HIVは完治ができない病とされているが、「薬物療法のみでHIV完治した」男性がいるとして話題になっている。
7月7日に開催された「国際エイズ会議」で明らかになった。
実はこれまでHIV完治は世界で2例報告されていた。
ただし2例とも「骨髄移植」をしたことで起きたことであり、これを治療法とすることは非常にリスキーであり現実的に難しい。
(2例ともに、ガン治療のために骨髄移植を行い、やむおえなくHIV治療を中断していた。つまりHIV完治は予期せぬラッキーな出来事)
その点、今回の研究では「薬物治療のみ」で完治した可能性があるというから驚きだ。
報告された内容によると、「完治」の可能性があるブラジル在住の男性は、2012年にHIV陽性と診断。
その後、研究に参加した時点で、HIVウイルスは「検出限界以下」の状態だった。
研究では、通常のHIV治療でつかわれる「抗レトロウイルス薬」と合わせて、「ニコチンアミド」を使用した治療を行ったという。
この「ニコチンアミド」は皮膚ガン予防に使われる薬。免疫を増強することで、HIVの進行を抑制したと科学者は説明した。
約1年に及ぶ治療の結果、HIVウイルスが隠れている部位(リンパ節の奥深くなど)までウイルスDNAを探したが、体内から見つけることができなかったという。
その後、男性は薬の服用をやめたが、15ヶ月経過した今でもHIVは検出されていない。このことから「薬物治療のみでHIVを完治した可能性がある」という結果が報告されたのだ。
研究を行ったブラジル・サンパウロ大学のリカルド・ディアス博士は「被験者の全身をくまなく検査することはできませんが、できる限り行った結果、感染した組織は見られませんでした」「この患者は完治した可能性があります」とのべている。
近年のHIV/エイズ研究の中で画期的な報告だが、今回のケースはかなりのレアケースである可能性が高いため、「薬のみで完治」という結論を出すには早いと、専門家が警鐘をならしている。
まず一つ目に、今回の小規模実験は5人に実施したが、結果が出たのは1人のみだった。他4人はウイルス量が戻ったという。
そして2つ目に、検出限界以下の人が投薬をやめたとしても、その後数ヶ月~数年にわたってウイルスが検出されなかったことはすでに前例(*)があるため、今回の15ヶ月検出できないことで「完治」と結論づけるには早いという点だ。
そして、カリフォルニア大学のスティーブン・ディークス博士はこうのべている。
「これが1例であるということは、本件が正しくないということもあり得る。抗レトロウイルス薬のみで寛解したという人は我々も理解している。単純にラッキーな人だったのかもしれません」
さらに、このように警告した。
「この研究結果を知って、近所の健康食品店にこの薬を買いに走ることや、(HIV陽性の人が)抗レトロウイルス薬の服用をやめることは絶対にしないでください」
今回の報告はHIV研究の歴史的な一歩であるが、まだまだサンプル数がすくなく実証されていないことも多い。
今後のさらなる研究に期待がかかる。
ちなみに、去年だけで世界3800万人以上が新たにHIVに感染している。
そして日本では毎年1300人前後がHIV/エイズになっており、感染者数は毎年横ばい。(セーファーセックスは大事!)
ただ、現在は非常に有効なHIV治療法が確立されているため、たとえHIV陽性になってもエイズ発症せずに、寿命も長く生きられることもわかっている。
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