HIV予防法「PrEP(プレップ)」で使われる薬「ツルバダ(Truvada)」を保有する米製薬会社ギリアド・サイエンシズが、年間20万本ものツルバダを米政府に寄付することを発表した。
今月、ツルバダを保有する世界第2位の製薬会社ギリアドは、初めてツルバダのジェネリック薬を認めた。
これにより2021年よりツルバダのジェネリック品が市場に登場する。
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そんなギリアドは、ジェネリックを解禁したわずか数時間後に、年間20万本のツルバダを無償提供すると発表したのだ。ニューヨークタイムズ紙らが報じている。
今回の寄付は、アメリカ政府との協議の結果によるもの。
ギリアドは毎年20万本ものツルバダを無償提供し、少なくとも2025年までは毎年実施。もしくは2030年まで延長する可能性もあるという。
ツルバダは30日分で日本だと11万円前後、アメリカだと18万~22万円(1600~2000ドル)もする非常に高価な薬。
そんな高価な薬をなぜ20万本も無償提供できるのだろうか?
タイムズ紙によれば、その理由の一つに、今年2月にトランプ大統領が発表したHIV/エイズの撲滅計画の一部であるという。
これは、トランプ政権にて今後10年以内に米国内のHIV/エイズの新規感染の撲滅を掲げたもの。
具体的には今後5年間で75%減、10年間で90%も減少させるとうダイナミックなプランだ。
アメリカでは、年間4万人近いHIV/エイズの新規感染者がいるが、今後10年で25万人の感染を防ぐことを目標にしている。
そこで、画期的なHIV予防法として注目されているPrEPが導入されるのだ。
アメリカでは州によってPrEPを保険適用で安く購入できるが、使用率は全体の35%ほどと高い水準には達していない。
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そこでPrEPで使われる薬となるツルバダを年間20万本無料配布することで、大幅に新規感染者を食い止める取り組みのようだ。
保険福祉省長官のアレックス・M・アズール氏は、「この施策を守ることは、トランプ政権が予防と治療の道具を使うという努力の大きな一歩です。我々は2030年までにHIV撲滅を目指します」と意気込みを述べた。
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