「あなたにとって、愛とは、セックスとは、何ですか?」
本来、人も愛もセックスも多様であり、個人の恋愛を他人がジャッジするものではない。
「正面×愛とセックス」は、”普通に”生きるLGBT当事者の愛とセックスについて、赤裸々に語ってもらうインタビュー連載です。
── 30代 ゲイ 自営業 ──
ーあなたのとってセックスとは何ですか
よくある話なんですけど…小学生の頃は、おまえオカマなんじゃねーのとか言われたりしてましたね。自分でもそうなのかなって?感じる事もあったんですけど、それも思い過ごしだろうと。女の子も男の子も好きだけど、この同性に対しての感情は行き過ぎた友情の一つの形なんだろうなって。高校生になって初めて彼女が出来て、もちろん彼女の事は好きだったんですよ。でもアルバイトを始めて忙しくなったりしてあんまり会えなくなって、さらに僕が全く手を出さないんで痺れを切らしたのか、キスしたいってメールをくれたんですけど。それを読んですごい引いちゃってる自分がいて。
女の子と付き合ったとしてあまりセックスしたいと思えなかっんです…とは言っても、思春期の男の子なんで。セックスをしてるっていう状況に興奮して1回は出来るんですけど、もう次はしたくない。もしかしてコレって病気なのかなって思ってました。
自分のセクシャリティを確かめたくてもそういうのを知るツールも無いし、本屋でゲイ雑誌を見付けたとしても近所の人達の目が気になって、立ち読みする事も出来なかったんで。僕が育った街はメチャクチャ田舎だったんで。それこそ自転車で端と端まで行けるくらいに狭い街だったんです、だから余計に周りの目が気になる。
それに当時バンドとかもやってたんで、その仲間といつも連んでたんですけど、そっちの方が居心地良くて恋愛とは縁遠い高校生活でした。まぁ、それ以外は普通にやんちゃというか…そういう高校生でしたね。
初体験というか、初めて男の人と裸で抱き合ったのは20歳ですね、キッカケはインターネットの掲示板でした。
20歳までに男性と女性と両方セックスしてみて、自分がどっちが好きかハッキリさせようと決めたんです。ちょっと自暴自棄な時期でもあったんですけど。工業高校卒業して就職してその流れで工場に就職したんですけど、一年くらいで辞めてしまって。でもそういうのってその地域では有り得ないみたいな、これからの人生を棒に振るんだねみたいに周りからも言われて。で、その時に好きに生きるんだって決めたのもあったんですけど、だから男性とも知り合ってみようって思ったんです。
最初は怖かったんで顔出しとかもしてなくて、半年くらいメールでやり取りしてそれから会いました。初デートでその人に家に行くことになって。その日は雨が降ってて、家にお邪魔した途端に風呂に入ったら?って言われて、なんでかな?って思ったんですよ。ゲイの男性と会うのは初めてだったんで、何が行われるかなんて想像してもなかったですし。で、言われるがまま素直に風呂に入ったら向こうも入ってきて。欲しいんでしょ?って言われたんですけど、欲しいって何が?って。それくらい何も解らなかった(笑)
その後も連絡は取り合って、お付き合いみたいなのはしてたんですけど。会ったすぐのその翌日に、また掲示板で相手を募集してたんですよ、その人が。結局は遊ばれてたんですけど。いつも急に家に呼ばれて、シモの処理だけさせられて終わりみたいな。あれ…なんか違うな…って思ってはいたんですけど、本当にウブだったんで、タイミングがくればアッチからしてくるのかな?って思ってました。
その頃はウケだと思ってたんですけど、歳をとるごとにウケが全くダメになってきて。なんでウケしてたのかなって不思議なくらい。やらされてる感が大きかったというか。まだ若かったんで、単に年上の人に引っ張っていって欲しかったというか。今思えば、恋愛が何かもよく解ってなかったし好きじゃなかったかもしれませんね、依存に近かったのかも。家族ともあまり折り合いが良くないし、高校時代の友人たちとも徐々に疎遠になって突っ張ってた分、安心できる場所が欲しかったんですよね。だからなんとなく遊ばれてるなって解ってても会ってたんでしょうね。
そっからしばらくは、じゃあ次ってならなかったですね。
ちょうど10年くらい前に「Anplagd」ってカフェが元々あったんですけど、そこで社員として働いていて。とにかく仕事が楽しかったんで、恋愛とかは全く考えてなかったですね。ただそこが閉店してしまって。それから数年は他のカフェでアルバイトしてたんですけど、そこの常連さんでゲイの方がいて。その人に誘われてセックスしたのが、ちゃんとした男性との初体験でしたね。
初めてした時は達成感もあったんですけど、とうとうやっちゃったっていう…罪悪感?背徳感?はありましたね。もう戻れないな、みたいな。その人とはお付き合いはしなかったんですけど、関係は続けていて本当に甘えさせてもらって。ゲイバーに初めて連れて行ってくれたのもその人だったし、仕事も応援してくれて。本当にお世話になりました、今でも友人としての付き合いは続いてます。
それからは急に発情しちゃって(笑)ハッテン場に行きまくってた時期がありました、多い時は週2~3回は通ってましたね。まだまだ自分に自信も無くて、話すのもあまり得意じゃなかったんで…でもハッテン場って基本的にはセックスだけが目的じゃないですか。当時はとにかく楽しかったんです、セックスが楽しかったっていうのもあるんですけど、まだ知り合いも少なくて。そこでは自分のセクシャリティに嘘を付かないでいられるし、大袈裟に聞こえるかもしれないですけど生きてるって感じられるって場所でした。そんなに喋るわけじゃないんで、セックスが唯一のコミュニケーションツールみたいな。
あと沢山の男性と関係する事で自分の存在価値を確かめてる部分もあったと思います。色んな人に求められてる自分というか…解りやすいですもんね。だから、セックスしてないと少し不安って時期でもありました。
昔は彼氏の浮気とかも絶対に許せなかったですし、一回セックスした相手でも独占欲が出たりしてたんですけど、今は無いですね全く。心と体は別って感覚が強いかもしれないです。ただ道具だとは思ってないんですけど、スポーツ?いや違いますね、じゃれあいというか。むしろ恋人とはそんなにセックスしなくてもいい。ただ恋人とのセックスと、そうじゃない相手とのセックスは違いますね。恋人とか好きな人だと相手の快楽を優先したくなる、そうじゃない相手だと自分の快楽を優先しちゃう。大きな違いはそこかな?
とは言っても今は恋人は居なくて。
去年の4月に「Anplagd」って夜カフェをオープンしてやっと一年ってところなんで、こっちに手一杯。色恋は後回しになってますね。
それとは別に、自分で自分の問題を解決出来るようになってきたっていうのもあって、そんなにセックスに執着しなくなりました。もちろん今でも時々はありますよ、気持ちが沈んでたりすると誰かの体を借りて心を補うというか…肌を合わせるとか一緒に寝るってだけでも、安心するじゃないですか。
ただ最近の若い子達を見ていて思うのは、草食系って言えばいいのかな…出会い一つにしても、昔は情報量自体も圧倒的に少なくて、SNSもアプリなんかも無くて。仲間に出会えるようになるまでに割と時間かかっちゃったり、ゲイバーに出かけるのもすごい勇気が必要だったり…ってのがあまり無いんでしょうね。妙にドライというか悟っちゃてるというか…軽い感じがするんですよね、当然それはセックスに関してもですけど。良い意味でも悪い意味でもフラットになってきてるというか。
なんでそもそも、バーじゃなくてカフェにしようかと思ったのかって言うと。所謂ステレオタイプのゲイバーとかゲイナイトとかとは、また違う世界があってもいいなって思ったんです。東京とか大阪とか、大きな都市にはそういう場も沢山あると思うんですけど、名古屋にはそういう店が無いなって思ったんで、だから自分がやろうって。
若い人達、それこそ高校生でも安心してこられる店にしたかった。
未成年なのに、お酒を飲まざる得なかったり、性的な何かを振り撒かなければいけなかったりするような場に行かないと出会いがない、みたいな風にはしたくなかったんですよ。今どきの子達からすれば、なんでそんなに重く考えてんの?みたいなのもあると思うんですよ。え?出会いなんてあるじゃん、セックスくらいすればいいじゃん?みたいな。
今は、AVでもゲイビでもポチッとしたら見られる時代じゃないですか。昔は公園とか裏山とかに落ちてるエロ本を回し読みしたり。当時は良い意味で、隠されてるから楽しいし特別って感じがあったんですけどね。あとセックスすることによって一皮むけたじゃないけど、大人になったなみたいな。心と体は別とか言っておいて矛盾してるんですけど…自暴自棄になって相手かまわず…って時期もありましたけど(苦笑)
やっぱりセックスって対人間で、大切なコミュニケーションの一つですから。
せっかくするなら楽しいと思えた方がいい、それで自分も相手も傷ついたりするのはハッピーじゃないですよね。
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