あのNHK大河の題字をてがけた書道家が登場!
オープンリーゲイの著名人にフォーカスするインタビュー企画。
今回は気鋭の書道家Maaya Wakasugi氏だ。
現在フランスを拠点にグローバルに活躍しており、2017年にNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の題字を手がけ一躍ブレイク。
そんなMaaya氏に、書の原点から、書道とドラァグクイーンをかけあわせた「書道クイーン」誕生秘話、フランス生活に至るまで話を聞いてみた。
「書道」は日本人になじみ深いが、格式高いからか、やや遠い印象を持つ人も少なくないはず。
しかし、Maayaさんの書の原点は身近なところにあった。
───現在グローバルに活躍されていますが、Maayaさんの書道家としての原点とは?
Maaya Wakasugi(以下:M):私は小さい頃からゲイと自覚していましたが、今みたいに「LGBT」という言葉もない時代でしたので、周りには言えなかった。
そこでガス抜きというか、ゲイであることをどう表現するのかと考えたとき、それが書だったのです。
高校生のとき、赤塚暁月先生という恩人に出会いました。
彼女はお手本通りに書く”臨書”だけでなく、自由に書く”創作”をゆるしてくれたのです。
あるとき、「好きな文字を書いていいよ」といわれ、何を書けばいいかわからなかったので、好きな男の子の名前を書いたんです。
───書というと、難しい漢字や格言などをしたためるものかと思いきや…好きな子の名前を書いたとは!
M:書は内側から溢れ出るものなので、気が付いたら好きな人の名前をひたすら書いていました(笑)。もちろんフルネームではなく、名前の漢字一文字など。
それからというもの、個展では度々好きな男の名前が飾られています。
また、20代前半のクラブ通いをしていた頃に好きなDJがいて、その人の名前を色紙にかいて朝まで出待ちしていたこともありました(笑)。僕の書の原点はラブレターみたいなものなんです。
赤塚先生がよく『書は人なり』と言っていました。その人の生き様や心の動きが線になって形になって作品になると。
好きな人の名前を書いたことも内から溢れ出た感情。そこが原点だからこそ、言葉を超えて人に伝わるものが書けているのかなとは思いますね。
───Maayaさんといえば、書道とドラァグクイーンをかけあわせた「書道クイーン」としても活動していましたよね。なぜ書と女装という、対極にあるものをミックスしたのでしょう?
M:書道という閉鎖的な世界への反動もあってか、大学時代は女装をして街に繰り出していました。
そこで目覚めた女装と、今までやってきた書道とを組み合わせて「書道クイーン」として活動をはじめたのがキッカケですね。
当時は大御所のMARGARETTEさんやHOSSYさんなど諸先輩がたに可愛がられ、ロンドン遊学時代は女装をはじめたてだったミッツ・マングローブさんと一緒にドラァグクイーンとして活動していましたね。
女装をして「おもてなしの心」を鍛えられたことは多いですし、女装をしていた過去は隠していないです。今の時代に嘘はつきたくないですからね。
───最近は「ル・ポールのドラァグレース」の影響で、世界的にもドラァグクイーンがブームになっていますよね
M:本当にそう思います。フランスのゲイの友達もみんなドラァグレース観てますし、女装がブームというか大爆発してますよね(笑)
昔(99年頃)は、女装をしているとタクシーで乗車拒否されることはザラでしたから、その時と比べると時代は変わったなぁという感じです。
今は書道クイーンをする機会は少ないのですが、以前、化粧品会社のPOLAさんやREVLONさんからのリクエストで女装で書道のパフォーマンスをしてほしいといわれて、その時は驚きましたね。
ここにきてようやく、世間のニーズと女装がマッチングしてきたのかなと感慨深いです。
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