健康についてのジャーナル誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリックヘルス」が、「アメリカのマサチューセッツ州のゲイ男性の健康状態が、州で同性婚が認められる前と後の一年でどのように変化したか」についての調査を公表した。
なお調査は、アメリカ最高裁で同性婚が認められる前に実施された。
調査の結果について、ロンドン大学クイーンメアリー校で認知生物学の助教授を務める、セクシャリティーの専門家カジ・ラーマン博士は、ニュースメディアのインタビュアーとのやりとりにおいて、以下のように語っている。
インタビュアー「調査の結果について簡単に説明してもらえますか?」
ラーマン博士「マサチューセッツ州で同性婚が認められて一年が経過してから、州内のゲイ男性が、精神的な問題を抱える可能性が圧倒的に低くなったことがわかったんだ。このような状態は、マサチューセッツ州内だけでなく、同性婚が認められた他の州でも見られたよ。具体的な数字で説明すると、同性婚が認められた州に住むゲイやレズビアンの人たちが抱える健康問題の20%が減少したことがわかっているんだ」
インタビュアー「セクシャルマイノリティが抱える健康問題とはどのようなものがあるんですか?」
ラーマン博士「ゲイやレズビアンの人たちは、鬱や不安症、パニック障害や、薬物依存、自殺など、一般のおよそ2倍から3倍も精神的な問題を抱えやすいと言われているんだ。またアメリカのストレートの若者の20人に一人がホームレスと言われている中、LGBTの若者は10人に一人はホームレスだったり、1973年までは同性愛が精神疾患に認定されていたために、健康に問題があっても助けを求め辛かったりなど、様々な問題があるよ。」
インタビュアー「ゲイやレズビアンの人たちが健康の問題を抱えやすいのはなぜですか?」
ラーマン博士「まず、最初に明言しておかなければならないのは、同性愛者だから精神を病んでいるということではないんだ。同性愛者にとって今の社会はとてもストレスに溢れていて、生活の中で様々な困難が生じてしまう。その結果が精神的な健康問題を生んでいると考えているよ。生物学的な問題もあるかもしれないけれど、最も大きな原因は社会的なところにある。差別とか迫害とかね。また、マイノリティ・ストレス仮説というものもあるんだ。これは、マイノリティの人びとが「拒絶される」「攻撃される」「セクシャリティを隠さないと」と考えること自体がストレスになって、精神的な健康に悪影響を及ぼすという理論だよ」
インタビュアー「話を少し戻しますが、マサチューセッツ州の調査とどのように関係しているんですか?なぜ、同性婚を認めることが健康に良い影響を与えるのですか?」
ラーマン博士「同性婚の合法化は「同性婚は異性婚と同様に価値がある」という明確なメッセージを社会に発信している。マイノリティ・ストレス仮説の理論に従うと、もし当事者本人が結婚する気がなくても、価値を認める、平等を認めるメッセージは、当人の健康に良い影響をもたらすんだ」
インタビュアー「最後に、今回の調査結果は政策立案者に何を伝えていると思いますか?」
ラーマン博士「政策によって、人の命が救えるというということだね。特に、自殺を考えているLGBTの若者の命が。健康に良い影響をもたらす可能性などを科学の観点を用いて具体的に調査することによって、政策立案と実行にかかる費用とそれによってもたらされる良い影響を予測することができる。人々は皆それぞれ違う。だから多様性を理解し学ぶ必要があるよね。そしてそれができれば、人々の健康に良い影響をもたらすことができるんだ」