LGBT映画『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気』が、11月26日(土)より日本公開される。
それに先立ち、同映画から「ダイバーシティーとは何か?」を考えるトークイベントが、15日に明治大学にて開催。
同イベントでは、明治大学の学生たちに向けた映画の先行上映会+LGBTアクティビストを招いたトークショーが行われた。
映画『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気』は、女性刑事ローレルと、恋人ステイシーのレズビアンカップルを題材にした、実話ベースのヒューマンドラマ。
順風満帆な二人だったが、ローレルがガンで余命宣告を受け、遺族年金をパートナーのステイシーに遺そうとするも、既存の制度では認められず。
死期の迫ったローレルは制度改正を求め裁判で戦うのだったーー。
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トークショーでは、世田谷区区議でトランスジェンダーの上川あや氏、日本IBMにてオープンリーゲイの本部長・川田篤氏、(株)ポーラのダイバーシティ推進チーム課長・齋藤明子氏がゲストとして参加した。
映画の感想を聞かれた川田氏は、自身に投影しこう語った。
「私はゲイなのですが、15歳下のパートナーがいます。年齢的に私の方が先に亡くなるため、映画が他人事ではなく、現実問題として見てしまいました」
「劇中で二人が立ち上がったように、誰かが声を上げないと何も変わらない。声を上げることが大事だと感じましたね」
ポーラの齋藤氏は、「映画を見た感想としては、主人公ローレルとステイシーといった女性たちがキャリアを築くことの難しさも描かれています。女性活躍をテーマに活動を行う私としましては、LGBT問題もそうですが、女性権利の目線からも見れる映画でしたね」
「また、本作はただの恋愛映画ではなく、愛はもちろんのこと、自ら仕事を掴み取る、家や車を買う、病気と闘うといった、人生ドラマが凝縮された映画です」と語った。
劇中、主人公ローレルが住むニュージャージー州では同性婚が合法化されておらず(*注1)、同性パートナーへは財産分与ができなかった。
現在日本では、「同性パートナーへ死亡保険金受取」を可能とした、保険会社が急増している。
この件について、世田谷区区議の上川あや氏はこう語る。
「昨年施行した渋谷区&世田谷区の同性パートナー証明書ですが、『法的効力がない』と散々言われてきました。しかし現在では、保険業界から航空会社のマイレージ、企業の福利厚生に至るまで、多くの企業が同性パートナーへサービス拡大を行っています」
「またその多くのサービスは、同性パートナー証明書を両者の関係を認める手段として有効としています。確かに今の証明書に法的効力はありませんが、多くのサービスが受けれるようになったことは大きな一歩だと思っています」
世の中は多様性に溢れており、多数決が全てではない
ちなみに、11月16日は「国際寛容デー」だ。
人々があらゆる多様性を受け入れる世界実現を目指し1996年に国連が制定している。
昨今、LGBTを含めた「多様性」について議論される機会が増えたが、このことについてIBMの川田さんはこう語る。
「LGBTの認知度が上がってきましたが、違う意味で理解が進んではいないと感じています。例えば、『LGBTからカミングアウトされたらどう対応すればいいの?』などという、テクニカルなものではないと思っています。コミュニケーションすることが最も大事で、結局は『人同士の信頼関係』なのではないかと思っています」
「日本は、子供の時から何かを決める際に『多数決』だったと思います。もちろん民主主義において多数決は大事ですが、『多数決=良い』とされてしまうのは危険で、それにたどり着くまでちゃんと一人一人の意見を聞いてディスカッションするという過程が大事です。世の中は多様性に溢れており、多数決が全てではないですよね」
トークイベントで熱く議論されたように、映画『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気』は、二人の純粋な愛を描いたラブストーリーであると同時に、同性カップルを取り巻く様々な問題が浮き彫りになる社会派ドラマ。
愛と感動、またダイバーシティーの重要性を映画で感じ取ってみてほしい。