「あなたにとって、愛とは、セックスとは、何ですか?」
本来、人も愛もセックスも多様であり、個人の恋愛を他人がジャッジするものではない。
「正面×愛とセックス」は、”普通に”生きるLGBT当事者の愛とセックスについて、赤裸々に語ってもらうインタビュー連載です。
── 30代 ゲイ 飲食業 ──
ーあなたのとってセックスとは何ですか
初恋は近所の同い年の男の子でした、優しくてヤンチャな感じの。自分は女の子より男の子の方が好きなのかもしれないって、ボンヤリと自覚はあったんですけど認められなくて。当時はテレビを見ても、所謂オカマっていう人しかテレビに出てなかったんで。自分はこういうのとは違うのに、男の子の方が好きなんだって周りにバレたら馬鹿にされちゃうのかなって。
それ以外は普通の子供でしたよ。引っ込み思案で友達作るのは得意じゃなかったですけど、体を動かすのが好きだったんで、近所の裏山で皆でよく遊んでました。砂利を滑り降りたり、戦隊モノごっこしたり。ただ女の子と遊ぶ時はお人形で遊んだりもしてましたけど、そういうのにも抵抗は無かったです。
それから中学高校に上がると、男の子たちはやっぱりアダルトビデオとかそういう下ネタの話になったりするじゃないですか。全くついて行けなかったんで、どうしようか自分なりに考えて…これは潔癖のフリしかないなと。中高6年間は男も女も嫌いですってフリをして、とにかく目立たずジミに。周りからしたら、本当にネクラでイヤな奴だったと思います。
それとは別に、高校生の頃は映画が大好きだったのものあって、レーザーディスクを買う為にバイトに明け暮れてました。当時はハリウッドスターになりたいとか思ってたんで、字幕も英語にして発音の練習したりして。でもふと、そんな大それた夢おかしいわって思ってやめちゃったんですけど(笑)
男性との初体験は19歳でした。インターネットでそういう施設があるっていうのを知って、まぁ…発展場です。
他人とコミュニケーションをとるのが得意じゃなかったんで、ネットで知り合ってやり取りしてっていうのも出来ないし、そういう施設の方の方が自分は合うかな?って。初めて行った時は少し怖かったですね、やっぱり。店に入る勇気がなくて、一時間くらいずっと店の周りをウロウロして、やっと入って。きっと所作が初めてって感じだったんで、慣れてそうな人に手を引っ張られて。少し怖いんだけど、好奇心の方が強くて。初めての感想は、まぁこんなもんかなって。嫌な感じは全然なかったんで、次はもうちょっと違うことしてみようとか、それからは割と頻繁に通いましたね。
女の子と初めて付き合ったのはその後です、20歳の時でした。だから、彼女にすごい罪悪感があって…発展場みたいな所に通ってる自分が、女の子と付き合ってていいのかなとか。本当に最後の悪あがきだったんでしょうね、これが女の子を好きになれる最後のチャンスだって思い込んでました。同性が好きなんだって解りきってるけど、やっぱりどっかで認めたくなかったんです。先が見えない20歳くらいの時は、いい歳になったらフツウに結婚とかもしなきゃいけないよね、って思ってましたし。発展場行ったりして、なんとなく誤魔化しながら楽しんではいるけれど、こんなのは永遠には続けられないよなって。
その彼女と別れてからゲイバーに行くようになったんですけど、そこでゲイの知り合いも出来て。あ、なんかゲイで生きていくのも楽しいかもって思うようになったんです。年上の人と遊ぶ機会も多かったんですけど、自分より年上の人達が楽しそうに生きているのを見て、ゲイとして生きるのもいいなって。ロールモデルとかって大袈裟なもんじゃないけど、そこで出会った人達がゲイである自分を否定してるような感じだったら、きっと今も自分がゲイであることを認めたくないって思いながら生きてたかもしれないです。
その頃はセックスするといちいち好きになってましたけど、今はないですね。心と体は分けて考えてるというか。
当時は殆どウケだったんですけど、その時の方が「セックス=恋愛」的に考えてました。誰かに受け入れてもらいたいって気持ちが強かったのかも。自信が無かったっていうのもあったんでしょうけど、どうしても選ばれる側って感覚があって、なんなんでしょうね…これって。今はタチなんですけど、タチだと征服欲が満たされると言えばいいのか、主導権を握ってるような気になるのかも。
ここ数年は恋愛らしい恋愛はしてないです。今はとにかくお店が第一だから…代替わりして二年経ってないんで、恋愛とか言ってる場合じゃないっていうのもあるんですけど。こうまだ安定してないんで。まず土台をちゃんとしない限りは、恋愛する余裕も出てこないし。
かと言って、今までも誰かを好きになって必死に追いかけたりしたことが無くて、割と遠距離恋愛が多かったんですけど、住まいを変えてまで近くに行こうとか考えたことないんですよね。20代の頃にすっごい好きになった人がいたんですけど、フラれて。もともと彼氏がいた人だったんで、肉体関係はなかったんですけどね。その時にフラれるのがこんなに辛いんだったら、誰かをすごく好きになるのはもうイヤだなって思っちゃったのかも。それからは、あえてそういう状況を選んでるのかもしれないですね。かなり引きずった記憶があります、一人で切なソング祭りとかしてましたから(笑)
それからはどっかで制御しちゃってるような感じはありますね。なんかちょっと不完全燃焼というか。セックスに関しても。
やっぱり、好きな人とするセックスって全然違いますし。単に見た目がタイプだったり、興味がある人とのセックスは、もちろん行為としては楽しいんですけど、どっちかというと排泄行為に近いというか。でも、そういうのが続くとさすがに虚しくなっちゃいますよね。
いやでも本当に昔に比べると、性欲無くなってきました。
自分はセックスフレンドを作るようなタイプでもないんで。彼氏がいない時とか、若い頃は頻繁に発展場にも行ったりしてたんですけど、今は行かないですね。仕事柄、お客さんとバッタリとかも避けたいですし。
休みの日なんかに一日中家にいて、ふと気付いたら誰とも喋ってないわって気付いた時に、あれ?こんなんでいいのか?ってふと頭を過るんですけど、こうやって人に会わずに居られる状態も有意義だなって。もちろん寂しい時もあるんで、そういう時は誰かと肌を合わせたくなったりしますけど、若い時みたいにすぐ誰か誘ってとかは無いですね、我慢できるようになった(笑)
自分で自分を大事に出来ない時って、誰かに大事にされたいなって思うんですよね。若い時はその証拠が欲しくて、セックスをバロメータにしてた。だから数は多い方がいいって思い込んでた。でもそれって、その時は必要とされてるって思えるんですけど終わったと同時に、それが全部流れていって逆に虚しくなってた、何やってんだろって。
だからってセックスは嫌いにはならないですけどね、単純に気持ち良いから。でもそれだけかって聞かれたらそうじゃない。なんか矛盾してますけど、その一瞬でもその相手を愛しいと思うというか。どっちかというと、喜ばせてもらうより喜んでもらうほうが好きっていうのもあって、大袈裟かも知れないですけど、セックスすることによって与えられてる自分を感じられるんですよね、目の前にはその気持ちを受け入れてくれた相手が居て。それによって自分が満たされるっていう。
もともと喋ったりするのは苦手なんで…言葉もあまり必要ないですし(笑)そういうのが一番ダイレクトに伝わりやすい、コミュニケーションの一つかなと思います。
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