こんにちは!台湾在住ライターのMaeです。
2019年の5月より、台湾で同性カップルも結婚ができるようになりました。新しい法律ができて、2年あまり。2021年4月末時点で、5,800組以上の同性カップルが婚姻届を提出したと伝えられています。
その一方で現在、同性カップルの結婚に関して盛んに討論されている、ある課題が。パートナーの片方が台湾人でなく、外国人である「国際同性カップル」の場合、現在の法律で結婚をすることは可能なのでしょうか?
同性カップルも、結婚ができるようになった台湾。
しかし、異性カップルの結婚と全く同じ権利を認めることが、現在の法律で実現できているのかと言うと、まだいくつかの課題が残されています。
そのうち、現在盛んに討論されているのが、「跨國同婚(国際同性カップルの結婚)」に関すること。「パートナーの片方が外国人である同性カップル」の場合、現在の法律では一体どんな点に課題があるのでしょうか?
国際同性カップルが、台湾で結婚しようとした場合。実は、現在の法律では、「結婚できるカップル」と「結婚できないカップル」が生まれてしまっています。
「結婚できるカップル」とは、「外国人パートナーの母国でも、同性婚が実現している」場合。
オランダや南アフリカ、アメリカなど、同性カップルの結婚が可能な制度のある国は、現在世界に約30カ国ほど。仮に、外国人パートナーがオランダ人であれば、台湾人パートナーと台湾での結婚が可能となります。
しかし逆に、「外国人パートナーの母国で、まだ同性婚が実現していない」場合。
日本を含め、世界の大多数の国ではまだ、同性婚が実現していません。アジアに関して言えば、同性婚が実現しているのは現在、台湾のみ。外国人パートナーがアジア各国出身のカップルの場合、残念ながら、まだ台湾でも結婚ができない状態が続いています。
外国人パートナーの出身国によって、「結婚できる・できない」の、2つに分かれてしまう。
これは「婚姻平權(婚姻平等の権利)」の観点から、平等であるのか?平等でないのであれば、この状況をどのように変えていくべきなのか?
これが今、台湾で盛んに討論されているキーワード「跨國同婚」に関する課題です。
台湾で同性婚が実現してから、ちょうど2年が経とうとしていた、2021年5月。「跨國同婚」をめぐる討論に、ある希望の光が差し込む出来事がありました。
Facebookページ『部長與部長的部屋』を運営されている、信奇さんと阿古さん。
おふたりは、信奇さんは台湾人、阿古さんはマカオ人の、国際同性カップル。マカオから台湾へと移住してきた阿古さんは、信奇さんと2人、台湾南部の街・高雄にて、ケーキ店を営んでいます。
台湾で同性婚が実現した後、2019年5月と10月に2度、台湾にて婚姻届を提出。しかし、マカオではまだ同性婚が実現していないため、結婚は認められませんでした。
この出来事を受け、おふたりは訴訟を起こすことに。
およそ1年半にわたる訴訟の末、「2人の結婚は認められるべき」との判決が発表されました。
同性婚がまだ実現していない国出身の外国人と台湾人の同性カップルとしては、彼らが初めて、結婚を実現した例に。
先日8月13日には、無事婚姻届の提出を終え、晴れて法律上でもパートナーとして認められることとなりました。
「這會成為一個法律立足點,我們很希望今天的判決可以加快立法的步伐,讓含糊的跨國同婚狀態明朗化」
(今回の判決で、法律上での1つの立ち位置を示すことができました。この判決を受けて、法律の制定がスピードアップしてくれることを、曖昧なまま残されている国際同性カップルの結婚についても、明記されることを願っています)
と、ご自身の運営するFacebookページにて、コメントも発表されていました。
また、おふたりの訴訟とは別に、台湾の最高司法機関である司法院でも、動きが。
外国人パートナーの出身国に関係なく、結婚が実現できるよう、関連する法律の改正案が提出されています。
提出された改正案は現在、最高行政機関である行政院での審査段階。
台湾の国会にあたる立法院への提出・審議の日程は、まだ未定ではありますが、国際同性カップルの結婚に関しても、少しずつ希望の光が見え始めています。
信奇さんと阿古さんの訴訟判決が出た、翌日。
ある台日同性カップルが、婚姻届の提出に向かいました。
Azさんは、台湾で日本語教師をなさっている日本人。台湾人パートナーのIanさんとは、バレーボールサークルでの活動を通して知り合い、同性婚が実現した2019年5月には、結婚式も挙げていました。
しかし、まだ同性婚が実現していない日本。台湾での法律上の結婚も、まだ実現していない状態が続いていました。
台湾で同性婚が実現した当時にも、婚姻届の提出を試みているおふたり。2回目となる今回の婚姻届提出を決めた際、「2年前(2019年)には、婚姻届が受理されなかったので、(判決が出た)今回なら、受理される可能性もあるのではと思い、提出に行くことを決めました」と、Azさんは、メールでのインタビューにて、心境を語ってくださいました。
「戶政事務所(=戸籍管理を行う台湾の公的機関)のスタッフのみなさんは、他の市民の方に接するのと同じように落ち着いて、私たちの要求に応えようと、努力してくださいました」と、当日を振り返るのは、台湾人パートナーのIanさん。
しかし、戶政事務所側は最終的に、2人の婚姻届にどのように対応するべきか、答えを出すことができず、上位機関への判断を求めるため、返答は保留となりました。
信奇さんと阿古さんの訴訟結果が出た翌日、というタイミングもあり、多くのメディアが駆けつけ、その結果に注目が集まっていた、おふたりの行動。
「私たちは、婚姻届を出しに来ただけで、これが男女のカップルであれば、特に注目されることもなく、よくある一コマだったはずです」と、当日を振り返るAzさん。
「たまたま私たちが国際同性カップルで、現時点で日本に同性婚がないという理由のために、記者さんがたくさん来て取材を受けるのは、少し不思議な気もしました」と、素直な感想も打ち明けていただきました。
また、世界的なコロナウイルスの流行は、結婚して配偶者ビザを取得し、一緒に暮らすという選択肢を持てない国際同性カップルにとって、非常に大きな試練に。
お互いの国を自由に行き来することができず、2人の時間を過ごすことすらままならないカップルも、数多く存在しています。
「様々な制限や、すぐには変えられないことはたくさんありますが、私たちに今できるのは、自分でコントロールできることを、しっかりと掴んでおくことです」と、現状を受けて、インタビューの文末に想いを語るIanさん。
「“周りと違う”ということが、少しずつ可視化されるようになった、この時代です。跨國同婚も必ず、良い方向に向けて進捗があると、信じています」
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今日は、同性婚実現から2年が経った台湾の現状について、お伝えしました。
台湾人×マカオ人の同性カップルに、結婚を認める判決が発表されましたが、現時点では、訴訟という手順を踏み勝訴した、おふたりに対してのみ適用されるもの。
全ての国際同性カップルが、台湾で自由に結婚するという選択肢を持てるためには、法律の改正が待たれているのが現状です。
一方で、外国人パートナーの出身国に関係なく、国際同性カップルの結婚を実現するための法案が提出されるなど、新たな動きも確実に現れ始めています。
さらなる「婚姻平權(婚姻平等の権利)」に向けて、歩み続ける台湾。
台日同性カップルが結婚できる日も、そう遠くない未来に、訪れるかもしれません。