元米五輪代表フィギュアスケーターでオープンリーゲイのジョニー・ウィアーが、6月11日に都内で開催された映画『氷上の王、ジョン・カリー』公開記念トークイベントに登場。
フィギュアスケート界の”レジェンド”とされるジョン・カリーについて、そしてゲイのアスリート界について語った。
「ファンタジー・オン・アイス」の公演で多忙を極める中、映画の公開イベントのために駆けつけたジョニー。
羽生選手など多くの選手の衣装デザインを手がけ、業界一のファッショニスタとして知られるジョニーは、イッセイ・ミヤケの華やかなドレスで登壇した。
ジョニーも出演している映画『氷上の王、ジョン・カリー』は、伝説のフィギュアスケーターのジョン・カリーの生涯をつづったドキュメンタリー映画。
氷上で優雅に舞い踊り人々を魅了しているフィギュアスケートだが、実は演技にバレエの要素を取り入れたのはジョン・カリーが初めて。
彼はマイナーだったフィギュアをメジャースポーツへと引き上げ、そしてスポーツから芸術の域にまで昇華させた偉大な人物なのだ。
映画では、現役時代の活躍をなぞるだけでなく、クローゼットとして生きるもアウティングされた過去や身体を蝕んだエイズとの闘いなど、知られざるジョン・カリーの全てが詰まった貴重な映画。
ジョン・カリーについてジョニーは、「彼は完璧主義者。ものすごくディテールにこだわっている」「一番大事なのは何か爪痕を残すこと。それは人を笑わせたり、心を動かすこと。彼はどんなトラブルに見舞われてもクリエイティブな部分を残しつつ、実践してきたのでとてもリスペクトしています」と語った。
また、同じゲイのスケーターであることから、「いま僕が斬新なドレスを着て、皆さんを笑わせたり喜ばせたりできるのもカリーのおかげです」
今でこそゲイのフィギュアスケーターは珍しくないが、カリーが活躍した70年代当時はゲイへの偏見と差別に満ちていた。
カリーはクローゼットだったが、不本意にアウティングされゲイだとバレてしまう。
そんなスポーツ界のホモフォビアについても触れている映画だが、ジョニー自身もこれまでセクシュアリティとセットで語られることに嫌気が差していたそうだ。
「トリノオリンピックで、国の代表としてベストを尽くして戦いましたが、メダルを取ることはできなかった。滑り終わったあとに、演技についての質問があると思っていたら、多くの記者から『あなたはゲイですか?』といったセクシュアリティばかりの質問で驚きました。それは今でも続いています。(ゲイであるかどうかより)もっとパフォーマンスについて聞いて欲しかった」
そして次のバンクーバーオリンピックにて、カナダ人レポーターが、「ジョニー・ウィアーは本当に男なのか?性別テストをしよう」といったホモフォビックな発言が飛び出し問題に。当時の様子を辟易した表情で語るジョニーだが、一方で、現在は時代が変わりつつあるとも話す。
「(全米チャンピオンでゲイの)アダム・リッポンが、アンチゲイで知られる米マイク・ペンス副大統領と公にバトルを繰り広げるなど、時代と共に差別と偏見がなくなってきていると感じます」
「私のように自分を隠さずフィギュアスケートをやってこれたのは、カリー含め(ゲイ差別や偏見と)闘い続けてきた人たちがいたからこそ。私は強い人間なので耐えることができるけれど、みんなが強い人間ではない。だからその人たちのためにも声をあげ、傷ついた仲間がいたらサポートしていきたいです」と力強く語った。
映画『氷上の王、ジョン・カリー』は、新宿ピカデリー、アップリンクほか全国の劇場で絶賛公開中。