2016/09/14

現役の警察官&消防士のゲイカップルが語る。「ゲイを理由に仕事を諦めてほしくない」

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「ゲイ」には、会社員、シェフ、写真家、エンジニア、学校の先生、看護士、駅員と、当たり前だがどんな職種にも存在している。

そう、警察官と消防士といった公安職にも。

 

今回、現役の警察官&消防士のゲイカップルに話を伺う機会があった。

体育会系でゲイへの風当たりが強い職場で働く彼らから出てきた言葉は、未来へ繋がるポジティブな言葉だった。

 

消防士&警察官

画像はイメージです。(C)PIXTA

 

今回話を伺ったのは、関西在住の消防士・木下さん(仮名/20代後半)と、警察官・野村さん(仮名/30代半ば)のゲイカップル。

 

二人は4年前に出会い、同じ公安職ということもあり意気投合。交際をスタートさせる。

 

 

体育会系の職場で働く、二人の苦悩とは

 

職場ではカミングアウトしていない二人。

消防士・木下さんが語る職場環境は、極めて体育会系の男社会で、ゲイにとって非常に窮屈なものだ。

 

木下「消防士って体育会上がりのチャラくて、性欲の塊のような人達が多いんです。上下関係もしっかりあるので、新人の頃は先輩からの誘いを断れずストレートの風俗や合コンにも無理矢理行ってました。それに職場での雑談は常に女の子の話ばかり、僕があまり興味ないフリをしても、『いい人いないんか?』とか、『女の写真見せろや』といった会話が日常茶飯事ですね」

 

「特に困るのは労働時間が長いことで、24時間勤務はザラです。勤務中は現場やご飯の時以外にも、訓練中や風呂も一緒なので、プライベートな事にもヅカヅカ入ってこられるんですよ」

 

また、消防士はプライベートの旅行であっても、非常時に備え申請が必要とのこと。

 

「相方とよく旅行に行くんですけど、旅行申請を出した時は、必ずみんなから『誰と旅行いくねん!?』『しょっちゅう旅行行ってるけど女でもできたんか?』みたいなことは必ず聞かれますね。そんでもって旅行から帰ってきた時は『写真見せてや!』って言われても、相方が写っていない、自分一人だけの写真を見せたりと何とか誤魔化してやり過ごして、、そんな風にプライベートにまで気を遣って生活しているが本当に苦痛です」

 

業務以外の部分でストレスが溜まり、一時は体調を崩したこともあったそう。

 

「昨年、本気で仕事が辛くて辞めようと、上司に相談したことがあります。理由を聞かれた際に、『自分は同性愛者なんです。勤務中ずっと、みんなに嘘をつき続けることがしんどいです…』と泣きながらカミングアウトしました。

 

唯一カミングアウトをした上司は、その後サポートをしてくれ、24時間体制の現場仕事から内勤の仕事に部署を変更してくれたという。

 

 

一方の相方・野村さんは、過去には本気で偽装結婚も考えたという。

 

「僕は警察官なんですけど、公務員ってすごく古い体質なんですよね。『結婚して家庭を持って一人前』という考えが根強くあります。警察官は平均的に24・5で結婚する人が多いのですが、僕は30代半ばなので、周りからは『まだ結婚しないの?』と言われ続けていますね」

 

「昔、心許せる女性と本気で偽装結婚を考えた時期もありました。ですがやっぱり”人生一度きりしかないのに、自分を偽って結婚しても本当の幸せは手に入らない”と思い、断念しました」

 

**

 

消防士の木下さんは、昔はゲイであることを受け入れることが出来なかったと話す。

 

木下「今の相方とは4年の付き合いなんですけど、初めて男と付き合った人なんです。それまでは、『ゲイを治さなきゃ』という強い思いがあって、自分自身のセクシャリティを受け入れることができませんでした」

 

相方の野村さんは木下さんについてこう語る。

「彼はゲイで、育ちも貧しく、高卒で学歴もなかったので、人一倍”普通になりたい”願望が強かったんですよ」

 

 

ゲイであることに同じく悩んできた二人だが、ゲイに対してややネガティブなイメージの強い木下さんと、逆にポジティブな野村さん。二人の違いはどこにあるのだろうか?

 

野村「先ほどの偽装結婚の時は真剣に悩みましたが、僕はゲイであること自体には誇りを持っていますね。関東の大学を出たんですけど、その時から世の中で活躍しているゲイの先輩たちを多く見てきました。彼らにはストレートにはない感覚や価値観を持っているという、良いイメージがありましたね」

「しかし、相方のように地方在住のゲイだと、もしかしたらゲイに対するネガティブなイメージを持っている人の方が多いかもしれません」

 

木下「うんうん、彼と出会ってから、だいぶ助けられましたね!この人と出会っていなかったら、おそらく消防士も辞めていただろうし、ゲイである自分を卑下し続けていたと思います」

 

野村「彼と出会った当初、ゲイの友達が一人もいなかったんですよね。なので、僕は付き合い始めてから彼にゲイアプリを勧めました。『もっと色んな人に会っておいでよ!』って。今では、『今日はアプリで知り合った誰々と会ってくるね〜』なんて会話をよくしますよ。笑」

「彼には色んなゲイの人たちと出会ってコミュニケーションをとることで、多様な価値観や生き方を学んで欲しいし、その経験は必ずや彼の財産になると思っています」

 

なんと、ゲイアプリを自ら勧める寛大な野村さん!

ゲイアプリで色々な人と出会った木下さんには、何か心境の変化はあったのだろうか?

 

木下「相方と出会うまでは、ゲイと会ってもヤって終わりだけの人が多かったんです。ですが、様々な人と出会う中で、みんな色んな仕事をしているし、その中には既婚のゲイの方や、同じ消防士もいましたし、同じゲイでもいろんな生き方があるんだなぁと体感しましたね。相方には心から感謝しています!」

 

次ページ >> 二人の思い描く理想のカミングアウトとは?

 

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