突然だが、あなたには大切なパートナーがいるだろうか?
もし現在いるのであれば、愛するパートナーが死に至ることを想像したことがあるだろうか?
「パートナーの死に立ち会う」そんな壮絶な体験をした、ゲイの当事者けんたろうさんに話を伺った。パートナーを持つ人必読、ゲイカップルの実体験とは―。
けんたろう
11年間付き合い、人生を共にするはずだったパートナー
今回話を伺ったけんたろうさんは、大阪出身で現在は都内在住。
11年前に運命の彼と出会い、交際をスタート。交際から7年後には同棲も開始し、彼氏から人生のパートナーへと意識する幸せな日々を送っていた。
「彼は自分よりも6つ歳上でバリバリの仕事人間。社会的にも自立していてシッカリ者だけど、2人で過ごす時は猫のように甘えたでした」けんたろうさんの顔から笑みが溢れる。
しかし、幸せだった二人に深い闇が押し寄せる。
昨年から彼の体調に異変が生じ、大量の寝汗や発熱が続いた。通常であればすぐさま病院に駆けつけるところを、大病をしたことが無かった彼は病院に行くことを拒んでいた。 しかし、更なる体調悪化が続き、昨年末にようやく診断を受けたところ、結果はHIV。
「これが嘘だったらいいのに、夢であってほしいって…ずっと思ってました。」けんたろうさんは絶望のどん底に突き落とされた気分だった。
7ヶ月間、付きっきりの過酷な看病
日に日に体力が衰え、仕事を休まざるを得なくなった彼の為に、けんたろうさんは付きっきりで看病を行った。朝から病院で看病をし、その後仕事に向かい、夜は次の日の準備に追われる日々。心身ともにボロボロになり、会社を休業し彼の看病に専念することを決意した。
立ちはだかる『カミングアウトの壁』
今年に入り、HIV/エイズの合併症で体調が更に悪化。 ついには、担当医に「彼の家族を呼んでほしい」と言われる。しかし、家族とは疎遠で不仲だった彼は、 家族を呼ぶことを拒んでいた。
だが、彼は確実に死期が近づいている。
けんたろうさんの説得の末、彼は渋々家族に連絡を取った。電話越しでは、戸惑い怒り狂った彼の両親が、すぐに新幹線で病院まで駆けつけ、ものすごい剣幕でけんたろうさんを睨みつけたそう。
相手方の両親にしてみれば、久々に会う息子が「瀕死状態」な上に「ゲイである」現実を受け入れることが出来なかった。ましてや、死期迫る息子の隣に男がいるなんて『ウチの息子を殺した』ようにしか映らないだろう。
「カミングアウトを強要するつもりはないですが、いざという時、カミングアウトしていて良かったと 思う時が必ず来ます。」とけんたろうさんは語る。クローゼットだったパートナーに対して、けんたろうさんは以前から両親にカミングアウト済みだった為、家族の理解やサポートを受けていた。彼とは真逆の状態だったのだ。
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