2016/06/07

橋口亮輔 × 田亀源五郎スペシャル対談!「LGBTと映画」を語る

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───カミングアウトについて───

 

 

橋口 うちの母親なんて、未だに僕が二丁目で働いていると思っている。

「あんたもいろいろ大変だねぇ〜。いずれ手術するんでしょう?手術する時は言ってよ」っていわれますから。

 

 

田亀 まるで『ハッシュ!』の母親みたいですね(笑)

 

 

橋口 あれね、うちの母親まんまなんですよ!(笑)

母親の考えでは、ゲイの人はみんな仕事はあるけど、夜は二丁目で働いていて、いずれ手術して女性になるもんだって、未だに思っているからね。

 

 

長年ゲイ映画を撮ってきましたが、僕自身はとても奥手でした。

28・29歳の時に『二十才の微熱』を撮ったのですが、初めて二丁目に行ったのが28歳だったんです。

 

25歳で東京出てきたにもかかわらず、28歳で『二十才の微熱』を撮るんだから二丁目に行かないといけないと思って、初めて一人で二丁目に行き、初めて一人でゲイバーに入ってすごく怖かったですね。はじめてのセックスも遅かったですし。

 

あまりゲイコミュニティーにどっぷりいなかったですね。

 

ただ当時思ったのが、手のひらを返す人たちが多いなって。

『二十才の微熱』は、ゲイテーマの映画で、しかも無名の監督が無名の新人を起用して、低予算で、周りから「こんなゲイの映画誰が観るんだ?」って露骨に言われ続けました。なのに大ヒットしたもんだから、そしたら周りが手のひら返して「橋口さん〜」って寄ってきましたよ。

人って周りとバランスを保って生きているから、そのバランスが崩れて、一時おかしくなっちゃったんです。当時は悩みましたね。

 

でも良かったのが、そのあとニューヨークに行く機会があって、その時にちょうどゲイオリンピックが開催されていたんです。

真夏の熱気ムンムンとしたニューヨークで、二丁目で遊んだこともない、ろくにセックスもしたこともない自分が、日本の喧騒から逃れてそういう渦中にいたことで、自分自身について一夏中突き詰められました。

 

『二十才の微熱』でゲイであることを隠して撮っていたぐらい、当時はゲイであることを完全に受け入れきれてない自分でしたが、ニューヨークから帰ってきて180度世界観が変わりましたね。

自分を100%受け入れることができて、自分は美しいんだって思えて日本に帰ってこれたのが大きかったです。

 

 

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田亀 私の場合は18歳の時にカムアウトしました。

高校3年間片想いしていた同級生がいてずっと辛かったです。もういっそ嫌われてもいいからと、卒業時に思い切って告白しました。

告白すると「いい友達だけど、そういう風には見れないよ」ってフラれて。だけどその時吹っ切れたんです。なんで私は3年間苦しかったんだろう?って。カムアウトすることで、彼との関係が崩れてしまうのが怖かった。

 

だったら、大学では最初からゲイっていっておけば壊れる関係になることもないんだって思って、大学では最初からゲイをオープンにしていましたね。

 

 

橋口 それができない人は多いですよね。

ゲイって言ってしまったら、何が起きるか分からない、分からないことへの恐怖があるから。

 

例えば、私の通うジムで、すごくマッチョでどっからどう見てもゲイっぽいインストラクターがいるんですけど、なんかの記事で僕のことを知ったんでしょうね。

「橋口さんにちょっとご相談があるんですけど…」なんて言うもんだから、ジム終わりに喫茶店に入って話を聞くことになって、「実は…」なんてモジモジしているから、君ゲイなんでしょ?って聞くと、「ぇえ!!なんでわかったですか!?」ってびっくりしてた。いや、見るからにそうじゃんって!(笑)

 

 

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聞くと、彼はゲイ映画を見たことなければ、二丁目にも行ったこともないそう。

映画なんてTSUTAYAに行ってDVD借りればいいじゃん!って言ったら「そんなの借りようとしたら店員にゲイだって思われるから…」と。

そんなことツタヤの店員が思うわけねぇだろ!って(笑)

 

 

その後いろいろ言っても「そんなこととんでもないです。僕にはできないです…」って言うんだよね。やっぱそういう人って今でもいるんだなぁって思いましたよ。

見えないことへの恐怖でしょうね。でもそういう時って、「試しにやってごらん」って思いますね。

カミングアウトしてそれで離れていく人はそういう人なんだし、日本でゲイだからって石投げてくる人なんて滅多にいないんだから。「言ってごらんって、怖くないよ」って言いたいですね。

 

 

田亀 同じような話で、私は高校時代に一人だけゲイのクラスメイトがいたんです。普通に友達として仲良しで、二人で隣町までゲイ雑誌を買いに行ったりしていました。

大学では別々になっても、しばらくは定期的に会ってお茶していたんですが、ある時、「ゲイを辞めたい」って彼が言ってきたんです。それっきり連絡が途絶えてしまいました。

 

 

また、別の友人で、ある時自分がゲイであることを否定したくなって、彼なりにルールを決めたんです。「見るまではOK」だと。

ポルノとかゲイ雑誌を見るのはOK。だけどセックスは一切しないと。それまでセックスは大好きだったにもかかわらず。

結局、そのあと彼は宗教の方に行って、これも音信不通になってしまいました。

 

この2人の友人を見ていて思ったのは、自身がゲイであることを受け入れられなくて、煩悶し不幸になってしまう人がいる。

私は「そういうことしなくてもいいよ」って世の中に訴えたいですね。

 

また、私はゲイ漫画の中でもSMジャンルを描いているんですけど。漫画の中で、自分のSM趣味を最後まで受け入れきれない人は不幸になるんですよ。

「自分はマゾだ!」って自覚できた人はみんなハッピーになるっていう、ある日それに気が付いたんです(笑)

なので、私の作品ではポルノと同時に、「自己肯定しましょうよ」ってメッセージが含まれている。

 

 

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