現地時間25日に閉幕した、第72回カンヌ国際映画祭。
その中のコンペティション部門に出品されている映画『マティアス・アンド・マキシム(原題)』の公式会見が行われ、本作を手がけたグザヴィエ・ドランが映画について口を開いた。
物語は、ドラン演じるマキシムと、幼なじみで親友同士のマティアスとの関係を描いた青春友情ストーリー。
兄弟同然だった親友の二人は、短編映画を撮る目的でキスするように依頼され、思わぬキスから友情と愛情の2つの感情が入り混じる──。
ドランならではの、深い心理描写で描かれる作品だ。
男同士の恋愛を描くことから「ゲイ映画」と呼んでしまいそうだが、ドランは「この作品はゲイ映画ではない。人生についての映画なんだ」と強調する。
ドランといえば、弱冠20歳に『マイ・マザー』でカンヌデビューしてからちょうど10年が経つ。
今回の『マティアス・アンド・マキシム(原題)』で8作目となり、10年のうちに監督作8作品も手がけたことになる。
新作を出す度にドランは、「母親」「ゲイ」がテーマの映画と言われ続けてきたが、本人はそれに対しやや不満を持っているようだ。
「多くの人が僕に『あなたの映画のテーマは母親とゲイですね』って言ってくる。だけど、母親は誰にもいるわけだし、誰もが母親から生まれたわけだよね。母親、女性は独自の強さや問題を抱えていて、映画の中で掘り下げるのは素晴らしい人物だよ」
「僕たちは『異性愛の映画』という言い方はしないよね?『素晴らしい異性愛のラブストーリーを観たんだ!』とは言わないと思う」と、笑顔で取材陣に答えた。
そこには長年受けてきた批評への本音が垣間見える。
作品のテーマについてもこう付け加えた。
「10年やってきたけど、ここからアーティストとして進化するのは本当に難しい。僕は常に成長していきたいと思っているけど、毎回新しいテーマでチャレンジする時、周りからは『なぜ同じ(テーマの)映画を作らないの?』と言われるんだ」
そう語るように、近年は一度成功したテーマを捨て、ガラッとコンセプトを変えてくるあたり、常に新しいチャレンジを試みているようだ。
『マティアス・アンド・マキシム(原題)』は5月からフランス、カナダで公開予定。日本公開は現在未定となっている。
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