みんなは定期的にHIV検査してる?
検査の重要性はわかっているものの「もしHIVになったら…人生どうなるの!?!?」と不安を抱えて、なかなか検査に踏み出せない人も多いよね。
そこで、HIVに感染したあとのライフスタイルについて、HIV支援のNPO法人「ぷれいす東京」代表の生島さんに聞いてみた。
もし検査に不安を抱えている人がいれば、ぜひとも読み進めてほしい。
今ではHIVは、薬を飲むことによってコントロールできる慢性の感染症になっている。もしHIV陽性と診断されたら、服用する薬や、通院、費用はどのくらいかかるのだろうか?
まず治療について。
生島さんによれば、現在は医療の進歩により、昔に比べて治療薬を飲む回数が減り、通院頻度も大幅に少なくなったそうだ。
HIV陽性者のほとんどが、服用する薬は1日1回1錠で、病院へ通う頻度は2~3ヶ月に1度だという。
いまは薬の副作用もほとんどなく、私生活に支障がでることはないそうだ。
次は気になるお金事情について。
HIV陽性になると、障害者認定を受ける。
障害者手帳をもらい国の医療費の助成を受けると、高額なHIV治療費(1ヶ月約20万円程度)がその人の所得に応じて1ヶ月あたり0円~2万円程になる。
生島さんによれば、平均的なサラリーマンの所得だと、服薬開始後の治療費は1ヶ月あたり1万円程度だそう。
ただし、通院は毎月ではなく、安定してくると2~3ヶ月に1度になるので、年に数回、通院した月だけ、1万円程度の自己負担を払う。思った以上にお金はかからない。
この医療費の助成は、日本の滞在資格(ビザ)を持ち、健康保険に加入していれば国籍に関係なく利用できるので、外国人でもOK。
ちなみに、日本は国民全員が健康保険に加入する「国民皆保険」だが、アメリカは所得により加入できる保険が違うため、HIVになっても治療する割合は日本よりも低いそう。
HIVになると高額な治療費を負担しなければいけないと思いがちだが、日本は医療制度があるため、個人の負担は最小限なのだ。
HIVになると、「仕事を続けられるのか…」「学校に行けるのか不安…」という人は多いはず。
だけど安心してほしい。仕事や学校に影響が出ることはほとんどない。
国内の調査によれば、HIV陽性者は20~50歳代の働き盛りのゲイ男性が多く、88%が週5日以上勤務、82%が週35時間以上働いている。
また、「障害者手帳を持つと会社にバレるのでは?」と心配する人もいるが、生島さんによれば「会社に提出する年末調整の書類で障害者控除をチェックしなければ、会社に勝手に伝わることはない」とのこと。
実際、調査によるとHIV陽性者の80~90%は、会社にHIV陽性であることを伝えていない。
HIVやゲイであることを必ずしも、会社にカミングアウトする必要はないのだ。
HIVになったとしても、その後の生活で何かを制限する必要はない。
食生活、アルコール、運動、セックスなど、いままでと同じような生活を送ることができる。
正しく薬を飲んでいれば生涯エイズを発症することはないし、一般の人とほぼ同じ寿命が送れることも分かっている。
イギリスで8万人以上のHIV陽性者のデータを対象に行われた調査によれば、20歳で早期に治療を開始した人の平均寿命は78歳だったそう。
日本人男性の平均寿命は81歳なので、一般の人とHIV陽性者の寿命はほぼ変わらなくなってきている。
また、HIV陽性者の健康状態はというと、調査によれば、陽性者の90%が「良好な健康状態」を保っており、そのうち70%の人がウイルスが検出できない状態「検出限界以下」だそう。
この「ウイルス検出限界以下」について、もう少し分かりやすく解説するよ。
HIV(ウイルス)が血中から検出できない状態まで数値が下がることを「ウイルス検出限界以下」という。
この「検出限界以下」の状態が6ヶ月以上続けば、血液中にウイルスがほぼいない状態といわれており、ナマでセックスしたとしても相手に移さないことが研究で明らかになっている。
2010年~2014年の間に、ヨーロッパ14ヶ国の医療機関で行われた共同研究で、HIV陽性者(検出限界以下)と陰性者のカップル888組を対象に大規模な調査が行われた。
調査期間中、なんと5万8千回のコンドーム無しセックスが行われたが、HIV陽性者からパートナーへ感染させた例は1件もなかったそうだ。すごい!!
このことから、HIV陽性であっても「HIV(ウイルス)が検出限界以下」であれば、セックス相手にHIVをうつすことはないことが科学的に証明された。
この英語(Undetectable = Untransmittable)の頭文字をとって「U=U」という。
ただし、U=UはHIVが感染しないという意味であって、セックスには、他の性感染症、梅毒、クラミジア、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎などのリスクもつきもの。こちらもお忘れなく。
そもそも、HIVは感染力は強くないので、未治療の状態でも、感染に気づいていない状態でも、セックスの時にコンドームを使用すれば感染は予防できるといわれている。
しかし、治療がこんなに進歩していたとは…知らなかった!
さきほど紹介した「U=U」で分かるとおり、HIV陽性者でも治療を続けていて検出限界以下であれば、他の人にHIVをうつすことはない。
これまで通り、恋愛やセックスを楽しむことができるのだ。
また、HIV陽性者の80~90%はパートナーにHIVであることを伝えているそうだ。
ただし、どのタイミングで伝えるのかは人それぞれ。
主に「出会って最初に伝えるタイプ」「人間関係を見て伝えるタイプ」の2パターンに分かれる。
ゲイだとセックスから恋愛関係がスタートする人も少なくない(※個人差あります)ため、自分がHIV陽性だということを、相手に伝えるタイミングが難しいという問題がある。
この「伝えるタイミングが難しい」は、ゲイたちの間でHIV陽性者に対する偏見があることも原因の一つ。
例えば、陽性であっても、正しく治療を続けていてウイルス検出限界以下であれば、一般の人と変わらない生活が送れるし、セックスで相手に移してしまうこともない。
また、未治療の人、感染を知らない人でもコンドームをきちんとつければ、感染は予防できる。
みんながHIVに対する正しい知識をもつことで、HIV陽性者に対する偏見がなくなっていくのだ。
HIV検査に行こうか迷っている人のために、最後はHIVに感染した人のリアルな声をいくつか紹介するよ。
「フワフワしたままよりはハッキリさせた方がいいと思います。検査して陰性ならそれで終わりだし、陽性なら早く治療開始した方が自分にも、接する誰かにもいい」
(としさん/感染がわかってから9ヶ月)
「僕も(検査から)逃げていました。しかし、今は、感染がわかり、治療が出来て良かったと思っています。もっと早く検査をしておけば良かったとも思っています。精神面、もし感染していたら、治療にお金がかかると不安になっている方もいると思いますが、福祉制度がしっかりしているので大丈夫なので、少しの勇気を出して検査して下さい」
(まこ/感染がわかってから7ヶ月)
「早く検査をして、早く治療をはじめたほうが、検査をしないで怯えているより、安心しますよ!!」
(しんのすけ/感染がわかって6ヶ月)
「初期症状って出てもわからないこともあるので、少しでも心当たりがあれば、検査を受けたほうが良いです。早めにわかれば、その分治療の準備もできるし、予後も良いです。自然治ゆはしないので発症する前に」
(たかはし/感染がわかって5ヶ月)
そのほかの陽性者の声は「ぷれいす東京」の公式HPでも見ることができる。
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今の時代、HIVになっても重病になったり死ぬことはない。
ただし、もしHIVに感染し検査をしないで放置していると、後々エイズを発症して命の危険がでてくる。
そのためにも1年に1回、定期的なHIV検査を受けよう。
長い人生、仕事も趣味も恋愛もセックスも楽しみたいのであれば、自分の健康は自分で守ろうね!
HIV検査は、新宿駅すぐにある「南新宿検査・相談室」で無料かつ匿名で受けられるよ。
それ以外の東京都の各検査施設については「東京都HIV検査情報Web」をチェックしてね。