舞台『インヘリタンス-継承-』の公演がスタートした。
ゲイテーマの舞台で、なんと前編/後編あわせて上映6時間半という超大作!
エディターが初日を観覧したので、簡単なレビューをお届けしたい。
『インヘリタンス-継承-』は、イギリス発祥の舞台作品で、現地のゲイたちにも絶賛され、その後ブロードウェイに進出。
なんと演劇界の最高峰「トニー賞」の4部門に輝いたというからすごい!
作者のマシュー・ロペス氏は、Amazonのゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』で共同監督を務めた、今最も勢いのあるゲイのクリエイターの1人。
英国王室の王子と、アメリカ大統領の息子が恋に落ちるゲイ的ラブコメで、公開週はAmazon映画史上No.1視聴を獲得した人気作だ。
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そんなロペス氏から上映権を勝ち取った気鋭の演出家・熊林弘高氏によって初上陸する。
物語は、主人公のエリックと、パートナーで劇作家のトビー、そして初老の不動産ヘンリーと、そのパートナーのウォルターの2組のカップルを中心に物語が展開されていく。
予告編はこちら。
前半は非常にコミカル。
主人公の温和なエリック、そして自意識が強めなパートナーのトビー。そして気のおけないゲイ友たちが彼の家に集まり、常ににぎわう状態。名作映画「真夜中のパーティー」を思わせる雰囲気がある。
彼らの会話は知的でウィットに富んでいて、芸術や文学の話から、同性婚や政治の話、男やセックスに至るまで。
NYマンハッタンに生きるリアルなゲイライフそのままに描かれる。
主人公エリックを演じるのは実力派俳優・福士誠治。
トビーを演じる田中俊介との絡みや、生き生きとした演技が素晴らしい。ギャグもふんだんに散りばめられ終始会場が笑いに包まれる。
そしてR-15指定ということでセクシーなシーンも豊富。
エリック×トビーの絡み、ハッテン場での猥雑な描写まで…俳優たちによる生々しく過激な演技に目が釘付け。
そんなSATCばりのニューヨークゲイライフが一転。
美しい青年アダムの登場や、ウォルターの死により、シリアスな展開へと突入していく。
エリックと親交のあったウォルターは、「田舎の家をエリックに託す」と遺言を残して病死。
その家は、かつてエイズで死期の近い男たちの看取りの家となっていたものだった。
作品の核となる「エイズ」。
80年代に起こった「エイズ禍」というと、現在の20代〜40代のゲイにとっては大昔のことに感じるかもしれない。
しかし50代以上には、リアルなものとして刻み込まれている強烈な体験だ。
そんなジェネレーションギャップは劇中でも描かれ、現代の若者と、昔を知る者とで対立していく。
本作はエイズに限らず、LGBTQの歴史、政治など、社会派なトピックが多数登場。このような社会派テーマを重くなりすぎず、エンタメ作品としてまとめ上げているのがすごい!
物語全体に緩急があり、エンタメ性とシリアスのバランスが素晴らしいのだ。
本作は、前編3時間半、後編3時間の合計6時間半の舞台。
前編だけでも楽しめるし、前後編どちらも観れるなら最高。(今回は前編だけ観たのだが、後編を予約しなかったことを後悔した。。。)
ポジティブでセクシーで痛快、こんな良質なゲイ舞台はなかなか日本で観れないはず。
東京、大阪、福岡の3都市にて上演されるため、ぜひ気になる人はチェックしてみて。