現在、世界中で流行している「サル痘」。
特に今回の流行では、MSM(ゲイ・バイ等)に広がっている感染症ということもあって、ゲイたちにはかなり注意が必要だ。
しかし、サル痘とはどんな病気で、どんな予防をすれば良いのか?まずは正しい知識を得ることが大事。
そこで今回は、「国立感染症研究所」の感染症危機管理研究センター長・齋藤先生に話を聞いた。
まず齋藤先生に、現在わかっているサル痘の全体像を教えてもらった。
「サル痘のはじまりは、動物から人に感染した感染症で、アフリカで初めて感染が報告されました。今年5月にイギリスで感染が確認されており、現在96カ国で感染者が確認されています」
「WHO(世界保健機関)の発表によると感染者は3万件を超えていますが、報告されていない数も考えると、実際にはもっと多くの感染者がいると予想されます」
「感染者の多い地域は、ヨーロッパとアメリカ。日本国内は感染者が少なく、現在4件報告されています」(8月22日時点)
齋藤「ヒトからヒトへのサル痘の感染は、以前は飛沫感染や、患部の接触によるものが知られていました。今回は特に『性的な接触』を通じた感染がカギだと分かってきました」
サル痘の感染経路:
・発疹、カサブタ、体液や血液に触れること。
・性的な接触(口の中、肛門、 性器との接触を含む)
・近距離での対面で飛沫に長時間さらされること。
・感染している人が使用した 寝具や器具などに触れることなどによって、ヒトからヒトへの感染が起こる可能性がある。
飛沫感染のリスクは小さいため、新型コロナウイルスのように、人から人への感染リスクは低いとのことだ。
そして注目すべきは、今回の流行の感染者のほとんどがゲイ・バイ男性という点だ。
「サル痘感染者の97%がMSM(ゲイ・バイ等)。年代は30代が最も多いです」
なぜ、これだけゲイ・バイ男性に感染者が偏っているのか?
理由の一つがアナルセックスにあるという。
齋藤「今回の流行では、性器、肛門、直腸に発疹ができやすい傾向にあるため、性的に接触することで、感染リスクが高まります。そのため、アナルセックスは理由の一つかもしれません」
先生によると、なぜ腟性交に比べて、アナルセックスの感染リスクが高いかは、詳しくはわかっていないそう。
仮説としては、これまではあまり知られていなかったが、ウイルスの性質的に、あるいは血流が多いなどの理由で、直腸・肛門はこのウイルスが感染しやすい場所だったかもしれないという点。
そして直腸は細かい傷がつきやすいため、ウイルスが入り込みやすいのかもしれない、という点だ。
たまたまゲイ・バイ男性のコミュニティにウイルスが入り込んで、それが明らかになった可能性がある。
ただし、アナルを伴わないセックス(バニラ、オーラルセックス等)でも感染リスクはある。患部に触れることや、キスでも感染の可能性があるからだ。
もし、感染してしまった場合、どのような症状が出るのだろうか?
「全身の倦怠感や発熱、発疹(顔、性器、肛門等)が見られます。人によっては患部に痛みを伴う場合もあります」
発疹ができる箇所は、人によってさまざまだという。
発疹は、最初は水膨れのようになり、その後はカサブタとなり、最後はポロッと剥がれ落ちる。
サル痘の発症後は2〜4週間で自然に完治するそうで、死亡率も極めて低い。
もしサル痘に感染した場合、治療薬はあるのだろうか?
「感染した場合、症状に応じた治療が行われます。サル痘ウイルスに効果のある治療薬は日本国内で流通していませんが、臨床研究でサル痘の患者を対象に投与出来る体制が整えられています」
ワクチンについてはどうだろうか?
「サル痘には、天然痘のワクチンが有効です。日本では予防を目的として広く一般の方に打つことは行われていませんが、医療従事者やサル痘感染者との接触者を対象とした臨床研究での接種が行われています」
一般の方がワクチン接種できない理由としては、国家備蓄のみで一般に流通していないこととまだ流行レベルが低いことが挙げられるそうだ。
また、幼少期に天然痘ワクチンを接種した人(目安として45歳以上)は、サル痘への免疫があるのだろうか?
「過去に天然痘ワクチンを打った方が、現在も効力があるとは言えません。打っていない人と同じように感染しないように気をつけていただきたいです」
最後に、ゲイ・バイ男性のセックスライフで気を付けて欲しいことを教えてくれた。
現時点でできる対策は2つ。
・不特定多数とのセックスは控える。
・病変のある人とのセックスは控える。
なるべく不特定多数とのセックスを控えて、信頼できる人とだけしよう。
そして、何かしらの症状(発熱、倦怠感、発疹)がある人とのセックスは控えよう。
サル痘はアナルセックスで感染しやすい病気とはいえ、オーラルセックス、バニラ等でも感染リスクはある。コンドームも感染リスクは下がるが、完全に防げるわけではない。
現時点ではワクチンを打つことができないため、なるべく上記を考慮して、安全に気をつけたセックスライフを行ってみてほしい。