今回「スタイルのある大人」についてトークしてもらうのは、写真家の下村一喜氏(44)、フレグランスデザイナーの西田卓矢氏(51)、バー「キヌギヌ」オーナーの榎本晋輔氏(42)の3人だ。
3人は、10月29日までの期間限定でオープンしている、大人の為のラウンジスペース『パナソニック ラムダッシュ ラウンジ』でトークセッションを行なった。
今回、オープンリーゲイとして各業界で活躍されている3人に「スタイルのある大人とは」について語っていただきたいと思います。まずは3人のこれまでのキャリアからお聞かせいただけますか?
下村:私は昔から映画が大好きで、特に邦画が好きですね。
女優さんという「生き物」が大好きで、そして映画にのめり込んでいくうちに、「写真も止まっている映画」と思ったんです。
映画の世界観をそのまま瞬間として切り出せることが面白いと思い、写真家を目指しましたね。今では多くの女優さんを撮らさせてもらい、昨年には初の著書『美女の正体』を出版しました。
西田:私は、今はフレグランスの会社をしていますが、元々パタンナーでメンズ・テーラードの専門学校卒なんですよ。「コムサ デ モード」「ポール スミス」でパタンナーをすることからキャリアをスタートした。
それをしながら、夜のクラブでドラァグクイーンの衣装を作っていたんです。当時「GOLD」という伝説のクラブがあり、クイーン達のミスコンが開催されていました。ケイタマルヤマさんなど、今活躍している人がミスコン用の衣装を作り競い合っていた。その頃、ケイタさんは毎回1等賞で、私がだいたい2等だったので、常にケイタさんを目指していましたね。
それがあってからか、芸能人の舞台用コスチュームの依頼がくるようになり、衣装デザイナーとしてデビューしました。なので、そのナイトクラブがなかったら今の私はいなかったですね。
下村:私は最後の方の「GOLD」は知っているんですけど、あの時のクラブ文化は華やかだった。ネットもなかった時代なので、その場所にいけば何かが生まれる、カルチャーに溢れた場所でしたね。
西田:本当その通りでした。まだまだ売れていないアーティストたちがクラブに通い、そこで交流が生まれた。
夜の文化に活気がありましたね。その頃のヘアメイクやスタイリストさんは今すごく活躍している方が多く、私もその「GOLD」での衣装製作をきっかけに、衣装デザイナーとしてお仕事をもらうようになり、浜崎あゆみさんや安室奈美恵さん、その他多くの衣装を担当させてもらいました。
衣装は約20年くらい続けてきて40代になり、一旦別のことをしてみたいなと。業界に疲れて、癒しを求めていた時というのもあり、キャンドルやアロマに傾倒していきました。「DEICA」は、ディフューザーがメインのブランドなのですが、わたしが元々衣装をやっていたこともあり、ファッション性のある面白いディフューザーを作りたかった。
そこで、造花を一輪挿ししたディフューザーを開発して、それが爆発的にヒットしたんです。今でこそ似たような商品は多いですが、これは私が初めて打ち出したデザインです。それから今に至りますね。
榎本:私は元々IDEEで飲食開発の仕事をしていました。時流に乗った店舗を展開する仕事だったのですが、自分の好きなことを結実させたい思いがあって、29歳の時に「キヌギヌ」をオープンしました。
下村:私も「キヌギヌ」によく伺ってますし、本当に大好きなバーです!
さきほど伝説的なクラブとして「GOLD」の話が出ましたけど、「キヌギヌ」こそ今でいう伝説的なバーですよね。そこでしか会えない人たち、体験できない空間を提供されている。「キヌギヌ」のようなバーは他のどの国にも似た場所がないと思います。
西田:「キヌギヌ」に伺ったことはないですが、噂にはよく聞いています。どんなバーなんですか?
榎本:店内にグランドピアノがあって、50台ぐらい楽器があるんですよ。その場にいるお客さんも一緒に即興で何かを演奏したり、一芸を披露しあったりするんです。
昔でいう、六本木の「キャンティ」ですとか「西の木」のように、個性が入り乱れて混沌としたような空気を目指しています。
下村:そうそう、バーなのに突然誰かが楽器を弾きだし歌を唄い、即座にオペラ会場に変わってしまう!
内装はパリのクリニャンクールにありそうなアンティーク家具で構成されていて、フランス的なんだけど、どこか古き良き昭和の香りもするような、とてもユニークな場所。有名な歌舞伎役者やハリウッドの俳優の方がきたかと思えば、音楽家、GOGOボーイまで、いろんなカルチャーがミックスされていてすごく面白いんです。
榎本:「キヌギヌ」のテーマは「趣味性とコミュニティ」だと思っていて、その人の持っている芸、魅力を引き出す。 それって歳の取り方と直結していると思うんですよね。ゲイの方々の生活を豊かにして「入れ物」を提供できる場所でありたいと思っています。
それぞれの業界で活躍されている3人ですが、日本は欧米に比べて、ゲイのクリエイターや著名人は少ないですよね。下村さんはパリで活動された際に、ゲイのクリエイターがとても多かったと聞いています。
下村:私は7年ほどパリに住んでいたのですが、その時はフランス版の「マダム フィガロ」誌で専属契約をして写真を撮っていました。その時の業界人はほとんどがゲイか女性でした。本当にゲイが多いし、日常生活をおくる上でも色々と助けてもらいましたね。
またパリで、ゲイだっていうことですごく助かったことといえば、フラットにどなたでも会えたということ。
ジャン=ポール・ゴルティエやティエリー・ミュグレー、クロード・モンタナなどの著名デザイナーにも、同じゲイってことで可愛がってもらいました。ストレートの縦社会だと名刺の肩書きに左右されるので、高名な方々と並列にコミュニケーションする機会って少ないですよね。
大企業の社長から、有名なファッションデザイナー、または名もない人でさえ、同じカウンターに座って交流をすることができる。それはゲイならではの強みですよね。
西田:日本でもゲイのクリエイターは多いですね。デザイナーやヘアメイクは多いけど、カメラマンは極端に少ないイメージかな。
下村:ゲイのカメラマンは皆無でしたね。私がゲイをオープンにした初めての商業カメラマンだと思います。メール ヌードを撮る方々はいるけど、ゲイのカメラマンは今でも少ないですね。
西田:業界でゲイの人は多いけど、カミングアウトしている人は少ない。
前にWWDの「LGBT特集号」があって、その時に周りのデザイナーやスタイリストに出ないかと誘ったんですが、ほとんど断られましたね。
下村:私もよく、同じ業界の人でゲイの人と対談なり企画に出て欲しいと誘ったりするんですけど、「いや、自分はゲイって言ってないのよ」って断れることが多いんです。いや、私から見てもどっからどう見ても明白なのですが、ご本人は公にしていないんです。
だけどこれだけは言いたいのですが、別にカミングアウトする必要はないと思っています。それは人それぞれの生き方だから。私はゲイライツとして強い思いがあってオープンリーゲイにしているわけではなく、自分に正直にありのまま生きているから、オープンにしているだけなんです。
西田:クローゼットなゲイの方達の理由は、家族が知らないからでしょうね。仕事ではみんなゲイだって知っているだろうから。
下村:90年代初頭の「GOLD」全盛の時って、ゲイのルネッサンスのように、ゲイ文化が花開いた時でしたよね。その時に日本で始めてゲイナイトも行われるようになったし。
西田:そうそう。「GOLD」の時は、日本のドラァグクイーン文化やGOGO文化もその時誕生して、やっと海外のゲイ文化に日本が追いついてきた頃。今ゲイのクラブ界で活躍されている吉田さんも、その時にみんな一丸となってゲイナイトをスタートしていったような感じ。
だけど今の20〜30代で、活躍しているゲイのクリエイターが減ってきた気がする。
下村:昔とは違うベクトルに向いてるんでしょうかね?
逆にコンサバティブになっていますよね。私たちの世代は、クラシックで煌びやかなものにロマンスを感じるタイプ。
私だったら映画のような世界観を写真で表現するし、西田さんだったら、あゆの衣装を通じて華やかな世界観を演出するし、榎本さんだったらお店の世界観を耽美的に表現するしで、デコラティブでかつスケール感のある表現に情熱を注ぐジェネレーションだと思う。
その点、今の若い人たちはそういう熱量が少ない気がしますね。
榎本:私が思うに、今はSNSで人にディティールまで自慢ができるようになったじゃないですか。紋切り型で申し訳ないのですが、例えば高層階でホムパをしていることが、SNSが無ければ分わからなかったが、今では分かりやすく自慢できてしまう。
すごく素敵な衣装作って出かけて行くよりも、SNSで華やかな場所や人と一緒にいる方が手っ取り早く自慢できる。
若い子のSNSを非難するのは良くないと思うんですけど、そればっかりになってしまってる人が多い印象です。昔はもっと情報が限られていたからこそ、独自なファッションや髪型をしたり、いろんな企画を考えたりしていたことが、今はもっと短縮化されていますよね。
下村:自己承認欲求は高まってきているのに、自己発信することが少なくなってきたのかも。
でもネットはネットでいいですものね。ただ、あまり自分と乖離しているものを提示するのは、どっかでズレが生じる。「ネットとリアル、どっちが本当の私?」「インスタグラムの中が本当の自分なの?」って。アイデンティティが分からなくなってくる。
榎本:華やかな週末をSNSにアップしているけど、実際会うと意外と地味だなって人、結構いますよね。
西田:ネットとリアルのギャップ、それはすごく感じますね。
下村:西田さんや私は、夜遊びにいって、荒いサンドペーパーで磨かれてきたような世代じゃないですか。摩擦も甘やかなものも両方あって、こうしてはいけない、ああしてはダメだってことを学びましたよね。それこそ平手打ちぐらいのショックで打ちのめされても、また遊びに行って、良いこともあって、接触してコミュニケーションするからこそ生まれるものってありますよね。
SNSだといくらでも虚像をトッピングできちゃうけど、現実はそうはいかない。
西田:人と人とのコミュニケーションが取れていないんじゃないかな。
いろんな人とリアルな場で交流すると、良いことばかりではないけど、そこで勉強していく。私の場合、長年ゲイのコミュニティの中で遊んで鍛えられたからこそ、厳しい芸能界に入ってからも打たれ強くなっていましたね。
3人は同世代ですが、40・50代は人生の折り返し地点といわれています。人生後半戦をどう生きるか、何か考えているライフプランはありますか?
下村:私は自分の将来像として「どう歳を取っていこうか?」を模索中なんです。だけど、目標とする男性像が浮かばないんですよね。
ストレートの人だと矢沢永吉さん、福山雅治さんなど、沢山ロールモデルがいらっしゃるけど、私の成りたい理想ではない。いうならば聖子ちゃんやマドンナかしら…!?
下村:昔は 50・60 代がすごくおじさん・おばさんに見えていたけど、特に今の女性たち、マドンナや聖子ちゃん然り、美しく歳を重ねすぎていて、みんなその歳の年代のひとたちが混乱しちゃう。
だから結局は意識の問題だと思っています。
今なら、時を止めて美しくいようと思えば可能。だから自分がどうなりたいのか、意識の問題。マドンナの生き方は目標ですけれど、あくまでも彼女はパフォーマーであって、私は裏方の存在。なので、自分に合った歳の取り方を考え中ですね。
西田:私は今年51歳なんですが、40代は人生の折り返しと捉えられるけど、50代は最後の30年って感じかな。仕事はある程度やってきたから、プライベートな時間を残り30年ぐらいをどうやって生きていこうかなって考えている。
40代前半はあまり健康を気にしてこなかったけど、40代後半からすごく健康に気をつけるようになった。平日でも土日も、就寝・起床時間を一定にして、生活のリズムを整えている。あと食べるものは随分変わったかな。 昔は朝起きて体調悪いのが当たり前だったから、40代の頃よりも逆に今の方が元気だと思います。
下村:そうなんですね。私も明らかに30代より体力は落ちています。
西田:食べ物に気をつけるだけで全然違いますよ。あとはカラダを鍛えること。今は毎日ジムに通っています。
マッチョになりたいのではなくて、足腰を鍛えるべく行なっています。
歳をとって怪我すると回復が遅いですが、日頃から運動している人は回復が早いんですよね。やっぱり日頃からカラダを鍛えることは健康にいいし、鍛えることも仕事のうちだと思ってやっている。
下村:「筋肉はゲイのロココ調のドレス」って私は思っているぐらいですから、別の目的でカラダを鍛えたことはありますけれども…笑
西田:最初はみんなそうだよね。
今は純粋に健康のためにジムに行っている感じで、ゆっくりインナーマッスルを鍛えてる。やっぱりカラダや健康に気を使っていない同年代は顔色悪いし、衰えが早い。
60代になるとまた考えは変わると思うけど、健康的でかっこいい歳の取り方をしたいですよね。
榎本:これからの人生後半戦は、私自身最大のトピックだと思っています。
ゲイの人でパートナーがいる人もシングルの人も、60・70・80 代がなかなか周りにいない。お店にこられる方もいますが、ごくごく一部の成功者ばかりで、一般の60・70・80代を見る機会がないから参考にならない。
例がないなら自分で切り開くしかない。
これだけはいえるのは、歳をとって大事になってくるのは「趣味性とコミュニティ」。うちのお店も、中年のお客さんが趣味性とコミュニティを発揮できる場所「サロン」として、微力ではありますがコミュニティに貢献できたらと思っています。
とはいえ、西田さんがおっしゃったみたいに、健康なカラダがベースにないことには、美しいものを紡ぎだすことも、人を幸せにすることもできない。良い機会なので、健康について見つめ直していきたいですね。
すでにスタイルを確立されている3人ですが、3人が考える「スタイルのある大人」とはどんな人でしょう?
榎本:スタイルのある人といえば美輪明宏さんですね。
業界のパイオニアであり、女装やドラァグクイーンの概念もない時代からTVに出られていて、だけど権利を主張しているわけでもなく、佇まいで魅了している。
あれだけ長年活躍しながらも世の中にうまく調和している稀有な方って、他にはぱっと出てこないですね。みんなが美輪さんみたいに成れるわけではないですけど。
下村:どこにも属さないよね。男でもあるし女でもある。女優でもあり声優でもあり、歌手でもあり随筆家でもある。
西田:私が思うスタイルのある人は、「自分で決めて、責任が取れる人」。
誰のせいにもせず、自分の決断で行動できる人。私も人に何を言われようが、自分で思ったことを行動に移してきたタイプの人間ですので。
ちなみに、あと3年ほどしたら千葉や神奈川の田舎に引越しを考えているんですが、周りからは反対されます。ですが、自分がしたいと思ったことは反対されても行動に移すでしょうね。
下村:今の2人の話を聞いて思ったのは、スタイルのある人は「群れない人」だと思う。
榎本さんも群れていないし、西田さんも群れていないですよね。私も周りからは一匹狼と言われ続けてきて、無理に迎合せずに自分の意志を貫く人こそスタイルがあると思う。男でも女でも、ゲイでも、群れない人はかっこいいですね。
今日は、それぞれに「自身のスタイルを表す一品」を持参してもらいました。それぞれの一品にまつわるエピソードを教えてください。
榎本:私は音楽が好きなので、ウォールナットのヘッドフォンと、ローズウッドのiPadケースを愛用しています。元々、天然木の風合いが好きなんです。手にピタリと馴染むし、スリ傷ができても思い出になるから。
下村:私はサンローランのジョニーというブーツ。私の戦闘靴ですね。ちょっとヒールが高くて歩いた時の音も綺麗だから、夜遊びやパーティーに行く時よりむしろ、撮影の時に履いて気分を揚げます。
西田:うんうん、戦闘服。戦闘靴はあるよね。
西田:わたしはエルメスのオータクロアです。
20年ぐらい前に、亡くなったスタイリストの恋人からゆずり受けたもので、彼曰く「高いもの、安いもの、いろいろあるけど、全部試してみたほうがいい。高いだけのものもあるし、安いけど良いものもある。だからこれあげるから使ってみて」と言われ譲り受けたんです。この言葉どおり、今までチープからラグジュアリーなモノまで色々試すようにしてきました。モノの見極めができる人でありたい、そう思わせてくれる思い出深いバッグですね。
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キャリアからSNS論、ゲイ的ライフプランに至るまで、幅広いトークに花が咲いたトークセッション。3人こそ、世間や人に流されず自身のスタイルを貫く「スタイルのある大人」だろう。
そんな、3人のようなスタイルのある男性にオススメしたいのが、 今秋パナソニックの人気シェーバー「ラムダッシュ」から登場した限定モデルだ。
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今回トークセッションを行なった「パナソニック ラムダッシュ ラウンジ」の1Fでは、限定ラムダッシュの体験ができる。そこで3 人にも限定ラムダッシュを試してもらった。
榎本:普段からパナソニックのシェーバーを使っているのですが、この限定ラムダッシュは天然木なのですごく手に馴染む。10年、15年と長く使えるし、使えば使うほどもっと馴染んでくるでしょうね。あとは傷がついても、天然木ならそれもまた味わいとして楽しめる。5 種類の中から選ぶなら「チーク」が好きですね。
西田:私は「マホガニー」をチョイスしました。 やっぱり気分はアガりますよね。毎日使うものだからこそ、ちゃんとした物を一本持っておくだけで愛着がわくし、大切に使いたいと思う。あと驚いたのはすごく軽い。見た目はウッドとゴールドのアクセントで重厚感があるけど、軽くて使いやすかったです。
下村:私は「バールウッド」が好きです。木でこれだけ照りのある上品なシェーバーは初めて見ました! 華やかだけどシンプル。佇まいはヨーロッパ的なのにどこか「和」のテイストを感じます。 刃が日本刀の技術を使っているところや、生産から天然木もすべて「MADE IN JAPAN」という所もいいですね。
電動シェーバーという日用品を、嗜好品にまで格上げした限定モデルのラムダッシュ。 同商品は、10月29日までの期間限定でオープン中の「パナソニック ラムダッシュ ラウンジ」にて体験&予約ができる。
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パナソニック ラムダッシュ ラウンジ
開催期間:10月29日(日)まで *木曜~日曜・祝日のみ営業
営業時間:12:00~20:00
場所:表参道「Zero Base」(表参道駅徒歩1分)
パナソニック ラムダッシュ ラウンジ/特設サイト