こんにちは!台湾在住ライターのMaeです。
みなさんは、台湾の公用語がどんな言語か、ご存知でしょうか?台湾なので「台湾語」かと思われるかもしれませんが(台湾語も広く使われています)、公用語として使われているのは「中国語」。中国で使われている中国語とは言い回しが異なることも多く、台湾独自の表現も少なくありません。
今日は、LGBTに関する中国語のキーワードについて。台湾のメディアや会話の中では、次のような単語がよく登場しています。
LGBTのことを、台湾の中国語では「同志(tóng zhì)」と言います。日本語と同じく「志を共にする仲間」という意味で使われることもありますが、日常会話の中では、LGBTを指す単語として使われる場合が多いです。
例えば、LGBTプライド。台北で毎年10月に開催されているアジア最大級のLGBTプライド・台湾LGBTプライドは、中国語では「台灣同志遊行(tái wān tóng zhì yóu xíng)」と書かれます。「遊行(yóu xíng)」がパレードの意味ですので、「同志遊行(tóng zhì yóu xíng)」でLGBTプライドを指します。
また、「我是同志(wǒ shì tóng zhì)」という同じ一言でも、ゲイの方が使えば「私はゲイ」、レズビアンの方が使えば「私はレズビアン」という具合に、言い手によって、どのセクシュアリティを指すのかは変化します。
日本語の「同性愛」と字面上似た言葉に「同性戀(tóng xìng liàn)」という単語があります。これは文字通り、「同性に恋すること」を指すのですが、使う場合には少し注意が必要です。
「異性戀(ストレート / yì xìng liàn)」「雙性戀(バイセクシュアル / shuāng xìng liàn)」と並列した意味で使う場合は問題ありませんが、差別的な意味合いを込めて発言される場合も少なくないため、快く受けとめてもらえない可能性もあります。
セクシュアリティの「ストレート(ノンケ)」を言い表したい時は「直(zhí)」や、異性戀の最初の一文字である「異(yì)」を頭につけ、ノンケの男性なら「直男(zhí nán)」「異男(yì nán)」のように表現されます。
また、自身はストレートであるけれど、LGBTの方々を支持する「アライ」は、「直同志(zhí tóng zhì)」と表現されます。
LGBTの象徴であるレインボーフラッグ。中国語では「彩虹旗(cǎi hóng qí)」と言います。「彩虹(cǎi hóng)」がレインボーの意味。空にかかる虹も、同じ言葉で表現されます。
この「彩虹」という単語も、LGBTに関連する場面にて、しばしば登場します。先ほど、LGBTプライドは「同志遊行」とお伝えしましたが、例えば台湾南部の都市・台南で行われているLGBTプライドの名称は、中国語で「台南彩虹遊行(tái nán cǎi hóng yóu xíng)」と書かれます。日本語で言えば、レインボーパレードと言ったところでしょうか。
台湾を代表する有名アーティスト・張惠妹さんは「彩虹」という楽曲を発表しており、現在でもゲイアンセムとして、広く親しまれている一曲です。
台湾では、友達のことを「朋友(péng yǒu)」と言いますが、「男朋友(nán péng yǒu)」「女朋友(nǚ péng yǒu)」となると、「彼氏」「彼女」の意味に変化します。ボーイフレンド、ガールフレンドと表現するのと、同じような感覚です。
相手の性別を公開したくない時は「對象(duì xiàng)」という言葉も使え、「我有對象(wǒ yǒu duì xiàng)」で、「自分には付き合っている人(または好きな人)がいる」というニュアンスを表現できます。
男朋友、または女朋友と結婚した場合、お相手の呼び方は「老公(lǎo gōng)」「老婆(lǎo pó)」に。日本語の感覚で眺めてみると、おじいちゃん、おばあちゃんの意味に見えなくもない単語ですが、台湾では「夫」「妻」を指す言葉です。
結婚しているいないを問わず、人生を共にするパートナーであることを伝えたいときには「伴侶(bàn lǚ)」という単語も使われます。男朋友、女朋友よりもさらにもう一歩進んだ、深い関係と言ったニュアンスを表現できるのは、日本語の「伴侶」とも同様です。
自身のセクシュアリティを周囲に伝える「カミングアウト」。台湾では、「出櫃(chū guì)」という単語が使われます。
「櫃」とは「衣櫃(yī guì )」を指し、「クローゼット」のこと。クローゼットは、セクシュアリティを周りに公開していないと言う意味合いで、日本語でも使われていますが、中国語では「クローゼットから出る」という動作をダイレクトに表現することで、「カミングアウト」を意味する単語となっています。
また同時に、「出櫃」をためらってしまう方も依然として多いのは、「恐同 (kǒng tóng)」あるいは「反同(fǎn tóng)」の概念が、社会に今も存在しているから。
「恐同」「反同」とは、当事者の存在を快く思わず、否定的である「ホモフォビア」の意味。LGBTに関する討論が進んでいる台湾でも、「恐同」な発言や行動を起こす個人、団体は存在しており、同性婚に関する国民投票や、同性婚関連法案の審議が行われた際には、非常に大きな反対の声も聞かれました。
どのように「恐同」と立ち向かい、「出櫃」しやすい世の中(「出櫃」の必要すらない世の中)を作り上げていくのか。台湾のみならず、世界中のLGBTコミュニティが戦い続けている問題です。
台湾では2019年5月に、アジアで初めてとなる同性婚が実現しました。同性婚を中国語で言うと「同性婚姻(tóng xìng hūn yīn)」。省略して「同婚(tóng hūn)」と言う単語も、広く使われるようになりました。
同性婚に関連してもう一つ、非常に重要なキーワードとなっているのが「婚姻平權(hūn yīn píng quán)」。日本語で言えば、「婚姻平等の権利」という意味になります。
メディアなどでは「同性婚姻(同婚)」という言葉が、インパクトをもって打ち出されることが多いですが、本質的には「誰もが自由に、平等に結婚できる」社会を目指すということ。大切なパートナーがどんな人であっても、法的な保障が認められた上で、共に人生を歩んでいけること。
「婚姻平權」という言葉は、そんな概念を非常にうまく言い表した表現となっています。
そして、その観点から見れば、台湾は現在も「婚姻平權」の実現に向けて、動き続けています。国際同性カップルの結婚、同性カップルの養子縁組など、依然として異性カップルの婚姻とは「差」のある部分ものこされています。
真の意味での平等を求めて。「婚姻平權」への道のりは、これからも歩み続けられていくことになりそうです。
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台湾でよく使われている、LGBTに関する中国語のキーワードについてご紹介しました。
現地のメディアや、台湾の方たちとの会話中に、しばしば登場する単語たち。これらの言葉を見聞きしたら、LGBTに関する話題である可能性大ですので、台湾の動向が気になる方は、ぜひ注目してみてくださいね。