あなたには、アセクシャルの知り合いがいるだろうか?(または自身がアセクシャルだろうか?)
アセクシャル・ビジビリティ・アンド・エデュケーション・ネットワークは、
「人に性的魅力を感じない人」のことをアセクシャルと定義しており、その人口はセクシャリティを問わずおよそ1%存在すると言われている。
性で溢れた世の中を生きる、ニューヨーク在住のゲイでアセクシャルであるジョシュ(25)の生活は少し複雑そうだ。彼が普段の生活でうける誤解を紹介したい。
質問1:「ゲイでアセクシャル」であるということは、ジョシュさんにとって何を意味しますか?
周りの人は僕のことを「同性に対して恋愛感情を抱くアセクシャル」というけれど、僕はその所属が、必ずしも自分に当てはまるとは思っていないんだ。僕はゲイで、他のゲイの人たちと同じように男性が好きなんだけど、必ずしも性的に好きではないという感じかな。僕は男性に対して、美的な魅力を感じたり、人肌恋しくなったり、恋愛感情を抱いたりするんだ。もし僕が、相手と強い信頼関係を築くことができれば、性的魅力も感じるかもしれない。アセクシャリティにもグラデーションがあるんだよ。
質問2:ゲイでアセクシャルであることをカミングアウトした時の周りの反応は?
「自分のことを理解してないんじゃない?」とか「(ゲイでアセクシャル)は成立しえない」とか「そもそもアセクシャルって何?」って言われるかな。中学の理科の授業で学んだ無性生殖を思い出す人も多くて、そういう人たちは僕のことを無性生殖ができる植物のように考えちゃうみたい。そんなことができたらスゴイけど、僕はそんなんじゃないし。あとは、かなりの頻度で「嘘ついてる」とも言われるよ。
質問3:アセクシャルであることは、恋愛関係にどう影響しましたか?
それが結構影響があって。恋愛関係にあるときは性的な関係を持つんだ。相手のことを喜ばせたいから。でも楽しくないし、正直チーズバーガーでも食べてた方がマシだね。僕は恋愛関係になる前に、いつも相手に自分のセクシャリティについてきちんと話すようにしているんだ。でも彼らのほとんどは、理解できていないみたい。付き合いたての頃や関係が良好なときは、相手と性的な関係を持つことがすごく簡単なんだけど、感情的に繋がっていない時に性的な行為に及ぶのは、僕にとって本当に難しいよ。
質問4:多くの人が「セックスをすることは愛する人への親密さの表れ」だと捉えていますが、ジョシュさんはセックスをしない場合、どのように親密さを表現しますか?
「相手に触れる」ことは、僕にとって親密さを表す重要な表現方法の一つかな。無感情のモンスターじゃないんだから、僕だって人肌恋しくなるよ。キスしたり、ギュってしたり、手をつないだり…誰かと身体的にそして精神的に一緒にいられることが好きなんだ。親密さを感じたり、表現したりするのは同じだけど、その方法がセックスではないんだ。相手との体の距離を親密さだと考える人がいるけど、僕の場合はそれよりも複雑なんだ。
質問5:セックスをしなければならないというプレッシャーを感じることはありますか?
毎日だよ!ゲイ男性とデートに行く時、相手が何を求めているかは大抵わかるでしょ。でもそれは僕が求めていることではないんだ。デート相手を見つけるために「自分じゃない自分を演じなきゃいけない、自分がアセクシャルであることを無視しなければいけない」と感じることはとてももどかしいよ。ゲイの人に「セックスにあまり興味がないんだ」と伝えると、相手は僕がまるで「ビヨンセは才能0のダメアーティスト」って言ったかのような顔で僕を見るんだ。
質問6:アセクシャルのゲイとして生きていて、特にいい経験や悪い経験をしたことはありますか?
デートをしていた男性に自分のことを伝えたら「そうなんだ!君のアイデンティティを尊重するよ」と言われたことがあるよ。しかも、その後も僕のアイデンティティについて全く問題にならなかったんだ。彼は性的な行為に及ぶ前に、いつも僕の同意を確認してくれて、とても気分がよかったよ。一方で、元彼の中には僕が以前セックスをしたことがあることを理由に僕がアセクシャルであることを「嘘だ」と認めなかった人たちもいた。「医学的に身体的に何か問題があるわけでもないよ。これが僕のセクシャリティなんだ」と伝えても彼らは理解してくれなかったよ。もし女性とセックスしようと思えばできるでしょ?でもしない。だって楽しくないから。それと同じ。僕は基本的にセックスしない。だって楽しくないから。
質問7:アセクシャルの人たちについての最大の誤解は何ですか?
アセクシャルの人たちについての最大の誤解は、「アセクシャルであることを選んでいる」だったり「アセクシャルは言い訳」だと思われているところかな。僕は「ブサイクだからアセクシャル」とか「モテないからアセクシャル」と言われたことがあるし、「イカれてる」とか「医学的に問題がある」とも
言われたことがあるけど、そうじゃないんだ。僕はホルモンや甲状腺の検査を受けたこともあるし、泌尿器科医の診察も受けたことがあるんだ。どの器官も正常に動いていたよ。LGBTQのコミュニティーからも「僕はコミュニティーに属さない」とか「LGBTQとしてのアイデンティティを持つべきじゃない」なんて批判されたりしているんだ。それって、あらゆる点においてバカげていることだと思うんだけどね。
質問8:医学的な検査を受けたのは「イカれてる」とか「医学的に問題がある」と言われたことが原因ですか?
間違いなくそうだね。”普通”になって健全な恋愛関係を築きたかったし、”オカシナ”ところがあるなら治したいと思ったんだ。本当はお医者さんに自分の抱えている悩み、特に性的なことは話したくなかったんだけどね。やっとの事でいいお医者さんと巡り合えて、全てを話して、検査や診察をしてもらったのだけど、安堵の気持ちと悲しい気持ちが残ったよ。僕は自分が自分であることを受け入れているけれど、それでも時々「”普通”になれたら」と思うことがあるんだ。僕はどんなことでも解決したいタイプの人間だから、解決できない”問題”を受け入れるのは大変だったんだ。
質問9:LGBTQの人たちの中には「アセクシャルの人たちはただセックスが怖いだけ」「いいセックスをしてないだけ」などという人たちがいますが、そういう人たちにどのように答えますか?
僕は、そういう言葉をLGBTQの人たちから聞く時、とても悲しい気持ちになります。なぜなら、全く同じことを彼ら・彼女らのセクシャリティに反対する人たちが「いい男に会ったことがないだけで、あなたはレズビアンなんかじゃないよ」「ゲイなのは選んでいるからだよね」「医学的に問題があるんだよ」などと言っているからです。アセクシャルの人たちが「アセクシャルなのは選んでいるからだよ」「ホルモン異常なんじゃない?」「いいセックスの相手を見つけてないんじゃない?」と言われるのと何が違うのでしょうか?
何も違いません。そのような発言をする人は、他者に反発するだけでなく、その人たち自身も同じような発言に苦しんでいる。そうなってしまうのは、人々が互いの発言に縛られていることに気づいていないから。アセクシャルというのは多くの人にとって理解しがたいことだと思う、なぜなら多くの人たちは人に性的魅力を感じるから。性的魅力を感じない人の気持ちを想像するのが難しいんだよ。