大ヒット公開中の映画『ロケットマン』はもう観ただろうか?
世界的スターでオープンリーゲイのエルトン・ジョンを描いた映画だが、彼の音楽史に残る50年のキャリアと長年のLGBTQへの功績を語るには、2時間では足りないのが正直なところ。
そこで、映画公開記念としてぜひ知ってもらいたい、エルトン・ジョンにまつわる知らざる5つの真実を紹介。
エルトンについてあまり知らない人は、最も有名な「Your Song」や、ライオンキングの主題歌「サークル・オブ・ライフ」だけ聞くと、ピアノで情熱的に歌い上げるクラシカルなアーティストだと思うはず。
楽曲もさることながら、エルトンの本髄は70年代から続くそのド派手な衣装とパフォーマンスにある。
エルトンの代名詞ともいえる大仰なサングラスやヘッドピース、スパンコールを散りばめ羽を付けたジャケットから、英国女王をもじったドラァグクイーン姿まで。
衣装だけでなく、ステージ全体とピアノをLEDで彩り、ライブで訪れた観客たちはそのきらびやかな世界観に圧倒される。
エルトン流のギリギラした派手さ、派手さを通り越した悪趣味さ、ゲイゲイしさ、その精神はまさしく”キャンプ”だ。
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ちなみにこのスタイルは、60年代~80年代に活躍したゲイの世界的ピアニスト、リベラーチェ(亡くなるまでクローゼットだった)に多大な影響を受けている。
70年代という保守的な時代から、世界のメインストリームでキャンプなスタイルを貫いてきたその姿勢は、レディ・ガガをはじめとする現代アーティストにも多大な影響を及ぼしている。
『ロケットマン』は、大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』と同じ監督作品。しかし共通点はそれだけではない。
映画にも登場するエルトンのマネージャーで恋人だったジョン・リードは、なんと「クイーン」のフレディ・マーキュリーと同じマネージャーなのだ!
エルトンとジョンは、1970~75年まで公私ともにパートナーに。(マネージメント関係は98年まで続く)
エルトンが休暇を取り手が空いたため、ジョンは当時人気うなぎ登りだった「クイーン」のマネージメントも手がけることになった。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』では、ジョンがフレディにソロ契約を持ちかけたことで怒りを買いクビになっていた。
やや悪役として描かれているが、実際は友好的に別れたことをメンバーの一人が明らかにしている。
伝説的バンド「クイーン」のフレディと、当時世界のレコードシェア3%を持つエルトンのマネージメントを掛け持ちするという、超絶仕事ができるビジネスマンのジョン・リード。
もしかすると、ジョンのサポート無くして2人の成功は無かったのかもしれない。
エルトンは音楽以外に、慈善活動家としても知られている。
エイズ危機をうけ、「エルトン・ジョン エイズ基金」を1992年に設立。今でこそ当たり前になったハリウッドセレブたちによるチャリティ基金の先駆けとなったものだ。
同基金はこれまでに4億ドル(約440億円)以上を集めている!
このような慈善活動が称えられ、98年にエリザベス女王からナイトの称号を得ている。
エルトンの活動に感化され、レオナルド・ディカプリオ、リアーナ、レディ・ガガ、ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリーとった著名セレブたちが次々と基金を立ち上げている。この流れを作ったのは紛れもないエルトンだ。
LGBTQ的な視点でエルトンを語るなら、彼がこれまで起こした数多のアクションなくして語れない。
歯に衣着せぬ毒舌で知られ、時には大物や権力にも臆することなく戦ってきた。
例えば、2015年にドルチェ&ガッバーナが「同性カップルは子供を持つべきではない。人工的だ」と発言した際に、エルトンは「彼らはファシストだ!」と痛烈に非難。
他のセレブも追随し大炎上。イギリスでは不買運動が起こり、結果ドルチェ&ガッバーナは謝罪する事態となった。
また、2016年にロシアで決議された、同性愛を広めることを禁ずる「同性愛宣伝禁止法」に対してもロシア政府を猛烈にバッシング。プーチン大統領に対談要請をしたほどだ(日程が合わず叶わなかった)。
最近では、今年4月のブルネイで同性愛を死刑にする法案に対して、停止を求めて厳しく声を上げたセレブの一人でもある。
このように、30年以上にわたりLGBTQ権利を訴え活動してきたフロントランナーなのだ。
毒舌でゴシップこそ多いが、ファイティング精神あふれるエルトン姐さんに、世界中のLGBTQが助けられてきたといっても過言ではない。
絶頂期には、世界のレコードシェアの3%を持っていたほど、世界有数のセレブになったエルトン。
お金を持てば幸せかというと、決してそうではないのが人生。
成功したその先に待っていたのは、ドラッグ漬け、アルコール三昧、セックス中毒という地獄のような日々だった。
それには、子供の頃から父に愛されず、長年愛情に飢えていたバックグラウンドがある。
表舞台では脚光を浴び絶えず周りに人がいたが、心は常に孤独が蝕んでいた。
ステージに出るたびにドラッグをキメこみ、昼夜問わず酒を浴びるように飲み、欲望のままにセックスに明け暮れた。挙げ句の果てには自宅プールで自殺未遂するまでに。
自堕落な生活を送るも、その後は熱心にセラピーに通いドラッグ&アルコール中毒から脱却。
なんと今年で禁酒して29年目を迎えたそうだ!
映画では描かれていないが、エルトンを長年支えてきたのは夫のデヴィッド・ファーニッシュ氏。
2人は93年に出会い交際をスタートさせ、2005年に結婚。
現在では、代理母を通じて2人の息子を授かり幸せな家庭を築いている。
そして2018年には、「家族と穏やかに過ごしたいから」という理由で、ツアー活動からの引退を発表した。
幼い頃から家族の愛を求めてきた、エルトンらしい決断だろう。
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