先日、アジア初の同性婚が実現した台湾。
遠い欧米ではなく身近なアジアでの同性婚のニュースに、日本も大きく沸いた事だろう。
そこでよぎるのが「日本も同じアジアとして一体いつになったら同性婚ができるの?」ということ。もしくは一生できないかも…!?
そんな同性婚にまつわる疑問を、国内のLGBT運動をリードしてきた松中権さんに聞いてみた。
まずは短刀直入に、みんなが気になるであろう同性婚の実現について聞いたところ、「日本で実現できる/できない、どちらか?でというと『できる』と思っています」と語る松中さん。
松中さんが語るには、当たり前のことだが同性婚ができるようになるためには「法律」を変える必要がある。だけどこの法律を変えることがものすごく大変…!
同性間の結婚は、憲法第24条第1項に「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と記載されているため、実現できないと考えられることがしばしばだった。
しかしながら、松中さんは問題は憲法ではないと語る。
「憲法第24条第1項に『両性の合意』と書かれてあるので『両性、つまり、女性と男性の結婚はOK。同性間の結婚はダメ!』と言われることがあります。しかし多くの憲法学者によれば、憲法では同性間での婚姻を禁止してはいないんですよね」
「現行の憲法が施行される前の日本は、実質上、戸主(家の主)が男女の結婚を決めていました。そんな家制度ではなく、個人間の自由な合意での結婚を保障したのが憲法第24条第1項なんです。家の主が決めていた結婚から個人に自由が移った──だからこそ『両性の合意のみ』という書き方をしているんです。そもそも、今の憲法が施行された戦後の1947年当時は、LGBTの存在自体が可視化されておらず、同性同士で結婚することを想定できていない状態でしたからね」
続けて、憲法ではなくその下にある民法を変える(民法改正)ことで、同性同士でも結婚することが可能になると話す。
「民法を変えることにより、同性間でも結婚できるようになります。国には時代に合わせて法を新たに作ったり、改正したりする義務(立法義務)があり、法律は時代によってどんどん変化していくものです。現在、同性間の結婚の自由を認めないことは『立法の不作為』にあたるといえます」
ここで「立法の不作為」という難しい言葉が出てきたが、分かりやすい例を出してもらった。
「今は18歳以上の国民全員の権利である『選挙権』も、以前は国外に住む国民には無かったんですよね。そうであってはいけないとして、国会で公職選挙法という法律を変えたことで今では選挙権がある。このように、最初に法律をつくった際に想定できていなかったことでも、時代に合わせてアップデートしていくことが求められているんです」
たしかに。平成と令和のたった30年だけでも世の中が大きく変わったように、法律も時代の流れによって変えていかなければ、内容がどんどん古くなる。
「憲法の中でも、すべての国民が『法の下に平等であること(第14条)』『幸せを追求する権利があること(第13条)』が認められています。憲法にならえば、ゲイやレズビアンだからといって、愛する人と結婚ができない、本来受けるはずのさまざまなメリットが受けられないのは、平等ではないですよね」
今年2月、同性婚を求める集団訴訟がスタートした。
現在、全国4箇所12組の同性カップルが原告として法廷にたっている。国を相手取り、「同性婚ができないのは憲法違反だ」という訴えを起こした日本で初めての裁判だ。
これについて松中さんは、「さきほど話した『立法の不作為』を主張して、同性婚の集団訴訟がスタートしています。現在は地方裁判所ですが、最高裁まで行くと5年はかかる長期の裁判です」
他の国の例でも、最高裁で「同性婚を認めないのは違憲」だと判定され、国が同性婚を認めたケースが多い。(2015年のアメリカ連邦最高裁のように)
それにしても5年もかかるとは…!!
裁判に5年もかかり、かつ最終的に勝つか負けるかわからない。。。
日本で同性婚が実現するのは遠い未来のように感じるが、松中さんいわく「国会で法律を作れば同性婚は可能になる」と話す。
民法を改正して同性間の結婚を認めれば、日本でも同性婚が可能になる。(同性婚が可能になれば、現在の集団訴訟は取り下げられる)
当たり前だけど、法律を作っているのは国会。
そしてその国会の議員を選ぶのは、わたしたち国民だ。
きたる7月21日(日)の参院選では、これまでの選挙では初めて「同性婚への賛成/反対」が争点になっている。
今回の参院選が同性婚に与える影響について、松中さんはこう語る。
「国会で法律が作られるので、同性婚を支持するフレンドリーな政党や候補者が議員になるのが同性婚を実現する近道です。すごくシンプルな話ですよね」
今回はLGBT当事者の3名、オープンリーゲイの石川大我氏(立憲民主党)、レズビアンを公言している増原ひろこ氏(立憲民主党)、女性装の東大教授 安冨歩氏(れいわ新選組)が立候補している点にも注目だ。
「LGBTフレンドリーな議員もそうですが、当事者の声をダイレクトに国会に届けられる存在はとても大きいと思いますね」
選挙や政治というと、20~30代からすると遠いものに感じてしまいがちだが、「日本でも同性婚を」という視点で考えれば、今回大きな意味をもつ選挙だろう。
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