「あなたにとって、愛とは、セックスとは、何ですか?」
本来、人も愛もセックスも多様であり、個人の恋愛を他人がジャッジするものではない。
「正面×愛とセックス」は、”普通に”生きるLGBT当事者の愛とセックスについて、赤裸々に語ってもらうインタビュー連載です。
── 40代 ゲイ 会社員 ──
ーあなたにとってセックスとは何ですか
なんだろうね…うーん…セックスは遊びですかね、遊戯。
それと、食欲とも似てますね。おれは食事には結構頓着する方で、ただ単に空腹を満たして生きる糧となれば満足ってタイプではないので。どうせなら、一回毎の食事を、場やシチュエーションも含め美味しく楽しく食べたいじゃないですか。そうすると、食べ物の趣味も合った方がいいし、ちょっとズレてたとしても、相手のも美味しそうだから交換してみましょうよ、みたいなのも出来た方がいいし。だから一緒に食べてて全くつまんなかったり、相手のこの食べ方はちょっとイヤだなってよりかは、そんなの気にならなくて美味しいよねって、一緒に食事出来たらいいなって感覚と近いかな。
エロ好奇心は強いですね、エロ行動力もあります。お陰でエロが散漫になって、あちこちのエロジャンルをつまみ食いしちゃいますね。ただ、あんまり深入りしないので、すぐ飽きちゃうんだけど。
ソープも若い頃に一度行きました、一回行っておきたいって。
でも若くてお金無いから、一万幾らポッキリの安い所でシステムもよく解ってないし、指名もなんも無くて。通されたらオバチャンが出て来て「ハイ!お風呂入ってくださいね~ ハイ!次は歯磨いてね~」って、スケベ椅子なんかもあってね。「あ!ホントに漫画で読んだとおりだ~!」って妙に感動して。
でも高級ソープではないので、サササササーッて流れ作業で、はいコレやりました、はい次コレやますって、情緒もなんも無いもんだから気持ち良くもなんともないし、いざ挿入してもなんだか紙袋みたいで(笑)そしてお仕事上の作法なのか演技なのか、そのオバチャンあんあん喘ぎだしたから「え、ナニコレ面白い~」と思いながら腰振ってたんだけど全然イク気配がなくて。「もうあんまり残り時間無いから、手で良い?」ってオバチャンに言われて手コキしてもらったんだけど全然ダメで、時間も迫ってきてるし早くイかなきゃって力み過ぎて、足がツっちゃってその弾みでイっちゃったっていう。
ノンケモノのブッカケビデオの撮影(汁男優)にも応募したことありますよ。
ゲイモノのブッカケもありますけど、ほら男女モノは規模が違うから。どっかの本屋で汁男優の募集をしてるっていうんで、じゃエントリーしますって。
参加者は全員で10人くらいかなって思ってたんですけど、スタジオに行くと年齢が上から下まで様々で100人ほど居て。現場のスタッフからちょっとした説明の後に「じゃあ、準備してくださ~い!」ってなったら、全員がバーッと脱ぎ始めて、階段にザーッと並び始め(女優さんは3階)たのを目の当たりにして、「なんじゃこりゃ!」て少し気後れしちゃいまして。
それに100人くらい居るからかなり待つんですよ、道程が長がいのなんのって。しかも周り見てもイケるやついないし、こりゃ失敗したって思ったんだけど、ココまで来たからには射精しないとギャラの三千円貰えないし、一応「今日はホモ代表で来てんだから」って妙な自負心と気合いで、半勃ちだったけど執念で射精しましたね。根っからのドホモなのに何やってんでしょうね?(笑)
色々ありますけど、結局何かって言うと、自分が気持ち良くなりたいよねっていうのが最優先で。
お互いの気持ちがあれば尚良しだけど、それは行為を盛り上げる為のスパイスとしてあれば良いよねっていう、例えば恋愛感情とか。恋愛感情マックスで体の相性もマックスだったら言う事ないけど、そこまで相性バッチリってのもあんまないでしょ。
おれはね…恋愛感情マックスだとセックスとかあんま求めないんじゃないかなと、もうそれは別って感じの方がヤりやすいんじゃないかと思ってて。それに自分は「挿入しないとヤッたことにならないじゃない」ってのはあんま無いんです。挿入することによって得られる気持ちよさって物理的なものより、心理的な方が大きいんじゃないのかなって。相手を気持ち良くさせたいとか。
それって征服欲とか一体感とか、行為としてのセックスしてる感とか、色々な要素が絡まって気持ち良いんじゃないって思うので。
ただ物理的な気持ち良さで言ったら自由度がある分、手の方が断然気持ち良いんですよ。心理的なものより物理的なものへの拘りや執着が強いからなのか、これが一般的かどうかは解らないけど、他の人と求めてるものは違うかも。
うーん…でもなんかそれじゃあんまり情がないみたいで、それってただの性欲処理なんでしょ?軽いんでしょ?って思われがちで。でもそうじゃないんですよね。セックスよりも射精という行為自体が本当に好きで、夢精とかね。本当に興味が尽きないんです。
そして、そんな事を突き詰めて行くと、亀頭責めに走るんですよ。そういうのが好きな人達が集まる発展場があるんですけど、そこは誰もケツとか口なんか見向きもしないんです。求道的なんです、亀頭責めの世界って。柔道とか剣道とかで「心/技/体」とか言いますけど、バシっと技が決まっても気合いが足りないと一本取らせてくれないみたいな。
(聞き手:亀頭道場みたいですね 笑)
そうそう!そんな感じで「今日はお手合わせお願いします!」的な世界なので全然軽くないです。当然、お手合わせ出来るのは相手あってのことだから、相手をないがしろには出来ませんよ。
元々ね、若い時からそうなんですけど、セックスに何かを求めたことは無いです。自分を曝け出してる部分とそうでない部分があって、一定の距離を置いて冷めた目で見ている自分もいるので。
あともうなんか、曝け出して突っ走って、バーッ!てなるのに憧れる部分もありますけど、そういうのはまた自分の理想とは違うかなって。若い頃にそういう部分を開花させてくれる人に出会ってたら、また違ったのかも知れないですね。
ーあなたにとって愛とは何ですか
愛とは…難しいですねぇ。
なんかね、一番強いのは自己愛なので、自分が思う愛と言えば。無償の愛とかそんなの解んないし、相手に何も求めないってのは絶対に無いので…大事にするってことなのかな?相手でも自分でもね。愛っていうその1文字を言うなら、慈しんで大事にすること。考えてみればそうかなって。
それ以上言いようがないし、あんま哲学的な解釈とかしたくないし、美化もしたくないし、宗教的にもならないから。あんまりこう理想のこととか格好つけてってのをやめたら、そんな感じですね。