筋トレする人、健康志向な人にとって、良質なタンパク質がたっぷり取れる「肉」は重要な存在。
しかし、世の中には肉と健康に関する迷信も多く、「肉は健康に良いのか?」「もしくは悪いのか?」を判断するのが難しい。
そこで、米タフツ大学で栄養学と心臓病の専門医であるダリッシュ・モザファリアン教授が、肉にまつわるウソとホントを記事でまとめている。それぞれ5つづ紹介。
トレーニングをする人の定番知識に「赤身肉は健康」といわれているが、科学的根拠は明らかにされていない。
むしろ、赤身肉に含まれる「ヘム鉄」が糖尿病のリスクを高める可能性や、赤身肉を頻繁に食べることが結腸直腸ガンのリスク増大に強い関連性を持つという研究結果もある。
赤身肉は脂質・飽和脂肪・コレステロールの含有量が低いため、かねてから「肉を食べるなら赤身肉」といわれてきた。
しかし、これらの脂質、飽和脂肪、コレステロールは、心臓発作やがんなどの病気と強い関連性を持たないことが最近の研究で分かっており、赤身肉を食べる健康効果は不明。
その一方、「加工肉」を気を付けるべきと教授は指摘している。
ベーコンやソーセージ、サラミなどの加工肉に含まれる「防腐剤」は、脳卒中やがんのリスクを高めるため、「たとえ赤身肉だろうと、加工肉を食べるということはリスクが高い」とのべている。
動物性食品を食べないベジタリアン、ヴィーガンは、近年の食生活の代表的トレンド。
野菜をとること自体は非常に良いが、問題なのは野菜以外をとらないことにある。
体脂肪と糖尿病予防になる乳製品、健康上のメリットが大きい鶏肉、卵、魚介類は健康上のメリットが大きいため、積極的にとるべきだと話す。
そして、”植物由来”という一見カラダに優しそうなものにも注意が必要。
教授によれば「最悪の食品の多くは植物由来」と話しており、例えば、米、パン、ポテト、朝食用シリアルやクッキーなどは植物由来で作られているが、これらは精製デンプンと砂糖を多く含んでいるため、著しく健康を損なう危険がある。
ちなみに、アメリカで消費される食べ物の総カロリーのうち、精製デンプンと砂糖は42%も占めているらしい…!
ニュージーランド産やオーストラリア産牛肉に多い「グラスフェッドビーフ」とついた牧草で育てられた牛肉は、健康的だとして人気が高い。
健康に良いイメージがあるが、これは牧草が”中心”の家畜を表しており、牧草以外にもトウモロコシ・大豆・大麦・穀物などを食べている。
そして、グラスフェッドな肉とそうではない肉を比較すると、栄養的に大きな差は存在しないという研究結果が報告されている。
教授は、「哲学・環境などの理由からグラスフェッドビーフを選択することは構いませんが、健康上のメリットを期待するとしたら間違いです」と語る。
ここ最近アメリカでは、大豆などの植物由来成分をつかった「人工肉」が登場しており、健康ブームとして盛り上がっている。
しかし「人工肉が健康に良いかどうかは不確かなまま」であると教授は指摘。
とある有名な人口肉では、ヘム鉄や多量の塩、遺伝子組み換え酵母などが使用されており、カロリーが低いとはいえないという。
加工肉の問題点は、健康上有害な「防腐剤」を含んでいる点。
代表的な防腐剤は、硝酸塩や亜硝酸塩など。最近はベーコンやサラミなどでも「防腐剤不使用」が増えているが、実際には亜硝酸塩を豊富に含む発酵セロリの粉末を含んでいる場合があり、アメリカ食品医薬品局(FDA)には「誤解を招く表示の禁止」を求める請願書が提出されている。
また、防腐剤、ナトリウム、ヘム鉄などの他にも、燻製する過程において生じる発がん性物質が含まれる場合があるとか。これらの有害な化合物、自分自身の健康だけではなく、妊婦が摂取した場合には胎児にまで影響を及ぶそうだ。
なるべく加工肉(ベーコン、サラミ、ハム、コンビーフ等)を摂取しないことがベストだが、どうしてもの場合は「防腐剤不使用」を選ぶこと!
「肉を一切食べなければ健康的になれる」かというと、そうではない。正確には肉以外が大事なのだ。
食事が原因となる病気のほとんどが、果物、ナッツ類、豆類、野菜、全粒穀物、植物油、魚介類、ヨーグルトといった食品の摂取量が少なく、また塩分・精製デンプン・砂糖などを多く含んだ加工食品、お菓子、ジュースなどを多量に摂取していることが原因だと明らか。
健康において、良い食品を積極的に取り入れ、かつ悪い食品は減らすことが最も重要であり、「肉を食べる/食べない」はそこまで影響をしない。
最近は気候変動など、環境意識が高まっているが、牛の家畜は環境破壊に大きく関わっている。
牛による温室効果ガス、糞尿による水質汚染は深刻で、魚・乳製品・鶏肉が環境に与える影響の約5倍、卵・ナッツ・マメに比べると約20倍、果物・野菜・全粒穀物に比べるとその影響は45倍~75倍ともいわれている。
2013年に国連が発表した報告書によると、畜産により排出された温室効果ガスは地球全体の15%も占めており、しかもその半分は牛の畜産によるものだという。
今のところ「人口肉」は健康上あまりメリットはないが、環境保護という意味では大きい。
牛の畜産と人工肉を比べると、生産にかかわる水や土地は10分の1、排出する温室効果ガスも10分の1にまで削減されるとか。
世界では温室効果ガスの削減が最重要課題だが、生鮮肉よりも人口肉のニーズが高まることで、環境保護に良い影響を及ぼすことができる。
肉にまつわるウソ・ホントを紹介した教授だが、結局のところ「どの防腐剤が一番有害なのか?」「赤身肉の何が糖尿病のリスクを高めるのか?」「人工肉の人体への影響」など、多くの問題が科学的に解明されていないという。
同氏の最終的な結論は、「肉(赤身肉)は週に1~2回程度にするべき」と「野菜、果物、ナッツ類、植物油、全粒穀物は絶対とるべき」の2つだ。
ぜひ、ふだんの食生活の参考にしてみて。