ドラァグクイーン、LGBTカルチャーに密着したドキュメンタリー映画『Berlin Transgression』が、2016年に公開を予定している。

 

各国のLGBTメディアで話題になっている本作を中国人監督キュー・レイと共に手掛けたのは、若き日本人監督の寺田悠紀さんだ。

そこで、同作品を撮った経緯、1年間のドラァグ&LGBTコミュニティを取材して感じたことを聞いてみた。

 

映画『BerlinTransgression』とは?

ベルリンのドラァグクイーン、トランスジェンダーのアーティスト達に密着したドキュメンタリー映画。「女装」に着目し、パフォーマンスを通してアイデンティティーを発見する人々の内面に迫り、LGBTコミュニティ、広くは社会問題について検討する作品となっている。(2016年夏公開予定)

公式サイト『Berlin Transgression』

 

 

 

 

まず本作を製作した経緯についてお聞きしたいです。

寺田悠紀さん:ごくごく自然発生的でした。実は今作が私の監督デビュー作なのですが、ずっとドキュメンタリーを撮りたい思いがあったんです。人間の内面に迫る作品を撮りたくて、ドラァグクイーンの方って、ステージの上で仮面を被っていて、だけどそうではない素顔も隠されていて、その多面性に魅力を感じました。

 

具体的なキッカケは、米人気番組『ル・ポールのドラァグレース』に出演するデトックスさんという有名なドラァグクイーンがベルリンに来ることを聞きつけ、ショーを見に行った際に、地元のドラァグ達が只者じゃないオーラを放っていたんですね。

そんな彼らに話しを聞いてみて「彼らをテーマにしたドキュメンタリーを撮りたい!」という思いからスタートしました。

 

製作は2014年11月から撮影を開始して、約1年掛けてパフォーマー達に密着撮影を敢行しました。

 

 

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© Berlin Transgression

 

寺田さん自身はLGBT当事者ではないとお聞きしましたが、なぜ、ドラァグクイーンやLGBTコミュニティに興味を持ったのでしょう?

私自身はセクシャリティにあまりこだわってはいません。女子校育ちで、「ガールズ・ビー・アンビシャス!」(少女よ、大志を抱け)と言われてきたこともあって、女性だから、男性だからこうすべきだということは無いのではと思っています。

また、マイノリティという概念も疑問に思います。というのも、アジア人である私はドイツにいるとマイノリティだし、セクシュアルマイノリティといわれるLGBTの中では白人ゲイがマジョリティだったり・・・。場所や環境によって作り出されたマイノリティ・マジョリティの概念にとらわれるよりも、一人一人がお互いを認めあえる社会になったらいいですよね。

 

ドラァグや女装への興味についてですが、昔から「フィーメール・インパーソネーター(女性有名人のモノマネ)」には注目していました。

子供の頃、グッチ裕三さんの”ティナ・ターナー”のモノマネを見て衝撃を受けたんです。男性が女性の格好をしているということよりも、ものすごい迫力に驚きました。

ドラァグや女装が、差別や偏見を生み出すこともある社会の規範に一石を投じる政治的な役割を果たしていると知ったのは、もう少し後になってからです。

 

ドラァグクイーン達を見ていると、笑いあり涙ありのウィットに富んだパフォーマンスで、大きなエネルギーを貰えます。

 

 

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© Berlin Transgression

 

1年もの間パフォーマー達に密着したとのことですが、ベルリンのクラブカルチャー、ドラァグ文化を体験してどうでしたか?

ベルリンのゲイクラブはすごく盛り上がっているように感じますね。小さなゲイバーもあれば、フロアがいくつもある大規模なクラブまであります。

LGBTコミュニティやそこに生きる人々のことを知るために、撮影以外のときにもバーやクラブにはよく通っていたのですが、そこには週末必ず顔を出す人たちがいます。そして人々はドラァグのパフォーマンスを心から楽しみにしているんです。

 

ベルリン全体でいうと、人々は決して裕福ではありません。

中古品を大事にする文化がありますし(日本だと新品を大事に扱うが)、カーシェアリングなども盛んです。

ベルリンは資本主義と社会主義が両立していた特異な都市なので、様々なカルチャーや価値観に溢れています。移民もすごく多いですね。そういう背景があるからか、LGBTコミュニティもオープンです。

ドラァグクイーンたちも、自分たちのことをチープ・クイーン(安物クイーン)とか、Trashy(がらくたのような)と言って笑っています。衣装を貸しあったり助け合ったりして、切り詰めながらショーの準備をするので、コミュニティのサポートがとても重要です。

 

 

今回密着した人々からどのような印象を受けましたか?

今回、メインで密着したのは7人でしたが、ゲイもいれば、トランスジェンダー、またはドラァグキング(男装版ドラァグ)もいました。

ドラァグクイーンとしてパフォーマンスをしているうちに、そちらのほうが本当の自分だと感じ、性別変更した方もいます。

 

「ドイツ人は日本人と似ている」といわれる通り、最初はガードが固い人が多いですが、心を開くとすごく信頼してくれます。取材にこたえてくれた方たちはすごくオープンに、人生経験を語ってくれました。

 

 

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© Berlin Transgression

 

また、彼らは日々裕福とはいえない暮らしをしながらもステージに立ち続けています。DJやバーテンダーとしての仕事と両立したり、昼間美容師、雑誌編集社での仕事などをこなした後、完璧なメイクと衣装に着替えパフォーマンスに臨んでいます。

すごく小さなステージであっても、サウンドチェックやリハーサルをしっかりやって、気を抜かないんです。並大抵の努力と熱意がなければ出来ないですよね。

 

次ページ >> 彼らがステージに立ち続ける理由とは?

 

 

ドラァグクイーン、LGBTカルチャーに密着したドキュメンタリー映画『Berlin Transgression』が、2016年に公開を予定している。

 

各国のLGBTメディアで話題になっている本作を中国人監督キュー・レイと共に手掛けたのは、若き日本人監督の寺田悠紀さんだ。

そこで、同作品を撮った経緯、1年間のドラァグ&LGBTコミュニティを取材して感じたことを聞いてみた。

 

映画『BerlinTransgression』とは?

ベルリンのドラァグクイーン、トランスジェンダーのアーティスト達に密着したドキュメンタリー映画。「女装」に着目し、パフォーマンスを通してアイデンティティーを発見する人々の内面に迫り、LGBTコミュニティ、広くは社会問題について検討する作品となっている。(2016年夏公開予定)

公式サイト『Berlin Transgression』

 

 

 

 

まず本作を製作した経緯についてお聞きしたいです。

寺田悠紀さん:ごくごく自然発生的でした。実は今作が私の監督デビュー作なのですが、ずっとドキュメンタリーを撮りたい思いがあったんです。人間の内面に迫る作品を撮りたくて、ドラァグクイーンの方って、ステージの上で仮面を被っていて、だけどそうではない素顔も隠されていて、その多面性に魅力を感じました。

 

具体的なキッカケは、米人気番組『ル・ポールのドラァグレース』に出演するデトックスさんという有名なドラァグクイーンがベルリンに来ることを聞きつけ、ショーを見に行った際に、地元のドラァグ達が只者じゃないオーラを放っていたんですね。

そんな彼らに話しを聞いてみて「彼らをテーマにしたドキュメンタリーを撮りたい!」という思いからスタートしました。

 

製作は2014年11月から撮影を開始して、約1年掛けてパフォーマー達に密着撮影を敢行しました。

 

 

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© Berlin Transgression

 

寺田さん自身はLGBT当事者ではないとお聞きしましたが、なぜ、ドラァグクイーンやLGBTコミュニティに興味を持ったのでしょう?

私自身はセクシャリティにあまりこだわってはいません。女子校育ちで、「ガールズ・ビー・アンビシャス!」(少女よ、大志を抱け)と言われてきたこともあって、女性だから、男性だからこうすべきだということは無いのではと思っています。

また、マイノリティという概念も疑問に思います。というのも、アジア人である私はドイツにいるとマイノリティだし、セクシュアルマイノリティといわれるLGBTの中では白人ゲイがマジョリティだったり・・・。場所や環境によって作り出されたマイノリティ・マジョリティの概念にとらわれるよりも、一人一人がお互いを認めあえる社会になったらいいですよね。

 

ドラァグや女装への興味についてですが、昔から「フィーメール・インパーソネーター(女性有名人のモノマネ)」には注目していました。

子供の頃、グッチ裕三さんの”ティナ・ターナー”のモノマネを見て衝撃を受けたんです。男性が女性の格好をしているということよりも、ものすごい迫力に驚きました。

ドラァグや女装が、差別や偏見を生み出すこともある社会の規範に一石を投じる政治的な役割を果たしていると知ったのは、もう少し後になってからです。

 

ドラァグクイーン達を見ていると、笑いあり涙ありのウィットに富んだパフォーマンスで、大きなエネルギーを貰えます。

 

 

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© Berlin Transgression

 

1年もの間パフォーマー達に密着したとのことですが、ベルリンのクラブカルチャー、ドラァグ文化を体験してどうでしたか?

ベルリンのゲイクラブはすごく盛り上がっているように感じますね。小さなゲイバーもあれば、フロアがいくつもある大規模なクラブまであります。

LGBTコミュニティやそこに生きる人々のことを知るために、撮影以外のときにもバーやクラブにはよく通っていたのですが、そこには週末必ず顔を出す人たちがいます。そして人々はドラァグのパフォーマンスを心から楽しみにしているんです。

 

ベルリン全体でいうと、人々は決して裕福ではありません。

中古品を大事にする文化がありますし(日本だと新品を大事に扱うが)、カーシェアリングなども盛んです。

ベルリンは資本主義と社会主義が両立していた特異な都市なので、様々なカルチャーや価値観に溢れています。移民もすごく多いですね。そういう背景があるからか、LGBTコミュニティもオープンです。

ドラァグクイーンたちも、自分たちのことをチープ・クイーン(安物クイーン)とか、Trashy(がらくたのような)と言って笑っています。衣装を貸しあったり助け合ったりして、切り詰めながらショーの準備をするので、コミュニティのサポートがとても重要です。

 

 

今回密着した人々からどのような印象を受けましたか?

今回、メインで密着したのは7人でしたが、ゲイもいれば、トランスジェンダー、またはドラァグキング(男装版ドラァグ)もいました。

ドラァグクイーンとしてパフォーマンスをしているうちに、そちらのほうが本当の自分だと感じ、性別変更した方もいます。

 

「ドイツ人は日本人と似ている」といわれる通り、最初はガードが固い人が多いですが、心を開くとすごく信頼してくれます。取材にこたえてくれた方たちはすごくオープンに、人生経験を語ってくれました。

 

 

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© Berlin Transgression

 

また、彼らは日々裕福とはいえない暮らしをしながらもステージに立ち続けています。DJやバーテンダーとしての仕事と両立したり、昼間美容師、雑誌編集社での仕事などをこなした後、完璧なメイクと衣装に着替えパフォーマンスに臨んでいます。

すごく小さなステージであっても、サウンドチェックやリハーサルをしっかりやって、気を抜かないんです。並大抵の努力と熱意がなければ出来ないですよね。

 

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