先日のアカデミー賞にてLGBT映画としては史上初の〈作品賞〉を受賞した映画『ムーンライト』。3月31日の公開に先駆けて、特別試写イベントが都内で開催された。
同イベントには、女装パフォーマーのブルボンヌがゲストで登場。映画を観た感想を率直に語った。
観終わったあとに反芻したくなる、コクのある映画
『ラ・ラ・ランド』との一騎打ちとなり、大きな話題を集めた『ムーンライト』。
女装パフォーマーながら映画ライターとしても活躍し、LGBT映画に造詣の深いブルボンヌは『ムーンライト』をどう観たのだろうか?
「作品を観た率直な感想としては、「あれ、こんな感じなんだ」っていうぐらい、想像していたよりもあっさりした表現でしたね」
「なんだけど、二回目に観たら、一回目より心に沁みたんです。劇中で起こる様々なことが雫のように心に垂れてきて、あとで自分の中で反芻するような感じ。とても深みのある、コクのある映画ですね」
あの『ブロークバック・マウンテン』を超えられたのはなぜか?
『ムーンライト』はLGBT映画としては史上初となる、アカデミー賞の最高峰〈作品賞〉を受賞したことで話題になっている。
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「今回、LGBT映画で〈作品賞〉受賞は初だけど、これまでオスカーのノミネート作品はたくさんあったわよね。それこそ1985年の『蜘蛛女のキス』にはじまり、2005年の『ブロークバック・マウンテン』なんかが有名。ここ最近だと『キッズ・オールライト』『イミテーション・ゲーム』など名作が続いてる」
不朽の名作『ブロークバック・マウンテン』さえも成し遂げられなかったオスカー作品賞。これまでのゲイ映画と比べて、『ムーンライト』がオスカーを獲得できた理由は何だろうか?
「『ブロークバック・マウンテン』は分かりやすい壮大な映画よね。だけど『ムーンライト』は単館上映タイプの映画だなと思った。昔だったらアンダーグランド扱いされるだろう作品が、まさかのアカデミー賞作品賞という世界の頂点になったのは凄いこと!」
「それには、”白人だらけのオスカー騒動”や近年のLGBTムーブメントなどの後押しを受けて、時代に乗ったというタイミングの良さもあった。だけど、そんな時代背景も含めて映画だと思うのよね」
「メッセージの受け手(観る側)の許容度がないと、大きな賞に乗っからせてもらえない。言い方は適切かはわからないけど『受け手が成長している』のを感じるわ」
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