今シーズン最も話題のドラマといえば『きのう何食べた?』だが、今期、いやここ数年で1位・2位を争う秀逸なゲイドラマ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』が絶賛放送中だ。
こちらは、浅原ナオトの小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を原作に、タイトルを変えてNHKがドラマ化したもの。
4月20日より放送開始され、その壮絶で心えぐられる内容が、ネットを中心に話題を呼んでいる。
物語の主人公・純は、ゲイであることをひた隠しに生きる内向的な高校生。
彼は「異性を愛し、子どもを作って、家庭を築く」という”ふつう”の幸せに強い憧れを持っている。
そんな彼は、BL好きな同級生・三浦さんに好意をもたれ、ゲイであることを隠して三浦さんと付き合い始めるのだった─。
以下、予告編。
まず本作の驚くべきは、1話目の初っ端がセックスシーンで幕を開ける点だろう。
『きのう何食べた?』『おっさんずラブ』『隣の家族は青く見える』『弟の夫』など、最近はゲイドラマがトレンドになっているが、果たしてベッドシーンを描いたドラマがあっただろうか?
濡れ場を排除し、「ゲイをクリーンに見せる」こともできただろうが、本作で度々登場するベッドシーンやディープキスなどの性的描写は、ゲイコミュニティに無くてはならない「性」という存在を隠す事なくしっかり描いている。
また、通常ゲイドラマは設定や役者の演技がやや誇張されて描かれることが多いが、主人公の設定を含め、物語がリアルに作られているのが特徴だ。
主人公の純は、幼い頃に両親が離婚した母子家庭。そのためか男性の愛情に飢えており、一回り上の既婚ゲイと不倫関係にある。
セフレは好きだし満足しているものの、心のどこかに埋められない穴を感じている純。ふつうになりたい彼は、彼女を作ることを選ぶのだった。
この設定は非常にリアルだ。
ゲイたちの中には、彼女がいた人も少なくない。
周囲にゲイバレしないためのカモフラージュだった人もいれば、「もし女子を好きになれば”ふつう”になれるかもしれない」と淡い期待を持っていた人も。それは純も一緒だ。
女の子と付き合えば”ふつう”になれる─
女の子とキスすれば”ふつう”になれる─
女の子とセックスすれば”ふつう”なれる─
一種の強迫観念のように、彼に“ふつう”がのし掛かる。
その“ふつう”が、「ゲイは気持ち悪いもの」「おかしいもの」といった、内なるホモフォビアを生み出している。
もし、あなたが鬱屈した青春時代を過ごしたゲイの少年であれば、心の奥底にしまい込んだ苦い思い出が呼び起こされ、胸がキツく締め付けられることだろう。
同作は4月20日から全8話で放送され、現在4話目でちょうど折り返し。
最新話で急展開があり、後半もかなり気になるところだ。
もし見逃した人は、NHKオンデマンドにて1話108円で購入可能。気になる人はぜひチェックしてみて。