主演のリリト・シュタンゲンベルクのオオカミとの演技はいかがでしたか?
リリトとはかなり話し合いました。キャスティング・オーディションで彼女は自分の番になった時に、すぐに本作の役柄について話し始めました。
命が危うい状況に身を置くというところから説明を始めました。彼女は本作が自分を解放する唯一の機会だと分かっていましたし、私が何も言わなくてもすごくやる気がありました。ですから、彼女とは演出上のやりとりをするだけで、とくに具体的なアドバイスはしませんでした。
状況を与えてそれにどう対応するかが俳優の仕事ですよね。私は彼女に恐れを感じてほしくなかったのです。リリトは本当に危険に身を晒していましたが、同時にオオカミに自分自身をすべてさらけ出していました。本当に彼女にとってオオカミは“恋人”という感じでしたね。
主演リリトとオオカミの撮影はどのように行ったのですか?
この映画はものすごく用意周到に撮られています。つまり、安全をきちんと確保していました。まず、ハンガリーからオオカミのトレーナーを呼び寄せました。
そのトレーナーにオオカミとの撮影はどこまでが可能なのかを色々と相談しました。オオカミが主人公を観て喜ぶ様子などを撮りたかったので。
撮影は全部で28日間、1日の撮影は10時間くらいで、その内オオカミの撮影は15日間で1日3~5時間でした。主役のリリトは撮影前の3週間ハンガリーに行き、オオカミトレーナーの元で指導を受けました。そして、撮影は一匹のオオカミ(ネルソン)でほとんど撮影しました。オオカミはあまり長く檻から出しておけません。オオカミと上手く撮影する秘訣は、オオカミをそこそこお腹いっぱいにしておくことです(笑)。
舐めるという動作ではフォアグラを利用したり、リリトの後を付いていくシーンではポケットに肉片を忍ばせて少しずつ落としていったりしました。基本的にエサにつられればなんでもやりますね。しかし、オオカミは絶対に自由になる機会を見逃さないのです。もし檻の扉を少しでも長く空けていたりすれば、その隙に出て行って二度と帰ってこないでしょうね。犬とは違います。そもそも人を喜ばせようとは思ってないですし、どうでもいいんですよね。そこが彼らの魅力でもあります。だからリリトは本当に危険に身を晒しながら撮影をしていました。
この映画で伝えたかったことは何ですか?
私は皆さんに‘経験’というものを提供したかった。大抵、他の似たような系統の映画だと、‘自然に還る’ということは何らかの罰を与えられたりしますよね。
コントロールが無くなった状態というのは、すごく怖いです。けれど何かに縛られない、制御されないというのは良いことなんです。私はそれを体感できる映画を作りたかったのです。
日本の観客へ一言お願いします。
日本で公開される日が来るのをとてもワクワクしています。私はスタジオジブリ作品が好きなのでジブリの脚本執筆のオファーが来ないかなと期待しています(笑)。これは私の夢の一つです。他の日本の作品も尊敬していますし、大好きです。
『ワイルド わたしの中の獣』は、12月24日(土)より新宿シネマカリテほかにて絶賛公開中。詳しくは映画公式サイトをチェック。