正面 × 愛とセックス vol.14 ─ 30代 ゲイ 会社員 ─

August 9th, 2017

「あなたにとって、愛とは、セックスとは、何ですか?」

 

本来、人も愛もセックスも多様であり、個人の恋愛を他人がジャッジするものではない。

「正面×愛とセックス」は、”普通に”生きるLGBT当事者の愛とセックスについて、赤裸々に語ってもらうインタビュー連載です。

 

── 30代 ゲイ 会社員 ──

 

 

 

 ーあなたにとってセックスとは何ですか

 

子供の頃は、同性愛者とか異性愛者って概念がそもそも無かった気がします。誰かに対して淡い恋心を抱く事も全くなかったんで。幼稚園~小学校と女の子からとてもモテてたんですが、そういう事に全く興味がなかったんで。

 

中学からは男子校に進学したんですが、野球部に所属していたクラスメイトを好きになりまして。それが初めて人を好きになったという経験です。ただ当時は、自分が同性愛者だとは思わなかったんです、今は男子校にいるからたまたま男性を好きになっちゃんたんだって。だから大学に行ったら普通に女性を好きになって、彼女が出来たりするんだろうなってボンヤリ考えてました。

 

大学は文学部に進学しました。そこは女子率が65%くらいのところだったんですが、それでも女性に目が行かなかったんですね。その時に、自分はゲイだったんだって気付いたんです。

それからは絶望しまして。

 

大学では日本文学専修で近代~現代文学を学んでいて、そこにはまだ救いがあったんです。三島由紀夫とか森鴎外とか、かなりゲイ濃度が高いというか、所謂ホモセクシュアルというか。でも大多数の小説も含めた芸術は、異性愛者の為に作られたものなんだなと。だとしたら、自分にはこれらの芸術を絶対に理解出来ないって。

 

当時も同性愛者が題材の映画や小説があるにはあったんでしょうけど、もともと古典思考が強くて黒澤映画とか小津映画とかを好んで観ていたので、そういうのに触れる機会が無かったんです。それからはとにかく悩みまして…精神科に通ったりしつつ大学は無事四年で卒業したものの、そんな状態だったので就職することも出来ず。

 

その頃、横浜トリエンナーレが開催されたんですが、そこで観た作品に相当な衝撃を受けまして。今でも心の支えにしているんです。フェリックス・ゴンザレス=トレスというキューバ出身のアーティストで、彼は既に1996年にエイズで亡くなっていたんですが、出展されていたのが「プラシーボ」という作品でした。

 

その作品のコンセプトが秀逸なんです。作品自体は銀紙に包まれたキャンディが床一面に敷き詰めてあるだけなんですが、そのキャンディの量っていうのが、彼自身がが亡くなった日に測った体重と同じだけの重さなんです。で、来場者がそのキャンディを一個づつ持って帰る事で、作品が完結するんです。勿論それは食べても良いし取っておいても良いんですが。これが相当刺さりまして。

 

何ですかね…何が刺さったんですかね。キューバって社会主義国じゃないですか、そもそもポルノ自体も見てはいけないような国からニューヨークに逃げてきて…作品を産み続けて…相当な覚悟を持って生きてこられたんでしょうけど、それでも死ぬまでに出来た事はたったそれだけ。他人からすれば、たったキャンディ一個分くらいしかないっていう。そのメッセージ性ですかね。

 

どう考えてもストレートとかセクシャルマイノリティに関わらず、一回こっきりしか生きられないのでね。誰にでも不公平があるのは当たり前で、それは受け入れる受け入れないの問題じゃなく、本人の意思とは関係なく人生は始まってしまうのだから、自分が自分である事を人生の早い段階で覚悟して生きていく方が、建設的だなってことに気付かされたんですよね。それからはアルバイトしつつ、音楽やデッサンも勉強しながら、少しづつ元気になっていったって感じですね。

 

 

初めて性行為に及んだのは、ゲイアプリを知ってからなので最近です、7年前ですよ。30歳になる前でした。最初はすごく緊張しましたし、後ろめたかったです。それに、自分が見られる側というか値踏みされる側になってるというのが衝撃でしたね。ビックリしました、女性はきっとそういうのに慣れてると思うんですけど、男性はそういうの慣れてませんから。

 

ただ、後ろめたさも緊張もありましたけど、ある側面では凄くホッしました。そもそもハグとかキスとか人の肌に直に触れる機会っていうのがなかったので、こんな幸せな営みがあるんだなって思いました、画期的な営みというか。仲間がいることに安心したし…なんでしょうね、触ってる間、抱きしめてる間も、良いホルモンが出てるなと。それからは、なるべく色んな人と経験した方が良いよという、友人達からの助言もあったのでね。折角なんで、肌や国や宗教に関わらず色んな人に会ってみたいし肌を合わせたいなって。今も実践中です(笑)

 

自分はどちらかというとサービスする方が好きでして。ただ、サービス精神を出しすぎちゃうところがあって、それが行き過ぎてた時期もございまして。昔、HIVに感染してるんだって人と知り合いになったんですが「この先、もしかしたらこの人は一生セックスする機会なんて無いかもしれない」って思ってしまって、それだけで性行為に及んでしまったり。

 

その後の検査で僕は陰性でしたけど、その話をしたら医者に止められました。「一生添い遂げる気が無いなら絶対にやめなさい」って。確かにそうだなって、それは情けになってしまうなって。セックスで他人を救えるなんて思ってないですが…そういう献身的な気持ちだけで、セックスをしていた時期もありました。自分も精神的にシンドい時期があったので、他人のそういうところを過剰に拾おうとしちゃうんでしょうね、変に勘ぐるというか。でもそれは優しさではないですね。

 

自分はまだ男性とも女性ともお付き合いしたことが無いですし、好きな人とセックスをしたことも無いんですよ。そう考えると、自分が何かを本当に欲しいって思って、がむしゃらに求めたことってあるかなと、外側に。なので最近はもっと自分の欲望に素直に…とは思っていますが。

 

いかんせん、生きてるフィールドが男と男なので、男女のそれとは違うと思うんですけど。やはり女性より男性の方がセックスに対しては手が早いというか軽いというか…頻繁だと思うんですが、それはそれで一つの側面ですし、単純にセックスを楽しみたいという気持ちはあります。

 

ただ、自分にとっては、愛おしいと思う気持ちと欲情する気持ちっていうのは分けられないので。

 

体だけで本当に楽しませてくれる人もいて、それはそれで楽しくていいんですけど。こう何と言うか…コミュニケーション的な側面も求めているんだと思います。やっぱり、お互いを尊重しあい慈しみあいっていうのが先ず大事で。

そういう人間の気持ちの表現の一つかなと思いますね、その方が今の自分にはしっくりきます。

 

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