英雑誌「FS magazine」が実施した調査によって、アフリカ系ゲイ男性の80%、アジア系の79%、南アジア系の75%、複数の人種を持つハーフの64%、アラブ系の100%が、LGBTIコミュニティー内で、アプリでの人種差別的な発言やコミュニティー内での無視など、何らかの差別を直に受けたことがあることが明らかとなった。
調査には、850人以上のアフリカ系、白人、アジア系、南アジア系、アラブ系、複数の人種を持つハーフのゲイ男性が協力した。
さらに、アフリカ系とアジア系ゲイ男性の63%は、ホモフォビアよりも人種差別の方が、自身にとってより問題であると回答したという。
英国グラスゴー出身の複数の人種を持つハーフのゲイ男性ゲリーは「自身のセクシュアリティよりも肌の色についての方が悩むことが多い。人種についての差別的なコメントの方が多く受ける」という。
また、英国コヴェントリー出身の南アジア人のシャビスは「ゲイパレードで他のゲイ男性の人種差別的な発言を耳にすると、自分が所属したいコミュニティーから拒絶された気分になる」と胸の内を明かした。
「人種差別的なコミュニティーよりホモフォビックなコミュニティーの方がいいかもしれない。だって、ストレートのように振る舞うことができるから。でも他の人種として振る舞うことはできないだろう。だから、僕にとっては、人種差別の方が悩ましいんだ」
ロンドン出身のイシャンは人種差別の複雑性についてこう指摘する。「僕は、アジア系の人たちのアフリカ系の人たちに対する人種差別発言というように有色人種間の差別的発言もよく耳にするよ。人種差別って聞くと白人から他の人種というイメージが強いけれど、有色人種間でもお互いをステレオタイプ化し合ってるんだ」
また、多くの有色人種ゲイ男性が、グラインダーなどのゲイアプリで”カジュアルな人種差別”を経験しているという。例えば、アプリのプロフィール欄に見る「白人限定」「アフリカ系はお断り」、さらに酷い表現になると「チョコレート(アフリカ系)、ライス(アジア系)、スパイス(南アジア系)はお断り」などがそれにあたる。
「僕が白人かアジア人かはっきりと見分けのつかない写真をアプリで使っていた頃、僕がアジア人と気づいた途端にメッセージが来なくなったり、「タイプじゃない」と言われたりすることが、良くあったよ」と英国ブリストルに住むマットは自身の経験を振り返る。
またロンドンに住むアリは「僕が東南アジア人というだけでブロックされたり、ムスリムですらないのに「パキスタンに帰れ」と言われたり「お前がここにいてアラーは喜んでると思うのか?」と質問されたりしたよ」と辛い過去を共有した。
特にアフリカ系のゲイ男性は、自身の人種のためにペニスについてのステレオタイプな発言を受けたり、フェチの対象にされたりしてしまうことが明らかとなっている。調査に協力した実に82%のアフリカ系ゲイ男性が、白人ゲイ男性の性的欲求を満たすためだけのモノのような扱いを受けたと回答している。
人種差別はアプリ上だけじゃない
人種差別は、アプリ上に留まらない。南アジア系のジミーは「クラブの受付スタッフも人種差別的なところがある」と述べる。
「以前ロンドンのクラブに行った時、「南アジア系はクラブのイメージに合わない」とクラブに入場できないことが何度かあったよ」
アクティビストのバーナル・スコットは「クラブの受付スタッフもマネージャーやバーのスタッフが受けるような人種についての研修の受講を義務付けるべきだ」と指摘する。
「人種差別は、単なる言葉ではなくて、人の経験そのものです。つまり、白人ゲイ男性は、人種差別の疑似体験や共感はできても、アフリカ系ゲイ男性やその他の有色人種ゲイ男性の受ける人種差別を直に経験すること、人種とセクシュアリティによる二重マイノリティを経験することはできないのです」
あなたはゲイアプリ・もしくは海外で、人種差別を受けたことはあるだろうか?