こんにちは!台湾在住ライターのMaeです。
2023年に突入して間もない1月19日(木)。台湾で、国際同性カップル(台湾籍と外国籍の同性カップル)の結婚が可能になるという大きなニュースが飛び込んで来ました。
これまで、国際同性カップルの結婚には「ある条件」を満たす必要があった台湾。
そんな現状に当事者たちが声を上げ、訴訟を起こす等の行動を続けてきた結果が、今回の大きな決定に繋がったと言えそうです。今後は、台湾人と日本人の同性カップルも、台湾で結婚ができるようになります。
では、今回の決定に至るまでの流れや、結婚後に訪れる変化は、どのようなものなのでしょうか。また、同性カップルの権利に関する今後の討論は、どのようなことが焦点となっていくのでしょうか。
台湾で同性カップルの結婚が実現したのは、2019年5月。
2017年5月に発表された「同性カップルに婚姻の権利を認めない現行の法律は違憲状態である」との判決に基づき、「司法院釋字第748號解釋施行法」の名で、同性カップルの結婚を実現するための法律が施行されました。
しかし、この当時、国際同性カップルの結婚に関しては課題が残る結果に。外国籍パートナー側の母国にも、同性カップルが結婚できる制度がある場合に限り、台湾でも結婚ができる、とされていました。
日本を含む世界の大多数の国では、まだ同性カップルの結婚が実現されていない現在。2019年5月以降も、多くの国際同性カップルは依然として、台湾で結婚ができない状況が続いていました。
そのような状況の中、訴訟を起こすことで「自分たちの結婚を認めてもらいたい」と動く国際同性カップルの方々も。2022年12月末までに、5組の国際同性カップルが勝訴し、2022年7月には台日同性カップルにも勝訴判決が出されていました。
相次ぐ勝訴判決を受け、2023年1月19日(木)、ついに內政部(日本で言う内務省にあたる機関)から公式な通達がなされることに。
「(国籍による)不平等待遇を解消するため、外国籍パートナー側の母国が同性カップルの結婚を認めていない場合でも、婚姻届の受理を認めることとする」とされ、春節明けの1月30日(月)にも、国際同性カップルの結婚が実現することとなります。
今後、国際同性カップルが台湾で結婚をする際の手続きについて、著者『台湾同性婚法の誕生』を書いた明治大学・鈴木賢教授は次のようにコメントしています。
「婚姻成立要件について日本法は関係なくなったので、違いはないはず。異性婚と同じだと思います。日本台湾交流協会のサイトに出ているように、戸籍謄本を予めとり、独身証明できること、それを交流協会で認証してもらうことなど、必要事項さえおさえていれば、台日同性カップルも台湾での結婚が可能になるでしょう。」
鈴木賢教授のFacebookページでは、今回のニュースについて、より専門的な考察も発表されています。詳しく理解を深めたい方は、ぜひ合わせてご参考ください。
「今回のニュースを聞いて、素直に感動しました。これで、多くの国際同性カップルが訴訟をしなくても結婚できます。結婚は幸せを得るための大切な権利の一つです。これから国際同性カップルが結婚したというニュースが今まで以上に増えると思うと楽しみです。」
そう語るのは、2022年に結婚を求める訴訟で勝訴し、同年9月には一足先に台湾での結婚を実現した台日同性カップルの日本人パートナー・Azさん。
では、台湾で結婚をした場合、具体的にはどのような場面で効力を発揮することになるのでしょうか?結婚後の生活の中での経験を語っていただきました。
「就労ビザから配偶者ビザに直ぐに、そして簡単な手続きで変更することができました。これで失業したら台湾に住めなくなるという不安や心配がなくなりました。」
「また、私はこれまで就労ビザで台湾に滞在しており、2022年にちょうど永住権申請条件の1つである滞在期間満5年を満たしましたが、今までは収入の条件を満たさなかったため、できないと思っていました。しかし結婚したことで、直近1年の配偶者との収入合算が条件を満たせば永住権の申請ができると説明を受けました。これも、結婚したからこそ得られたものです。」
国際同性カップルが一番に直面するのは、やはり「ビザ」の問題。
これまでであれば、有効期限がある学生ビザやワーキングホリデービザ、就労ビザなどを延長あるいは複数を引き継ぎながら、台湾での居住を続けていくしかありませんでした。
結婚し、配偶者ビザの申請ができるようになったことで、台湾人パートナーと台湾で生活をしていくためのハードルが大きく下がることになります。
また、ビザ以外の面で、結婚によってできるようになったことについて、以下のようなエピソードもお話しいただきました。
「夫が結婚休暇を14日間取得し、それを利用して11月に9日間日本へ旅行に行きました。2022年の有給休暇は10月時点で使い切っていたため、結婚休暇がなければ2人で日本には帰れませんでした。日本に3年ぶりに、しかも思っていたより早く帰れて、私たちも、日本の家族も大喜びでした。」
「また、マラソンに2人で参加していて、万一怪我したり事故にあったときのために、2人で保険に入りました。配偶者として2人で申し込めたので割安になりました。夫が公務員のため、割安の保険に入れて、私も配偶者として、同じ割安のものを申し込むことができました。」
「台湾ではこれで、日本人も同性婚ができるようになります。私は結婚して、今まで感じられなかった、安定した幸福感で毎日を過ごせています。台湾にできて、日本にできないはずがありません。同性婚は幸せな人が増えるだけで、心配や懸念されてるような家族の崩壊などは起こりません。より多くの人が幸せになれる社会になることを祈っているし、私にできることは、これからも全力でサポートしていきます。」
外国籍パートナー側の母国の制度に関わらず、国際同性カップルの台湾での結婚が可能になった今回の決定。しかし、中国籍パートナーとの結婚は今回の対象には含まれませんでした。
通常、台湾で国際カップルが結婚する場合は「涉外民事法律適用法」という法律が適用されていますが、中国籍パートナーとの結婚では「臺灣地區與大陸地區人民關係條例」という特別条例が適用に。
今回の決定は「涉外民事法律適用法」の適用に関するものであったため、一方が中国籍である同性カップルの結婚に関しては、今後さらに討論が行われていくこととなりそうです。
また、同性カップルが子供を持つことに関しても、今後の大きな焦点に。
同性カップルが養子を迎え入れる場合、「いずれか一方のパートナーと血縁関係があること」が条件となっており、血縁関係がなくても迎え入れることができる異性カップルとは、差異が認められる部分となっています。
さらに、血縁関係が条件になるということは、「人工受精」や「代理母出産」が必要に。しかし、同性カップルの場合、いずれも台湾国内ではまだ認められておらず、海外へ赴いて協力者を探す必要があるため、莫大な費用がかかる現状となっています。
これらの課題をどうクリアしていくのか。同性カップルの権利に関連して、今後台湾で討論が進められるテーマとなりそうです。
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台日カップルを含む、国際同性カップルの結婚が可能になった台湾の現状をお伝えしました。
春節明けの1月30日(月)にも、新たな体制が開始に。アジアを先進する台湾の動きに、2023年も引き続き注目していきたいと思います。