2020/02/28

アジア初の同性婚を実現した国・台湾。その後の変化とは?

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台湾で同性婚が実現した2019年5月。アジアで初めてとなる大きな一歩から、現在で9ヶ月が過ぎようとしています。

 

LGBTの権利に関する討論が盛んに行われている台湾でも、決して平坦ではなかった実現への道のり。どのような過程を経て、あの一歩は踏み出されたのか。そして、同性カップルにも婚姻の権利が認められた現在、台湾ではどのような動きが起こっているのでしょうか?

 

アジア初の快挙!台湾で同性婚が実現するまでの道のりは?

 

 

 

台湾の政治の場にて、今回の同性婚実現に繋がる本格的な審議が行われるきっかけとなったのは、2016年。異性カップルのみに適用されている「民法」の婚姻に関する規定を、性別にとらわれない表現に改めることで、同性カップルにも婚姻制度を適用できるようにしようという提案(=民法改正)でした。

 

しかし、台湾の国会に当たる立法院にて、第一審査は通過したものの、第二審査にて審議は難航。結論は、先延ばしにされるままの状態となっていました。

 

 

 

 

そこに起こったのが、活動家・祁家威氏の要求によって、2017年に開かれた「憲法法廷」。同性カップルが結婚できない現状を、憲法の観点から解釈してもらうための審議が行われることとなりました。

 

その結果、同年5月には「同性カップルに婚姻の権利を認めない現行の法制度は違憲」との判決が。同時に「判決発表日(2017年5月24日)から2年以内に法制度を整えること」とのタイムリミットも設けられることとなりました。

 

 

 

 

その後、焦点となったのは「同性カップルの婚姻をどのようなかたちで実現するか?」

 

結論が先延ばしとなっていた、異性カップルと同じ法律の規定に盛り込む「民法改正」か、あるいは同性カップルのみに適用される「特別法制定」か。最終的な判断は、2018年11月の「国民投票」によって、国民の手に委ねられることとなります。

 

投票の結果、選ばれたのは「特別法制定」。LGBT当事者からの支持を集めていた「民法改正」による実現は、事実上放棄されることに。同性カップルに婚姻の権利が認められる決定に変わりはないものの、「異性カップルの婚姻と同等に扱うべきではない」との認識が、社会に未だ根強いことを目の当たりにさせられた出来事でした。

 

 

 

 

そして、迎えた2019年5月17日。

 

「司法院釋字第748號解釋施行法」の名で行われた、立法院での特別法審議にて、与党・民進党の賛成多数により、法案は可決。5月24日より法案は施行され、アジア初の同性婚が実現することとなりました。

 

3000組の同性カップルが結婚!台湾で挙式した台日カップルの心境は?

 

 

 

司法院釋字第748號解釋施行法」施行当日となる2019年5月24日から、晴れて同性カップルの婚姻届受付が開始。2019年末現在で、約3000組の同性カップルが結婚と伝えられており、役所にて婚姻届に記入する幸せそうなカップルの姿が、メディアやSNSでも頻繁に見られるようになりました。

 

そして、新しい法律の施行が始まった最初の週末、とある台日カップルが台湾で結婚式を挙げました。

 

Ianさんは台湾国籍、Azさんは日本国籍。会場には、ご親族やご友人、お二人が出逢うきっかけとなったバレーボールサークルのチームメイトなど、200名以上がお祝いに駆けつけ、笑顔と涙に満ちた結婚式となりました。

 

 

台湾国籍のIanさん(左)と、日本国籍のAzさん(右)。

 

結婚式を挙げてから感じていることについて、Azさんは「夫の家族と、家族として接することが出来ることに、一番の幸せを感じます。」とコメント。

 

「台湾は元々、同性同士が付き合うことに寛容な雰囲気があると思います。私自身は台湾に来てから、自分のこと、夫のことを、(職場である語学学校で教えている)生徒さんや友達にオープンに話しています。そのため、同性婚が実現してから大きく変化を感じたことは特になく、台湾が元々、多元性に寛容であることは日頃から感じています。」

 

と、台湾での生活の心境についても語っていただきました。

 

「(同性婚が実現してからも)日常生活の空気感に、特別大きな変化はありません。」と語るのは、パートナーのIanさん。

 

「しかし、自分たちの存在がようやく社会に認められるようになったのだなと、感じられるようになりました。同じくLGBTの友人に会った際、彼らが以前よりも明るく、堅実になったなあという印象を持つこともあります。」

 

と、同性婚が実現してからの変化について実感しているそうです。

 

 

 

 

しかし、結婚式の準備段階では、心配を感じた場面もあったと言うIanさん。

 

「式場選びの際には、式場側が本当に同性カップルの結婚を快く受け入れてくれるのかが心配で、非常に悩みました。また、実家の営むお店のスタッフのみなさんを招待すべきかどうかも、とても迷いました。」

 

当然のことではありますが、法律ができることで、社会全体の認識までが、その日を境にいきなり変化するわけではありません。真の意味での「婚姻平權」が実現し、正しい理解が広がっていくための時間が必要という観点から見れば、「同性婚の実現は、きっかけであって、スタート地点」と言うこともできるのかもしれません。

 

実際に、結婚式を挙げたお二人の前にも、まだこれから乗り越えていかなくてはいけない壁が立ちふさがっていました。

 

婚姻届が受理されない国際同性カップル。台湾で同性婚は実現したはずなのに、なぜ?

 

 

 

「受理されないことは分かっていたのですが、同性婚がある国の一覧を見せられて、そこに日本がないから、受理出来ないと言われた時は、自分が日本人であることを痛感しました。日本に同性婚ができることを強く望んだ瞬間でした。」と語るのは、日本国籍のAzさん。AzさんとIanさんの婚姻届は、新しい法律が施行され、結婚式を挙げた現在でも、依然として受理されない状態となっています。

 

台湾では、確かに同性婚を実現する法案が可決されました。しかしその中に、「国際同性カップルの婚姻」を保障するための項目は、盛り込まれませんでした。正確には、パートナーのうち片方の母国にて、同性婚が認められていない場合、台湾でも結婚をすることができないのです。

 

司法院釋字第748號解釋施行法が可決される1年前から、結婚式の準備を進めていたお二人。しかし、国際同性カップルの結婚に関する保障が、今回の法案に盛り込まれないと判明したのは、可決の3ヶ月前になってからのことでした。

 

台湾では現在、500組以上もの国際同性カップルが、お二人と同様の状態に陥っているとの報道も。婚姻届を受理されなかったことに対する訴訟を起こすカップルも現れており(参照)、これから本格的に討論が始まろうとしています。

 

 

 

 

また、異性カップルの婚姻と、権利の「差」が存在している部分は、他にも。

 

同性カップルの婚姻では「血縁関係にある子供」を二人の子供として迎えることは認められていますが、血縁関係にない子供を二人の養子として迎えることは、未だ認められていない状態です。

 

また、男性同士の同性カップルの場合、「血縁関係にある子供」を迎えるためには「代理母出産」が必要となりますが、こちらも台湾ではまだ認められていません。

 

依然として存在しているこれらの課題は、どのように解決されていくのか。「婚姻平權」を巡る次なるテーマとして、今後の動向に注目が集まっています。

 

2020年台湾総統&立法委員選挙で、同性婚はどのように捉えられていたのか?

 

 

 

今後、上に挙げたような課題を解決するためには、「婚姻平權」に向けて積極的な姿勢を採る政府の存在が不可欠です。

 

台湾では先月、これに関連する大きな動きが。2020年1月11日、国の政治のトップを司る台湾総統と、立法委員(=立法院にて法律の審議を行う委員)を決める投票が行われました。

 

選挙戦が本格化した当初、同性婚支持を表明していた蔡英文総統と、蔡総統率いる民進党は、苦戦を強いられることに。

前期4年間の任期中にて、年金改革に代表される、痛みをともなう改革を進めて来たことがその要因となっており、残念ながらその一つとして「同性婚の実現」も挙げられていました。

「異性カップルの婚姻と同等に扱うべきではない」とした国民投票の結果が表していたように、同性婚の実現を肯定しない層が、広く存在していたためです。

 

対抗勢力であり、優勢となっていた国民党陣営には、同性婚反対を強く打ち出す候補者も。「同性婚実現前の状態に戻してみせる」と発言する候補者や、同性婚反対のポスターやのぼりが街に現れるなど、選挙期間中、台湾に暮らす当事者の間では不安の声も多く聞かれました。

 

 

 

 

しかし、選挙戦が進むにつれ、勢いを取り戻す蔡英文総統と民進党。

 

台湾の主権を守るという確固とした立場の表明、有権者間での国民党陣営への不信感の高まり、そして同性婚の実現を含む、蔡政府の有言実行に対する再評価。最終的には、蔡英文総統が、台湾で選挙が始まって以来史上最高となる約817万票を獲得し、再選を果たす結果となりました。

 

また、立法委員選挙でも、立法院で民進党が過半数となる113席中61席を確保し、勝利を収めました。

 

 

 

 

結果次第では、アジア初の快挙となった同性婚の実現が白紙に戻る可能性も危惧された、今回の台湾総統&立法委員選挙。その危機が回避され、安堵の声が広がる一方で、さらなる「婚姻平權」に向けた審議がどのように進められていくのかが、今後の焦点となりそうです。

 

***

 

アジアで初めて同性婚を実現した国・台湾で、その後に起こった変化についてご紹介しました。

 

同性婚実現に関連する、近年の大きな動きをピックアップしましたが、2016年の「民法改正」審議が行われる以前から、台湾の当事者の人々は勇敢に行動を起こし続けてきました。

「同性婚実現!」という輝かしいニュースの裏側で、その一歩を実現するまでには、数十年以上にわたる長い努力の道のりがあったことも、忘れてはいけないポイントです。

 

まもなく、同性婚実現から1周年。「婚姻平權」を巡って、新たに起こり始めている変化が、どのような実を結ぶことになるのか、今後の台湾からも目が離せません。

 

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