ゲイアプリにより可視化された、過剰な「男性像」
LGBTIの歴史の専門家であり、米サンディエゴ・プライドの事務局長でもあるフェルナンド・ロペス氏は、「「ストレートを装っている」ゲイ男性は、自身をゲイコミュニティに属すると捉えていない」という調査結果について「驚かない」という。
「差別を受けずに生活するために、ストレートを装うゲイ男性は当然存在するでしょう。一方で、「男らしく」見えずに目立ってしまうゲイ男性は、「ストレートとして見られる」ゲイ男性が経験することのない社会の抑圧を経験しているはずです。そのため彼らのより多くが、アクティビストに成り得ると言えるかもしれません」
またロペス氏によると、ホモフォビアの根底には、「女っぽさ」を弱さとして捉える「女っぽさへの嫌悪」が存在すると言う。
「「女っぽさへの嫌悪」が根底にあるホモフォビアは、これまでにもゲイコミュニティ内に存在しました。ただ、グラインダーなどのゲイ出会い系アプリが登場したことにより、それらの現象がより見えやすくなったのです。アプリ使用すると分かるように、多くのユーザーによる「野郎(dude)」「兄貴(bro)」などの過剰に男性化された言葉の使用が目立ちます」
「以前は、大衆メディアの風刺などで過剰に女性化されたゲイ男性が描かれ、70年代には、その抑圧に対抗すべくゲイコミュニティ内でボディービルディングが盛んに行われました。しかし、残念なことに現在のゲイ男性の多くは、自分自身を抑圧してしまっている状態といえるでしょう」