日本の男娼文化ともいうべき「売り専」にフォーカスしたドキュメンタリー映画『売買ボーイズ(原題:Boys for Sale)』が、海外のLGBT映画祭に出展され話題になっている。
『売買ボーイズ』は、新宿二丁目で「売り専」として働く男たちを取材したドキュメンタリー映画で、日本人監督の板子氏による意欲作。
今年5月にドイツ・フランクフルトで行われた「ニッポン・コネクション」にて世界初上映。7月には、米LAで行われたLGBT映画祭「OUTFEST」に出展し、見事「Fox Inclusion Outfest Feature」賞を受賞し大きな話題を呼んだ。
本作で描かれるのは、日本独自の男娼文化ともいえる「売り専」。
特に新宿二丁目の売り専といえば、「売り専バー」と呼ばれるバーに、19歳~30歳前後の”ボーイ”が客を出迎え、一緒に酒を飲み、客がボーイを気に入ればお持ち帰り(指名)するというシステムだ。
驚くべきことに、売り専ボーイたちの多くはストレート男性だという。
なぜ彼らはゲイにカラダを売るのだろうか?
ボーイたちは売り専を始めた理由について、「お金に困っているから」という回答から、「ホームレスだったから」、「親が死んだから」、「地震や津波で被害に合ったから」というものまである。
また地方から上京した若者が、狭いアパートの一室にすし詰め状態で暮らすなど、貧困な若者たちの現状が生々しく描かれている。
ストレートである彼らにとって大きな問題、それは「コンドーム無しのセックスが危険」という認識が低いことだ。
また、コンドーム無しを強要する悪質な客までいるそうで、金額を上乗せしてボーイにゆすりをかける。
このことから、日本でなかなか感染者が減少しないHIV/エイズの問題にも本作は言及している。
売り専ボーイ、ひいては日本のゲイコミュニティの問題点を浮き彫りにする『売買ボーイズ』。
本作は今後世界中の映画祭に出展予定だが、製作陣によると日本での公開は未定とのこと。是非とも日本での公開を待ち望みたい。