インドで最も古い王族うちの一つの王子であるマンヴェンドラ・シンは、2006年にある見出しで世界の注目を浴びた。
「40歳の元既婚王子、ゲイであることをカミングアウト」
それから10年。マンヴェンドラ・シン王子が、先日力強いメッセージを動画で発信し、再び話題になっている。(*動画は下部にあり)
「12、13歳だった頃、僕は異性ではなく同性に惹かれることに気づいたんだ。当時は、インターネットもなかったから、誰にもそのことを伝えられずにいたよ。」
彼の国、インドにおいて同性愛行為は未だに犯罪だ。
インドでは、結婚をして子どもを授かり、一族を繁栄させることに関して相当なプレッシャーがある。そのため、同性愛者に対する差別や偏見は根強い。そのような社会の状況から、王子も自分を「普通」に見せるために、一度は自ら進んで女性と結婚をしたそうだ。
マンヴェンドラ王子曰く、インドの王族において同性愛者なのは彼一人ではないそうだ。彼の親族や王族出身の友人にも同性愛者はいたという。けれども、その内の誰一人として、カミングアウトできる人はいなかったという。
王子が両親にカミングアウトをした時、両親は彼が同性愛者であることを受け入れられなかったという。それどころか、両親は彼を異性愛者にするべく医者に連れて行ったり、手術のために費用を支払うと申し出たりしたという。宗教の指導者の元にも連れて行かれたそうだ。
両親が王子を異性愛者にすることに「失敗」すると、母親である女王は新聞で王子を勘当することを公表した。その結果として、王子の故郷では王子を模した人形が人々によって焼かれ、彼の称号を剥奪するための運動が展開された。
「両親に勘当された王子は、心を引き裂かれる思いだったのではないか?」と思う人もいるかもしれないが、実はそうでもなかったようだ。
「他の王族でもあるように、僕も血の繋がった家族にはあまり愛情を感じていなかったんだ。というのも、多くの王族では、血の繋がった家族に育てられることは滅多にないんだよ。通常は、家来に育てられるからね。親は、僕を産んだだけさ。母親から愛情を感じたことは一度もなかったから、勘当された時も全く傷つかなかったよ。」
王子は2000年にゲイの支援とHIVとエイズの予防を促すための団体を立ち上げ、今なお熱心に活動している。「活動は成功していて、以前に比べてより多くの人が正しい知識を身につけている」と王子は言う。
また王子が、アメリカの有名なトークショーであるオプラウィンフリーショーにゲストとして呼ばれた時、インドの同性愛事情についてこう話した。
「僕がインドの同性愛者に自由がないというのは、彼らに愛する権利がないからだ。(同性愛者は)みんな怯えているよ。恋に落ちた人、恋人がいる人のことを想像してみてください。好きな人とずっと一緒にいたいと願っているのに、怯えて何もできない。それがインドの同性愛者の状況です。」
王子は、動画の最後に視聴者にむけてこんな力強いメッセージを送っている。
「僕たちは、みんな同じ人間だ。みんな平等だ。みんな愛を求めている。同性愛者の権利は、単に裁判所で勝ち取るものではない。人々の心と思いで勝ち取るものだ。」
世界中の人々が、彼のメッセージを聞き共感することを願うばかりだ。(*動画は全編英語)