2019/09/13

腐女子ならぬ「腐男子」が急増中。アメリカで盛り上がるBL事情とは?

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マンガと並び、日本発祥の文化といえば「ボーイズラブ(BL)」だろう。

 

国内では腐女子を中心に熱狂的なファンを獲得しているBL市場だが、その人気は国内にとどまらず、今や世界中でファンを獲得している。

 

とりわけ北米では毎年さまざまな都市でBLイベントが開かれるほど。

日本でのBLユーザーはほとんど腐女子だが、北米では男女比は1:1で、意外にも「腐男子」が多いのが特徴だという。

 

そんなアメリカのBL事情について、北米のBL専門の出版社「やおいレボリューション」の代表・シャロンさんに、記者のジニーKが話を聞いた。

Text  : ジニーK

 

なぜアメリカでは「やおい」と呼ばれるのか。

 

写真左がBL専門出版社『やおいレボリューション』のシャロンさん。

 

 

──「やおいレボリューション」もそうですが、アメリカでは、男同士のラブロマンを「やおい」と呼んでいます。その理由を教えてください。

 

シャロン:「ボーイズラブ」がアメリカ人に理解されないように、いまの日本人には「やおい」という言葉はあまり馴染みがないようですね。書店で日本の友人に、「やおいコーナーはどこ?」と聞いたら変な顔をされました(笑)。

私みたいなアラフィフのアメリカ人がBL好きと知って、驚いてもいましたけれど。

 

アメリカで「BL」が定着しなかった理由は、まず、「ボーイズラブ」という言葉が、和製英語であること。

※ 戦前に訳されたドイツ語の「クナーベン・リーベ」“少年愛”からきている

 

さらに、英語では「ボーイズ」とは子供を指しますから、小児性愛を連想させます。アメリカでは未成年の性描写を法律で厳しく規制していて、「作中に登場する人物はすべて18歳以上です」という注意書きをつける必要があるほどです。

 

日本では、「やおい」という言葉は1970年代に作られたと聞きました。

※ 1979年、漫画家の坂田靖子、故・花郁悠紀子、波津彬子らが制作した同人誌『らっぽり やおい特集号』が始まり

 

「ヤマなし、オチなし、イミなし」の頭文字をとって、「やおい」とした、と。これがいつしか男同士のロマンスを意味する言葉として定着したそうですね。

 

英語では、PWP <Plot, What Plot?>といいますが、奇しくも、二次創作の分類タグとして浸透している言葉です。ようは、「深イイ話なんかは期待しないで!」って意味ですね(笑)。

 

アメリカにも昔から、テレビや漫画、映画の男性キャラクター同士をカップルにして妄想する、「スラッシュ」と呼ばれる二次創作の文化はありました。一方「やおい」は、オリジナル作品を指すことが多い気がしますね。

 

熱心なコレクターからBL出版社創設へ──

 

──2012年から、BL漫画を中心に出版されていますね。始めたきっかけは?

 

シャロン:BLにハマる前から、アート、食べ物、宗教──日本のすべてに魅了されていました。何かを好きになったらとことん追求するタイプなんです(笑)。

何から何まで吸収したくて、何度も日本へ旅行に行き……日本語を上達するためには漫画を読むのが一番手っ取り早いかな、と。

 

その頃すでに、自分でも『Xファイル』や『ロード・オブ・ザ・リング』の二次創作を書くぐらいスラッシュが好きで……って年がバレますね(笑)。

日本にも男同士の漫画があることは知っていたんですが、女性的なキャラクターが多いという印象でした。

 

ところが、いざネットで調べると、男らしくて大人のキャラクターを描くBL漫画家さんもたくさんいると知り、そこからどんどんハマっていきました。

 

南カリフォルニアで買えるBL漫画を根こそぎ買い占め、日本語でBL小説まで読んでいた時期もあったほどです。アマゾン・ジャパンでリブレのBL誌『BE・BOY GOLD』を買ったりも。すごく高額でしたけど。

 

日本に行くたびに、普通の書店では手に入らないBL漫画の古本をスーツケースいっぱいになるまで買い漁り、アメリカの空港の税関で怪しまれて、一時間以上拘束されたことも(笑)。

男同士が絡んでいるシーンを、男性職員がしげしげと眺めてましたっけ。

 

長い間、コレクターというだけで満足していたんですが、ある出来事が契機になりました。

2012年、東京都が都議会に提出した「青少年育成条例」の改定案に、漫画、アニメの「非実在青少年」も対象になるという規定が盛り込まれた出来事です。

 

そのために、私が好きだった漫画も絵が消されるものがでてきたのです。アメリカでは、読者が成人なら、お尻の穴も男性器も見ることができます!これからは、日本の漫画ではエロティックな描写が制限されていくのか……と非常に残念な思いでした。

 

それならいっそ自分で作ってみようか、と――若い頃に雑誌の編集や記者をやっていたので、本の出版までの流れはわかっていましたし、作家としての経験も積んでいましたから、アイデアも豊富でした。

 

さっそく「デヴィアントアート」(日本のピクシブのようなサイト)で、BLやスラッシュ作品を描いている人たちを見つけ、出版してみないかと話を持ちかけました。

 

日本のような恵まれた出版環境にはありませんから、作家たちにはめずらしがられ、大いに食いついてもらえました。最初は眠るまもないほど忙しかったですね。

 

 

左から、こだか和麻、新田祐克、理想の攻めを描く亜樹良のりかずのイラスト。

 

大人っぽく、男らしく。独自のBL美学を追い求めて――

 

──日本のBL作品に受けた影響について聞かせてください。

 

シャロン:こだか和麻先生の大ファンでした。関西弁が乱れ飛ぶ、『KIZUNA -絆-』シリーズはBLの魅力に目覚めた頃に夢中になった作品のひとつです。

登場人物たちもリアルで、家族を含む世界観が緻密に構築されていました。

 

新田祐克先生の『春を抱いていた』も完成度が高く、行間を読ませる描写もあってお気に入りでした。物語が進むにつれて、キャラクターたちも成長していくところも。

 

男らしくて美しい、理想の攻めを描く亜樹良のりかず先生。

亜樹良先生のキャラクターは、すごく日本人らしい顔立ちをしている――出版に携わるにあたり、こういうリアルな男性キャラクターを生み出すことをひとつの目標にしました。

 

日本人だけにとどまらず、あらゆる男性像がBLというジャンルで描かれることを期待しています。

それこそ、アフリカ系やラテン系、西欧・東欧系、太平洋系や西部開拓時代の男たち、青や茶色や紫の肌までなんでもありです(笑)。

 

──最近、アメリカで人気のある日本のBL作品があれば教えてください。

 

シャロン:ヨネダコウ先生の『囀る鳥は羽ばたかない』、 宝井理人先生の『テンカウント』、やまねあやの先生の『ファインダー』シリーズはアメリカでも人気です。

 

 

左から『囀る鳥は羽ばたかない』、『テンカウント』、『ファインダー』

 

ただし、「やおいレボリューション」の方針としては、日本の漫画やアニメの単なる模倣にはならないよう心掛けています。それですとどこにでも溢れているし、新鮮さもないと思うのです。

 

ここは誤解されたくないところなんですけど、日本の作風は大好きなんです。

ですが、あくまで欧米独自の作風で勝負したい。そしてこれは個人的な好みになりますが、“大人向けで、現実的な容姿の男性路線で”という点は徹底していきたいです。

 

とりわけ私は、東欧と南米の漫画家が好きです。ロシアやポーランドのBLアートって本当に素晴らしいですよ。

私が書いている小説『大蛇の騎士』の表紙と挿絵を、ロシア人イラストレーター、アルダリアに手掛けてもらっていますが、とても直感的で力強い。

 

 

 

 

ただ彼女のような作風は完成度が高い分、時間がかかる。ですから締切をもうけず、余裕をもって作成してもらうことで、良質な作品をと心掛けています。

この方法ですと、大規模に展開するのは難しいかもしれない。ですが、読者が熱心なファンになってくださるんです。

 

──「やおいレボリューション」はオリジナル作品にこだわりを持っているようですが…。

 

シャロン:こだわりはありますね。作品のクオリティは高くても、オリジナル作品に乗ってくれる人とは限らない。オリジナルより二次創作を描き続けていたい、という人もいますので。

 

すでにやりつくされたことを踏襲するのほど、つまらないものはない。

有名な人気作家と組むより、これまでなかなか陽の目を見なかった、ユニークで型にはまらない作り手たちに機会を提供することで、アメリカのBL業界において、常に独特な存在でありたいと思っています。

 

──BLといってもアメリカと日本では違うようですね。

 

シャロン:決めつけるのはよくないですが、日本の出版社は、より多くの読者を獲得できるものを量産しようとする傾向がある気がしますね。

 

そのせいか、軽やかで読みやすい分、複雑な世界観を構築するような作風は少ない印象です。もちろん、人気があり経験豊富な作家や漫画家は、緻密に練られた奥行のある長編を作る機会を与えられていると思いますが。

 

あと、日本のBLは体毛が薄くて細身。性格は純粋でシャイ、ちょっと臆病な男性が描かれていますね。

アメリカ人の理想とはだいぶ違う(笑)。アメリカでは登場人物は間抜けだったり、不器用だったり。そういった描写が実にリアルだったりします。

 

──キャラクターの欠落する部分が、日本人ではシャイ。アメリカ人では不器用──なんでしょうか。お国柄なのかもしれませんが、ちょっと面白いですね。

 

 

日本のコミックマーケットに近い、『コミコン』に今年も出展予定。

 

ん? BL本に群がるのは……腐男子たち!?

 

──アメリカのBLイベントでは、男性が大勢参加していらっしゃいますよね。日本では、BLは女性が女性読者のために作るというイメージが強いので、正直驚きました。

 

シャロン:男性読者は多いですね。大型コミックイベントに参加すると、男性がよく買いにきてくれて、「新作は?」と尋ねてきます。男性にはイラスト集やポスターが人気で、女性はオンラインやSNSで作品を購入してくれますね。

 

2014年にカリフォルニア州バーバンクで行われたLGBT関連のコミックイベントは、参加者のほぼ全員が男性でした。当日までは女性も大勢くるだろうと踏んでいたのですが、いざ、ふたを開けてみると、女性は私と私のアシスタントだけ(笑)。

 

とはいえ、「やおいレボリューション」の作者が、女性ばかりだと批判されることもあります。

以前、テレビ局がきたときも、『やおいにハマるストレートの女性たち』を取材したかったようですが、「私たちがストレートとは断言はできない。みんな、レインボーカラーのどこかにいるはずよ」と答えました。

 

実際のところ、「100%ストレート」な人なんてほとんどいないんじゃないかしら? 私が若い頃は、ストレートかゲイかバイかのたった三択でした。いまとなっては古い考え方です。

 

この業界で働く人はセックスをポジティブにとらえようとし、性の選択という点でも解放されていると思います。おしなべて皆と一緒であろうとする日本では、少し事情が違うかもしれませんが。

 

アメリカ人は誰しも、「自分らしくありなさい」と言われて育ちます。どちらが良いか、優れているかという話ではなく。

 

ゲイだという若い男性から、「おれたちのライフスタイルを切り売りして金を稼ぐな」と糾弾するメールをもらったこともあります。彼は明確な線が引かれていると信じていたようだけど、その境界線は考えているほど明確なものじゃない。

 

私が若い頃、成人向けのBL小説は、メーリングリストでのみ交換され、そこに加入するにも厳しい審査が必要だった――そんな時代だったんです。でもそれもみんな過去の話。

LGBTの本を堂々と出版し販売するということ自体、世の中の進歩だと言えるんじゃないかしら。

 

──「やおいレボリューション」の作品を日本で販売する予定はありますか?

 

シャロン:日本は大好きですし、私にインスピレーションを与えてくれた国でもあるので、「やおいレボリューション」の活動を知ってもらいたいですね。

 

7月に開催されるコミコン(北米最大規模のイベント『コミコン・インターナショナル』)のあと、イラスト集を制作する予定ですが、これなら翻訳作業がほとんどいらないし、日本で販売できるかもしれません。

 

コミコンでは、小規模出版社のエリア<Small Press Section>で出展する予定です。

新刊はメキシコ人漫画家の作品『タンゴ』と、アメリカ人の人気漫画家による『スィート・ベア』。そのほかにも10作品の出版と再販を予定しています。

 

「やおいレボリューション」(英語サイト)

 

 

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