先日米リサーチ会社ギャラップの調査で「LGBTが生きやすい国ランキング」一位に選ばれたオランダですが、どのような場面でLGBTが生きやすい環境が整っていると感じますか?
オランダでLGBTに対する理解度合いがわかる、2つのエピソードを紹介します。
まず一つ目は、電車で久々に会った男女の会話で、女性が「私この前結婚したのよ〜!」と話したのに対し、男性が「そうなんだ!おめでとう!ちなみに結婚したのは男性?女性?」と言いました。それに対し女性は、「男性と結婚したのよ。名前はピーターって言うの」とごくごく普通に会話をしていました。
恋愛は異性間・同性間の区別なく同等として捉えられているのです。とても素晴らしい価値観だと思います。
また、別のエピソードになりますが、
私はあるパーティーで20歳ぐらいの子と同性婚について話しをしていると、「え!オランダでも同性婚が出来なかった時代があるんですか!?」と驚かれました。若い人の中には、オランダで同性婚が出来なかった時代を知らない人もいるほど、同性同士の恋愛・結婚が、当然の権利として扱われているのです。
ちなみにオランダでは、カミングアウトする平均年齢は14歳です。
カミングアウトしやすい環境ではありますが、思春期の多感な時期なので家族のサポートも十分整っていなければなりません。学校などの教育機関ではLGBTの教育やサポート体制も堅固なので、自身がマイノリティであることに苦悩する若者も減ってきていますね。
現在のオランダの同性婚事情について教えてください。
オランダでは毎年75000組が婚約しており、そのうち3000組が同性婚カップルです。また同性婚以外にもパートナーシップ法も毎年数千件にのぼっています。
もちろん、全てのLGBTが結婚するわけではないので、ストレートと同様に各々自由に選択しています。
日本はLGBTへの施策、同性婚の法的制度が遅れていますが、今後日本が同性婚に向けて前進する為にアドバイスをお聞きしたいです。
LGBTの問題は国によって異なるので一概に言えませんが、本質的に違うのはオランダは個人主義、日本は団体主義ということですね。
セクシャリティの問題が話されない国では、LGBTというとぼんやりとしたイメージしかなく具体性が無いんです。なので私は、「イメージに顔を付ける」ということを教えています。LGBTは特異な人々の集まりなのではなく、単なる人間、どこにでも居る普通の存在なんだよ。と伝えています。
それを行う為には「可視化」が大きなキーワードでしょう。
LGBTのロールモデルやリーダーを立てることです。ビジネスマンや弁護士、医者、などといった様々な分野の人々がいい。ストレートからするとLGBTは「普通ではない何かわからない人達」という印象があるので、様々な分野の人達が目に見える形(可視化)されていれば、明確なイメージが付きやすくなります。
上記以外だと、日本はまだまだ法的な部分で課題が多いよう感じます。例えば差別撤廃の反差別法を制定する必要があります。
また、いま日本はオリンピックを控えているのでとても良い時期だと思っています。先進国として、差別を無くしグローバルな国家を世界各国にアピール出来る絶好の機会です。
次回オランダ国王がオリンピックの準備期間中に来日予定ですが、その際に我々ヒューマン・ライツ・ウォッチと連携し、日本政府に対してLGBTの差別対策に向け働きかけをしていくつもりです。2020年までに日本であらゆる差別が行われないよう、様々な角度から目を光らせていきます。
日本のLGBT活動についてどのような印象をお持ちですか?
日本でも素晴らしい活動をしている団体は多いですよね。
例えば、大阪淀川区の取り組み、奈良のLGBTフレンドリー都市化、NPOのグッドエイジングエールズなどです。しかし、どこか点在しているイメージがあります。それぞれが個別で動いていくよりも、一致団結して大きなムーブメントを起こして欲しいですね。
次のページ|3ページ目