世界エイズデーにあわせて、GENXYではHIV/エイズに関する情報を発信している。
今回は、「HIV陽性になったあとの生活」をテーマにお届け。
HIV検査の重要性はわかっていても、「もしHIVだったら…どうしよう」と不安に思い、検査をハードルに感じてしまう人も多い。
HIV陽性後のリアルな生活について、認定NPO法人「ぷれいす東京」代表の生島さんに話を聞いてみた。
HIVに感染した場合、どのように治療を進めるのだろうか?
現在は医療の進歩により、昔に比べて治療薬を飲む回数が減り、通院頻度も大幅に少なくなったそうだ。
生島さん「昔は片手いっぱいに薬を飲む必要がありましたが、今ほとんどの人は1日1錠の飲み薬のみで負担が大幅に減少しています」
ちなみに通院頻度は、感染判明後を過ぎれば、2〜3ヶ月に1回という人がほとんど。
医療費は社会福祉制度を利用すれば、所得に応じて0〜2万円までで済むので、経済的な心配せずに治療を続けることができる。
さらに最近では、画期的な「注射型の治療薬」も登場したそう。
「最近実用化された『注射型の治療薬』だと、2ヶ月間薬を飲まなくても効果が持続できるものもある。毎日薬を飲むことがストレスな人は注射型に切り替える人もいますね」
HIV陽性になると、生活が激変するイメージがあるよね。
しかし、特に生活上の制限はないため、仕事、運動、食生活、アルコール、セックスなど、いままでと同じような生活を送ることができる。
そして正しく薬を飲んでいれば、ウイルス(HIV)が検出できない状態「検出限界以下」にまで下がる。
これをU=U(読み方:ユー イコール ユー)といい、この状態だと、HIV陽性でもほとんど血液中にウイルスがいない状態になるため、仮にコンドームなしでセックスしても相手にうつることはない。
正しく治療して健康状態をコントールしていれば、これまで通り恋愛やセックスも楽しむことができるというわけだ。
多くのHIV陽性者が、生涯エイズを発症することなく、一般の人とほぼ同じ寿命を送ることができる。
もちろんHIVの発見が遅れると、エイズ発症やその他の病気リスクが大幅に上がってしまう。
HIVは会社の健康診断などで自然に発見できるものではなく、自らHIV検査を受けないと診断ができない病気。
つまり定期的な検査で、もしHIVと分かったら早めに治療スタートすることが大事なのだ。
これまで紹介してきたように、もしHIV陽性になっても、今は死ぬことはないし、周りと同じ生活を送ることができる。
生島さんいわく、「そもそもHIVステータス(陽性/陰性)を気にしなくてもいいのでは?」とも語る。
「以前PrEP *のトークイベントに出演したとき、同じく出演者のゲイの方が話していたことが印象に残っています。『自分はPrEPユーザーになることで、HIV陽性者への偏見や差別が消えたんです』と話していました」
このゲイ男性が話したことは、新しくPrEPをはじめたところ、毎日1錠薬を飲む生活に慣れてきた。
よくよく考えると、HIV陽性者も毎日1錠薬を飲んでいる。
自分の健康をコントールするべく薬を飲んでいる状態、これって同じことだよね?と。
今までHIV陽性者への偏見があったものが、PrEPで定期的に薬を飲むことで理解が深まり、恋人を選ぶときにもスタータスが気にならなくなったそうだ。
「相手を選ぶ時にステータス(陰性/陽性)で狭めなくてもいいのでは?と思いますね。自分の健康をちゃんと薬でコントールしていればいい。HIV陽性者にも、いい男はいっぱいいますから(笑)」
「ただし、定期的にHIV検査を受けていることが必要なのは、いうまでもありません」
生島さんは、長年HIV陽性者の支援を行ってきた。その中でも大事なことは「HIVを身近に感じること」だと話す。
HIVを遠いものだと感じている人は、HIV陽性者への(無自覚な)偏見を持ってしまいがち。
しかし、普段からHIVや性感染症について話す人は、HIV陽性者への差別や偏見も少ないことが調査でも明らかになっている。
「HIVの話はタブー視せずに、もっと堂々と話していいと思うんですよね。そういう意味でも新しい新宿二丁目の看板は効果的だと思います」
看板とは、新宿二丁目のメインの仲通り交差点にある看板のこと。
12月から新しく生まれ変わり、HIVのメッセージが込められたものにリニューアルした。
「二丁目に訪れた人は、あそこの交差点で写真撮ったりしていますよね。道行く人々が看板を見て、自然にHIVについて会話をするキッカケになる。とても良いことですよね」
昔は「HIV=死の病」と恐れられたが、今は治療薬の進歩もあり、これまでと同じゲイライフが送れるようになった。
ぜひエイズデーをきっかけに、HIV/エイズについて、その歴史も振り返ってみてはどうだろうか。