現在、世界の賞レースを席巻しているゲイ映画『ムーンライト』を知っているだろうか?
同映画は、黒人ゲイの主人公を描いた、インディペンデントのゲイテーマ作品。
低予算で製作された作品ながら、先日開催された「第74回ゴールデン・グローブ賞」にて6部門ノミネートにして見事作品賞を受賞。2月26日に開催される「第89回アカデミー賞」では作品賞を含む8部門にノミネートされており、今年のオスカー最有力候補なのだ。
ゲイ、いじめ、ドラッグ、人種問題など、複雑なテーマが絡み合う人間ドラマ
『ムーンライト』は、米マイアミの貧困地区で生まれた黒人男性シャロンの物語。
学校では“チビ”というあだ名でいじめられ、麻薬常習者の母親のポーラからは育児放棄をされている。内気な性格の男の子だ。
生活の中で行き場を失ったシャロンだったが、彼にとっての唯一の救いは、自分の親代わりになってくれる、近所に住む麻薬のディーラーの男・ホアンとその妻、そしてたった一人の男友達のケビンだった。
そんな日々の中、シャロンは、ケビンに恋心を抱いている自分に気づく。
しかし、このコミュニティ内では「ゲイである自分を受け入れてもらえない」と、幼いながらも勘づいていたシャロンは、誰にもそのことを伝えられずにいた。そんな時、ある衝撃的な事件が起きるのだった──。
以下予告編。
本作では、シャロンの半生を、少年期、ティーンエージャー期、大人になるまでの3つの時代構成で描いており、それぞれ3人の役者(アレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズ)が演じている。
主人公シャロンは、信頼できるケビンに恋心をいただくも、「他の黒人と同じようにしなくてはならない」と自身の感情を押し殺し生きることを決める。
ゲイというセクシャリティの葛藤だけでなく、いじめ、ドラッグ、人種問題など、様々なテーマが複雑に絡み合いながらも、一人の少年が強く生きる姿に、多くの人が胸を打たれることだろう。
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