先日、ゲイのマルチエンターテイナー、トドリック・ホールが、2018年6月5日(火)に初来日公演を行うことが発表された。
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一夜限りの来日公演とあって早くも話題沸騰中だが、そんなトドリックがGENXYの独占インタビューに答えてくれた。
彼の活動の源、ゲイのアーティストとして、来日公演の見どころなどを余すことなく語った。
ユーチューバー、歌手、ダンサー、ブロードウェイ俳優、また自身のミュージカルを主催するなど、まさに”マルチエンターテイナー”と呼ぶのにふさわしいですが、その創作のエネルギーやインスピレーションはどこから湧いてくるのでしょうか?
今は全てのことから刺激を受けてるかな。最近では政治情勢から突き動かされることもあって、ロールモデルとして、LGBTQコミュニティにおける黒人として、僕の作品を通して、みんなの視野を広げたり異なる角度の考え方を示せるよう出来る限りのことをしているよ。
あと、毎年新しいことからも刺激を受けてる。新しいブロードウェイ・ミュージカルやバレエ作品に定期的に参加したり、ドキュメンタリーや様々なテレビ番組を観るのも好きだよ!
こうしたことからヒントを得て、最終的に新しいプロジェクトのインスピレーションを与えてくれるような、クレイジーでクールな場所に辿り着いてるよ。
トドリックのことを「4 Todrick」で知った人も多いと思います。あの一糸乱れぬパフォーマンスには、どのくらい時間をかけて撮影しているのですか?
「4 Todrick」シリーズの撮影はいつもかなり時間が掛かるよ!
というのも見ての通り、パフォーマンスは全て編集ナシの1テイクで撮影してるんだ。つまりは、4つのパートでそれぞれ若干異なる4〜5分の振付を、一切間違えることなく踊りきらなければいけない。
またパートによって異なる歌詞を覚える必要があるけど、そのおかげで4つそれぞれ異なるキャラクターのように振る舞える。そうしてると自分とは違う誰かとやり取りしてるみたいで、この感覚になると、まるで違う人間のように感じて、ビデオ撮影終了に導いてくれる。
いつもは大体、メドレーのマッシュアップ制作に一日、ビデオ撮影に一日、そして更に一日かがりでビデオの編集を仕上げてるんだ。
あなたの作品はどれもポジティブでありながら、毎回キャンプかつクィアなメッセージ性を感じます。これらは作品創りで意識していますか?
自分自身を「こんな風に見せたい」と思って作品を作ることはないよ。オンライン上でただ“自分らしく“あっただけ。そしたら自然と、自分が納得できる作品が出来上がって行ったんだ。時々「これってすごく“トドリックっぽい“よね」とか言われるけど、それが肯定的であろうと否定的であろうと、僕にとっては最高の称賛だよ。
自分自身を見失わず、唯一無二の存在で、一人でもファンがいて、僕をロール・モデルとして受け入れ、そして僕が新たなことに取り組んでるのを感じてくれているならば、自分のアートにおける目標を達成できたって感じるよ。これは沢山のアーティストが苦労している部分でもある。けど僕と僕の作品については、すごく自然にオーガニックに出来上がって行ったもので、誇りに思ってるんだ。
YouTubeでのブレイクから現在ではブロードウェイで主役を演じるまでに成功し、ネット発でスターになれることを証明してくれたと思います。
今や個人の力が強いといわれる時代ですが、トドリックから「これから発信したい」と思う人たちに向けてアドバイスを送るなら、なんと伝えますか?
従来のセレブたちは、虚像を作り上げることが許されてたと思う。けど、今オンラインで成功してる人たちは、オープンかつ大衆的で、人生の悪い部分や良い部分の両方を見せてると思う。
ネットで様々なコンテンツを観てるユーザーはすごく若いし感受性も豊か。そして作者がリアルな姿を見せれば見せるほど、自分と重ね合わせる。
もう一つ僕が気づいたのは、また違ったタイプのフォロワーがいること。
彼らはただ単にファンで、僕のビデオとユーモアのセンスが好きと言うだけでなく、僕、僕の家族、友達、そして僕の実際の人間性を愛してくれてる。彼らは、僕が作り出す作品というよりか、人間としてのトドリック・ホールに投資してくれるんだ。それは僕の人生を支えてくれるファンであり、僕はいま滅多にない環境にいる。というのは、アルバムがなくても、僕に知識が無くても、ツアーのチケットを買ってくれる人が沢山いる。
そうしたファンは、僕を好きっていう理由だけで、どんな公演であろうと、会場に出向いて一生懸命稼いだお金を費やしてくれる。
今置かれているそんな状況は素晴らしいと思うし、新しく出て来るユーチューバーたちも、そうした状況を作れるといいんじゃないかな。100%そのままの自分を見せること。自分の人生を見せれば見せるほど、ユーザーは、自分が共感出来て、自分と同じような経験をしているアーティストたちに憧れるという形ではなくて、きみのことをまるで自分のように同一視するんだ。きっときみは驚くと思うよ。どれほど自分が誰かの人生のパーソナルな部分に訴えかけて、またファンがいかにきみをサポートしてくれるかってことにね。
幼少期はどのような子供でしたか?
すごく派手な子供だったよ!いつも変わってて、自分が好きなものを着てた。また学校の友人関係においても、そんなに大きな仲間からの圧力を感じたことも無かった。自分の意見をしっかり持ってた。確かに誰かにゲイと言われたり、避けることの出来ない人種差別があるって気付いた時は子供ながらに傷ついた。どうしようも出来ないことがあるんだって。
自分は決して誰かに影響を受けるような人間にならないことをわかってた。ドラッグやアルコールに走って母親を心配させるようなこともなかった。僕はただ単に、そういうことをしている友達に影響されたり、ピアプレッシャーに押しつぶされたり、ちょっと悪ぶってるクールな子になりたいと思うような子供でなかった。僕はただ、自分の好きなことにすごく熱中しちゃうタイプだった。好きなことに没頭して、それについて全てを知りたいって思ってたし、正直今もそんな感じだよ。
もし誰かが、僕の興味あることを一つ言ったものなら、すぐにそれに憑り付かれて、自分が没頭してるのも気づかずに、全てのドキュメンタリーを観て、ウィキペディアで情報を全て調べ、誰か関連のある人がいないか探したり、部屋中に資料や情報を張り付けたり、週末が来る前にそれについて一曲ミュージカルを書き終えちゃうくらいだよ。僕の子供のころってそんな感じで、今も変わらないんだ。
ゲイであることをカミングアウトした時について教えてください
あれは確か高校1年か2年の時だったと思うけど、男子のチアリーダーに恋をしたんだ。14の時だったと思う。僕はママとすごく親密な親子関係にあったから彼女に話すのにそんなに緊張はしなかったし、ママとの関係は良好だったから、彼女は彼を野外パーティーに招待して、一緒に映画に行ってくれるって思ってた。そういう僕にママはすごく幸せを感じてくれてたと思う。
例えそれが良好な親子関係や話し合いの結果でなくても、そう思えたことは嬉しいよ。本当に緊張しなかったからね。沢山の人がカミング・アウトする前に僕はカミング・アウトしたから、母親の反応は僕が最初に期待したものとは違って、そこから生まれた会話はセーファーセックスがいかに大切か、最終的に生涯を通して僕を保護してくるものの話しになった。
彼女とそうしたオープンな会話や対話を持つことが出来なかったら、すごく愚かな決断をして、ママには全てを隠したと思う。僕たちは一緒に色々なことを乗り越えて来た。それはすごく怖いことでもあったけど、高校の友人たち(チアリーディング・チーム、演劇の友人、コーラスの友人)が僕の決心を理解して支えてくれて、僕を助けてくれたんだ。
あとは、当時付き合っていたJosh Lindsayにもすごく支えてもらって、彼が自分の母親にカミング・アウトした話を聞かせてもらった。僕はママに伝えたことが嬉しかったし、他のみんなにもご両親にカミング・アウトすることを勧めるよ。大好きな人たち、尊敬してる人たち、そして大切にしてる人たちが僕がゲイだとわかった瞬間に、彼らに見放されないか、僕に対して異なる見方をされてないか、それまでの関係性が大きく変わってしまうのでないか、いつもビクビクしてた。
けど大人になって気づいたのは、誰にも愛してもらえないという恐怖心から、本当の自分であることを隠すなら、最初からそうした人たちはきみを受け入れていないだろうし、そんな人はすぐにきみの人生から切り離したほうが良いと思う。そして、無条件にきみを愛して、きみのことを本当に気に掛けてくれる友達のリストを作った方がいいよ。僕は今、僕が何を言おうと、それが良かろうと悪かろうと、僕を愛してくれてる人に囲まれていると思う。一生に一度の人生なんだから、きみの幸せを願って、友情を大事にしてくれる人たちと一緒に過ごした方が良いと思う。
今やエンタメの枠を飛び越えて、アメリカのゲイコミュニティのリーダーとしても活動をされていますよね。現在アメリカのゲイコミュニティが抱える何か問題があれば教えてください。
僕がいる(黒人のゲイ)コミュニティでは、内部的な人種差別や憎悪が横行していると思う。
法律だけなく、メインストリームのメディアやポップ・カルチャーによって取り上げてもらえるよう、今まで相当な努力をしてきた。コミュニティの中で仲間同士で争ったり、ゲイコミュニティ内でヒエラルキーがあるなんて全く逆効果だよ。
例えば、ジョック(筋肉質のスポーツマン、アスリートタイプ)がベアー系を嫌ったり、またベアー系たちがトゥインク(細身の若い男の子)を嫌悪したりね。他者から受け入れてもらうためにこんなに長く戦ってるなら、自分たちのことをもっと受け入れなきゃ。まずはそこから。
あとは、HIVによる悪いイメージも完全に払拭したい。HIVについては若い子たちをもっと教育すべきだし、またそうした機会をもっと手の届く価格で提供すべきだよ。そうすれば、HIVで様々な影響を受けている人たちがもっと参加しやすくなると思う。
自身のプロデュースするミュージカルで初来日公演をしますが、いま話せる範囲でかまわないので公演について教えてください
公演は、クラシックなミュージカルとライヴ・コンサート、両方の要素を掛け合わせたものだよ。コンサートと生の観劇を楽しみたい人にはまさにパーフェクトな組み合わせだと思う。そんな人にはきっと楽しんでもらえるはず。
あと、もしオーディエンスのノリが良ければ、最新アルバムや僕のその他コンテンツからのメドレーも披露するかな!
このGENXYのインタビューを読んで、公演に来て楽しんでくれるみんなに念押しするけど、きみ、そしてきみと一緒に公演に来る友達や同伴者、または隣の席の人、もしくは並んでいる合間に友達になった人とかみんな、刺激的で踊りまくること間違いナシ。そして絶対忘れられない公演になるからね!
初の来日とのことですが、仕事以外に東京で何をしてみたいですか?
実は日本に来るのはこれが初めてじゃないんだ。東京ディズニーランドでピーターパン役をやってた元カレに会いに来日したことがあるんだ。
だけど、アーティストとして来日するのはこれが初めてだし、ファッションに目覚めてから来るのも初めて。だから、(ファッションという点において)最初に来日した時には理解出来なかったものや買えなかったものがたくさんある。
だけど、今回はクールでシックなお店はひとつ残らず見るつもりだし、洋服も買って、あとは、誰かに「それどこで買ったの?」って聞かれた時に「これスッゴイ高価なの。日本で買ったの」ってちゃんと自慢できるようなクールなものを買うつもり!
最後に、日本のファンへメッセージをお願いします
僕のビデオを観てくれて、僕を信じて、そして応援してくれて本当にどうもありがとう。
来日した時にどんな感じになるかまだわからないけど、日本でパフォーマンスする機会に恵まれた、幸せな僕のアーティスト仲間たちから、日本のオーディエンスが最も理解があって感謝に溢れてるって聞いたよ。それをじかに経験できるなんてすごくワクワクしてる!
それにこれを機会に今後はもっと日本のみんなに会いにこれるといいな。みんなに会うのが待ちきれないし、日本の文化を学ぶのが楽しみ。あと、日本について学びつつ、素晴らしいパフォーマンスを披露出来ると良いな。
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熱く丁寧にインタビューに応じてくれたトドリック。
待望の一夜限りの来日公演は、東京・代官山UNITにて、6月5日に開催。ぜひ、生のトドリックに会いに行ってみて!
公演の詳細は公式サイトをチェック。