松たか子主演、深田晃司監督の最新作『ナギダイアリー』が、9月25日より絶賛全国公開中。
松たか子がクィアな彫刻家を演じる作品として、公開前から話題の作品だ。

主人公は、自然豊かな町「ナギ」でひとり暮らす彫刻家・寄子(松たか子)。
クィア女性である彼女のもとへ、弟の元妻で、東京と台湾で建築家として働いてきた友梨(石橋静河)が休暇をとってやって来る。
かつて義理の姉妹だった2人が過ごす数日間。食事をしたり、話したり、彫刻を作ったり——。静かな日常を通して、映画は「誰と、どこで、どう生きるのか」を見つめていく。
本作は第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも正式出品された、深田監督が企画から9年をかけて完成させた作品だ。
寄子というキャラクターが生まれた背景には、深田監督が映画のモデルとなった岡山県奈義町で重ねた取材がある。
多くの住民と出会うなか、唯一出会わなかったのがセクシュアルマイノリティだったという。
もちろん、その地域に当事者が「いない」ということではない。
深田監督は、日本ではカミングアウト自体のハードルが高く、地方に限らず東京であっても、当事者の存在が社会から“見えなくなっている”ことを指摘している。
だからこそ、映画のなかではあえて、その存在を描こうと考えたという。
寄子自身も、町の人たちに自分のセクシュアリティを明かしてはいない。
松たか子は演じるにあたり、セクシュアリティを過度に強調することも、逆にまったく意識しないことも避けたという。寄子がこの町で生きていくなかで、カミングアウトしないことも彼女自身の選択として捉えたと語っている。

『ナギダイアリー』の特徴は、寄子を「セクシュアルマイノリティだから苦しんでいる人物」としてだけ描いていないところにもある。
彼女は彫刻家であり、誰かの姉であり、友人であり、この町で生活するひとりの人間だ。



深田監督も、寄子のセクシュアリティを物語の中心に押し出すのではなく、地方でひとり生きる女性という人物像を作っていく過程で、その設定が形作られていったと説明している。
「LGBTQ+だから」特別な物語を与えるのではなく、ただそこに暮らしている人としてスクリーンに映す。
そんな静かな表現だからこそ、『ナギダイアリー』は、「自分の周りにはLGBTQ+はいない」と思っている私たちにも問いを投げかける。
本当に“いない”のか。それとも、ただ“見えていない”だけなのか。
映画『ナギダイアリー』は、新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国公開中。監督・脚本は深田晃司。松たか子、石橋静河、松山ケンイチらが出演する。