「これから始まる40代。どうやって過ごしたいだろう、と改めて考えてみたんです。」
LGBTQ+の方々へのインタビューや、世界各地のLGBTプライド紹介、旅の様子を伝えるVlogなど、多様なテーマの動画をYouTubeにて発信している、かずえちゃん。
日本国内だけでなく、世界中を飛び回る彼が、2023年から新たなチャレンジを開始しました。
それは、台湾と日本の2拠点生活。これまでにも様々なライフスタイルを試みて来た中で、今回の決断に至った背景や、これからのことについてお話を伺いました。
年齢の10の位が変わる節目は、変化の時となることが多かったという、かずえちゃん。
今回、台北に生活拠点を置くという決断には、前回の節目であった30歳目前の過去の自分とも重なる部分があると言います。
「カナダに行くことを決めたのも、29歳の時でした。それまで、生まれ育った福井をほとんど出たことがなかった僕。カナダへ行って初めて、同性カップルが結婚できる世界を肌で体感したことは、とても大きなターニングポイントだったと思います。台湾生活を決める前、日本で仕事をしながら暮らす生活に、決して不満があったわけではありません。しかし、39歳を迎えた頃にまた ”これからの10年、自分はどう生きたいのだろうか?” と、考えるようになりました。」
「住所を持たないアドレスホッパーという暮らし方をしていた頃に、コロナの流行が始まり、各地を飛び回るライフスタイルを諦めざるを得なくなったことも大きかったです。少し先の未来のことすら、どうなるかは分からない。人生の不確定さみたいなものを、身に沁みて実感しました。それなら、やはりこの節目に ”やってみたいことにチャレンジすべきでは?” そう思い立って、台湾に来ると決めました。」
生まれて以来ずっと馴染んできた環境や、安定した収入を手放し、文化も風習も異なる場所へと移住するには、大きな勇気が必要なはず。不安は全くなかったのでしょうか?
「正直なところ、今回(台湾生活を始めること)に比べると、カナダへ行く決断をする時の方が数倍勇気が必要でした。英語も話せませんでしたし、人生の中での成功体験も決して多くはなかった。その当時に比べれば、様々な経験を積み重ねて来て、”決める” という行為自体に慣れて来たのかもしれません。僕にとって(台湾生活を始めること)は、今、心の中に数ある ”やりたいことの中のひとつに過ぎない” という感じで、特別に大きな決断という気持ちはありません。」
「何事もとりあえずはやってみないと分かりませんし、もしうまくいかなくても元の場所に戻ればいい。不安よりも、チャレンジしてみたい気持ちの方が強かったです。」
かずえちゃんと台湾との出会いは、2010年。台北の年末恒例イベントである台北101のカウントダウン花火を見たのが、一番最初の台湾現地での想い出だと言います。
「でもその当時は、数ある海外旅行目的地のひとつに過ぎない、という感覚で、花火のインパクトが印象に残っていたくらいです。でも、日本からのアクセスの良さや、台湾の食べもののおいしい記憶もあって、それ以降も台湾をよく訪れるようになりました。」
「また、ゲイであることをカミングアウトして、YouTuberとして活動をしていく中で、LGBTQ+という言葉が社会でも注目を集めるようになった。台湾には、台湾LGBTプライドの撮影でも訪れるようになり、2019年には同性カップルも結婚ができるようになりましたよね。自分の興味関心と周りの環境の変化が自然と結びついて来たことで、台湾に大きく興味を惹かれるようになりました。」
「同性カップルも結婚できるのは、もちろん大きなポイントですが、現地で暮らすとなると、旅行で来るのとは違って、気候や食文化、街の空気なども含めたフィーリングが合うことも大事ですよね。なぜかは分からないけれど、台湾に来ると毎回、不思議と気持ちが楽になるような感覚があって。それは他の海外の街では、なかなか感じられないものでした。そのことも、台湾に決めた理由です。」
日本と台湾の2拠点生活を始めてから、およそ3ヶ月。実際に台北で暮らし始めてからの印象について、伺ってみました。
「ひとつ、とても印象的な出来事がありました。その方は異性愛者の男性だったのですが、”同性カップルの結婚が実現して、どう感じているのか?” を聞いてみたんです。”以前は街で男性同士のカップルを見かけると、びっくりした気持ち” を感じていたそう。でも現在では、 ”なぜ自分はびっくりした気持ちになるのだろう?好きになる性別は違っても、好きって気持ちはみんな一緒じゃないか!”と、自分自身の普通を見つめ直すきっかけになった、と言うんです。」
「ああ、法律ができるって、こういうことなんだ、と。法律ができた次の日からいきなり変わることはないかも知れないけれど、彼のように徐々に考え方が変わり、社会全体も少しずつ変わっていくんだな、と。これから10年も経ったら、きっと台湾はもっと大きく変わっているんじゃないかなと、感じさせてくれたお話でした。」
カナダに続いて、海外で生活するのは2度目となる、かずえちゃん。台湾は日本のおとなりと言えど、やはり海外生活ゆえの難しさを感じる場面もあるそうです。
「まず一番は、言葉の壁ですね。まだ中国語が話せないので、これから現地の語学学校に通って勉強する準備をしています。あと、すでに台北で部屋を借りたのですが、不動産屋さんを通す日本と違って、大家さんと直接やりとりをするシステムが新鮮だな、と感じました。それと同時に、外国人が部屋を借りることの難しさも体験しました。」
「自分の当たり前なんて、一歩外に出れば当たり前じゃない。再び海外での生活を始めて、そのことをすごく実感します。」
台湾での生活という一歩を踏み出したかずえちゃん。YouTubeを含む活動面でも、新たな試みに向けて動き始めています。
「台湾で結婚をした同性カップルの方々へのインタビュー動画は、ぜひ撮影したいと考えています。同性カップルの結婚が実現して、それが当たり前となっていく台湾社会の道のりを記録するような。そんな動画を作っていければいいなと思います。」
「YouTube以外だと実は今年、台湾LGBTプライドの開催に合わせて、日本から希望者を募って、一緒にパレードを歩く台北ツアーを計画しました。自分の身近な人たちも含め、もっとたくさんの方々に当事者が堂々とパレードを歩く姿であったり、同性カップルが幸せそうに手を繋いで歩く姿を見て欲しかった。今後、日本と台湾を繋ぐような、そういう活動も増やしていきたいですね。」
挑戦したい新たな試みは、プライベートでも。特に「◯◯探し」が、切実なのだそうです。
「これまで何度も来ていた台湾ですが、実は台北以外の街に、まだほとんど行ったことがないのです。台湾国内旅行をたくさんして、新しい台湾の魅力を発見できればいいな、と思います。もしも大好きな場所が見つかったら、台北以外の街で暮らしてみるのもアリかもしれません。」
「あとは何より、”恋人探し” ですね!アプリを使ってはいるものの、なかなか出会えず… 中国語がまだ話せないのも大きいと思うので、そのためにも言語の勉強はがんばりたいです。絶賛募集中なので、ご興味ある方はぜひ、メッセージお待ちしてます 笑」
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台湾生活を始めたYouTuber・かずえちゃんにお話を伺いました。
40歳という節目に、日本を飛び出したかずえちゃん。これからは動画や活動を通して、どんな姿を見せてくれるのか、今後のご活躍からも目が離せません。