毎年12月1日は「世界エイズデー」。
近年、検査から予防手段、そして治療薬にいたるまで、大きく進歩していることを知っているだろうか?
そこで今回はエイズデーにあわせて、知っておきたい最新のHIVトピックをご紹介!
教えてくれたのは、新宿二丁目のコミュニティセンターakta の岩橋さん、ジャンジさんだ。
厚労省によると、昨年2022年のHIV/エイズ新規報告数は884人に。
実は1,000人を切ったのは20年ぶりで、ここ数年大きく減少傾向にある!
なぜ、これほど減っているのか? aktaの岩橋さんはこう語る。
岩橋さん「明確なエビデンスが無いのでなんともいえないですが、理由は2つあると思っていて、①HIV検査数が減ったことと、②PrEP利用が広がっていることだと考えます」
そう語るように、コロナ禍でHIV検査数が減っている。
HIVを無料検査できる「保健所」が、コロナ禍で長らく閉鎖をしていたためだ。
岩橋さん「ゲイ・バイたちに、最後に検査を受けた場所を聞いたアンケート調査では、約4割が『保健所』と回答しており、まだまだ保健所のニーズが高いことがわかります」
つまり検査できる場所が少なく、検査数がガクッと下がり、その影響で検査数が大幅に減った可能性が高いそうだ。
2つ目の理由は「PrEPの普及」があげられる。
岩橋さん「今年の夏、新宿二丁目で開催されたサマーブラストというクラブイベントでPrEP利用を調査したところ、約15%くらいがPrEPユーザーでした。この数字の高さは、PrEPが一般化する手前まできていると思います」
昨年報告された新規報告数のうち約4割が東京在住。
つまり都市部でPrEPが流行ると、新規報告をグッと減らせるかもしれない。
これまでは検査といえば保健所一択だったのが、コロナ禍で人気になったのが「郵送検査」だ。
郵送検査とは、「検査キット」を受け取り、自宅で採血。
少量の血を濾紙(ろし)にとって、検査会社に郵送。約3日程度でオンライン上で結果がわかるというもの。
akta のジャンジさんは、郵送検査が人気の理由は「オンライン完結」だと話す。
ジャンジさん「オンライン完結なので、自分の好きなタイミングで検査できて、1人で結果を知れるのをメリットに感じる人も多いです。あと地方在住の方は、HIV検査できる場所が近くになかったりするので、郵送検査がいい場合もありますよね」
「ある方は、検査キットをストックしておいて『何かやばいかも!』って思った時にすぐ自分で検査ができる。お守りのように持っている人もいましたね」
郵送検査のメリットはまとめるとこちら。
郵送検査のメリット
✔︎ オンライン完結
✔︎ プライバシー配慮
✔︎ 自分のタイミングで受けられる
✔︎ 医療機関が少ない地方在住者にも良い
一方で、デメリットもある。
郵送検査のデメリット
✔︎ 検査結果を1人で受け取る
✔︎ 費用がかかる(5,000円前後)
先ほどメリットだった「オンライン完結」は、逆を言えば、1人で孤独に結果を知ることにもなる。
岩橋さん「仮にHIV陽性だった場合、1人はショックが大きい。保健所であれば、支援する人がついており諸々サポートしてくれますから」
また、値段も少し割高になりがちだ。
「値段は5,000円前後くらいと、医療機関よりも少し割高になります。ただ、もっと郵送検査が普及すれば、将来的に価格が下がる可能性もありますね」
最近は郵送検査サービスの会社も増えてきたので、もし気になる人はネットで調べてみてほしい。
ちなみにaktaでは、無料の郵送検査サービスを実施していた。(国の研究費として実施しているため無料)
2015年にはじめて、2018年、2020年と過去3回実施し、合計で4,000人以上が受けており反響は高いそう。
岩橋さん「aktaで配ったり、ハッテン場、クラブイベントで配布イベントをしたりといろいろ試してきましたね。それまでは対面で郵送検査キットをお渡ししていましたが、コロナ禍になり対面ではなく非接触で配布できる『ディスペンサー型』も導入しました」
イギリスのハッテン場にて郵送検査ができるディスペンサーが導入されているのを見て「これはいい!」と思い、日本でも導入できないか支援を募り、導入を実施したそう。
岩橋さん「ユーザーにも対面かディスペンサーかを選んでもらったら、7割の人がディスペンサーの方がいいと回答していました。都内のあらゆる場所でHIV郵送検査キットが手に入ると、みんながもっと検査を受けやすくなります。今後はもっとディスペンサーを活用できないか考えています」
HIV検査の手段は、「保健所」「郵送検査」そして、「クリニック」だ。
もし、一般のクリニックで検査をする際に、何か注意する点はあるのだろうか?
岩橋さん「HIV検査を受けるのであれば、できれば一般の医療機関はやめたほうがいいかなと。医療機関だと、泌尿器科、性感染症科、婦人科など、HIV検査の実績のあるクリニックを選んだ方がいいですね」
まだまだHIV検査に慣れていない一般の医療機関も多いため、安心して検査できる専門のクリニックに行くことをおすすめしている。
ここまで話を聞いてきてわかるとおり、以前よりもHIV検査手段が増えて、便利になってきている。
ただ、HIV検査は大事とはわかっていても、「少し不安…」「怖くて勇気が出ない…」という人は少なくないよね。検査について、2人にアドバイスをもらった。
岩橋さん「できればMSM(ゲイ・バイ)は、年に1回以上受けることをおすすめしています。ただ基本は、受けたいと思った時に受けてみていいと思います。受けたことがない人は、まず1回はやってみてほしい」
ジャンジさん「今では(治療薬が進歩して)仮に陽性とわかっても今まで通りの生活ができます。恋愛もセックスも仕事も学業も諦めないでできる。ぜひ自分のタイミングで検査を受けてほしいですね」
HIV関連の話題といえば、新宿二丁目にある「有名な看板」が世界エイズデーにあわせてリニューアルした。
HIV啓発の看板広告で、イラストレーターのotokonokotoさんが手掛けたポップなビジュアル。スマホを持ったイラストは、「調べて、考えて、選ぶ」というメッセージが込められている。
こちらは公募でデザインが決定しており、その審査 *をaktaの二人も務めたそうだ。
ジャンジさん「ニュートラルなデザインで良いですよね。主体的に自分の健康を選ぼう、というメッセージがとても良いと思います」
岩橋さん「新宿二丁目がメディアに映るとき、必ずあの交差点が映りますよね。そこにHIVのメッセージがあるというのはすごく大事なこと。また、看板広告は新宿含めた全国3箇所 *で展開されていて、それぞれちょっとずつイラストが違うので、街を回ってどんな違いがあるのか?見てみるのも楽しいと思います」
二丁目の街中に溶け込むイラストで、これを見ると「あ、久々に検査行かなきゃ!」と思う人が多いはず。
ぜひ、定期的な検査をお忘れなく!