コロナの影響で暗いムード漂うけど、実は今年はゲイ映画が豊作!
例年、2月~4月にかけてはアカデミー賞シーズンということもあり、良質なゲイ/LGBT映画が公開されることが多いためだ。
そこで今回は、現在公開中の3つのゲイ映画をまとめて紹介したい。
最初に紹介する『ダンサー そして私たちは踊った』は、日本人にはなじみの少ない、東欧の国「ジョージア」を舞台にした映画。
ジョージアの民族舞踏をしている主人公・メラブは、ダンサーとして活躍するためにレッスンに明け暮れる日々。
そんなある日、イケメンでダンスも上手い青年・イラクリが入団。イラクリとの出会いをキッカケに、メラブはそれまで感じたことのない同性へ惹かれていくのだった──。
ジョージでは、「ジョージア正教」というキリスト教の一派が国民の多数を占めており、国全体が極めて保守的。同性愛に対する風当たりは強く、ゲイと分かれば迫害されたり、ゲイを治す施設に送り込まれたりするほど。
このような保守的な環境で生きるゲイを描く映画の場合、たいていは悲惨な結末を迎える。
しかし本作は、メラブが初めての感情や伝統的な「男らしさ」にもがきながらも、自己を開放していく様子がみずみずしく描かれており、未来への希望を感じさせてくれるのが新しい。
ゲイと分かれば迫害される…。日本のゲイたちには想像し難い環境だが、同性に恋するピュアな気持ちは万国共通。
純粋な恋愛映画として観るのも良し、また自己肯定感を高める映画としてもオススメしたい。
ゲイカップルを描いたピュアな恋愛映画『his』。
先ほどの『ダンサー』同様に、クローゼットゲイの報われない結末に無念の涙…(泣)系の映画ではない。
むしろゲイを肯定し、新しい家族の形を提示してくれる、今までの日本映画にはないアプローチだ。
ストーリーは、田舎でひっそりと生きる主人公・井川と、元恋人で現在は娘をもつ父親になった渚が13年ぶりに再開することに始まる。
渚は妻と離婚調停中で、子供の親権を争っていた。渚は井川に「もう一度ヨリを戻そう」と訴える。
ゲイバレをおそれて田舎でひっそり暮らす、内向的な性格の井川。
それとは対照的に、社交的で明るく、6歳の娘の良きパパでもある渚。
果たして、凸凹ゲイカップルが保守的な田舎で子育てすることは可能なのだろうか?
映画の舞台である「田舎」で思うのが、ゲイは東京や大阪など大都市に集まる傾向がある。
それは先進的な価値観を持つ人が多く、かつ居場所があるからだ。
しかしながら、地方でひっそりと暮らすクローゼットゲイの割合もかなり多い。
本作はそのクローゼットゲイ問題に一つの答えを提示してくれ、勇気付けるメッセージを含んでいる。
全国にてロングラン公開中なので、ぜひ映画館で観て欲しい作品だ。
ベトナム発・2人の男子の恋模様を描いた映画『ソン・ランの響き』が絶賛公開中だ。
映画の舞台は、1980年代のベトナム・サイゴン(現在のホーチミン)。
借金取り立て屋のユンと、ベトナム伝統歌舞劇の花形役者リン・フンは、劇場で運命的な出会いをはたすというストーリー。
ワイルドなイケメン(ユン)× 綺麗目イケメン(リン)の掛け合いだけでも観ていて心拍数が上がる映画だが、特筆すべきはストーリーの巧みさだ。
一見すると対照的で反発しあっていた2人だったが、停電の夜にリンがユンの家に泊まったことをキッカケに心を通わせていく。
種類は違えど、それぞれが独自の孤独を持っている。そしてその孤独を埋めるように、2人は惹かれ合っていく。
しかし運命とは時に残酷。
ユンが犯した出来事をキッカケに、2人の物語は悲劇的な結末へと向かっていくのだった─。
名作ゲイ映画『ウィークエンド』を彷彿させる、たった3日間の刹那的なラブストーリー。『ウィークエンド』と違うのは、ほのぼので終わらない衝撃のラストが待ち構えているところ。
“良い映画”とは、観終わりに何かを考えさせてくれるもの。
愛とは、孤独とは、人生とは…。ぜひ本作を観てその“何か”を感じ取ってほしい。
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本当に素晴らしい名作揃いだが、今の時期はコロナの影響で規模の縮小や、早めの公開終了も出てきている。
「必ず映画館に行って!」と猛プッシュできないのが歯痒いが、「観なきゃ損」ぐらいは伝えておきたい。
ぜひ、体力のある人は万全の対策をして劇場へ足を運んで、ゲイ映画を観て応援してほしい。