ーあなたにとって愛とは何ですか

友達でも恋人でも親子でも、どんな人間関係においても適度な距離感て必要だと思うんですよ。ただの好きって気持ちを愛とすり替えて、相手を縛ったり尊重する事が出来ないのは違うと思うし、必ずしも側に居なきゃいけないとも思わないんです。

好きな人に側にいて欲しいとか、好きになって欲しいとかって感情は人間なんで当然出てくるんですけど、一方的に押し付けるのは愛じゃないと思うんです。そこには適度な距離感も必要だと思っていて。ちょっと自分でも冷たいのかな？って感じる時もあるんですけど、過度に距離を縮めようとしてしまってる時ってだいたい自分を押し付けすぎてるなって。相手は完全に無視してしまってる事が多い。僕自身が、そういうふうに生きてきたからかもしれないですけど。悲しくても相手を手放さなきゃいけない時もあると思うし、だからと言ってぶつかり合うのを避けていてもダメで。

ただ父親との距離は遠すぎるなとは思ってます、もう10年くらい顔も見てないです。父親ってコンプレックスを凄く刺激する存在なんですよ。ただ世間的な正しさで言えば、自分も若くないし父親もいい歳だし、何か親孝行的なことをしてあげないといけないのかなと。昔からすごく折り合いが悪くて。実家で住んでたころなんかも、家に帰るのが本当に嫌で車で寝泊まりしたりしてたような時期もあったんですよね。だからと言って、いつまでも避けててもダメだなって。こう自分と父親の間にある蟠りをそろそろ解凍していかないといけないなって。そうしないと自分も成長できないですし。

愛ってセックスの問題よりも、より敏感に慎重に扱わないといけないかなって。身体みたいに輪郭がないから、目に見えないですもんね。

あと変な話、仏教とかで徳を積むとかって言葉があるけどそういう難しい話でもなくて。単純にその相手に対して気持ちを注ぐって事なのかなと…こう巡り巡って自分の喜びになると。例えば、1日一回でも喜ぶ顔が見たくて色々と世話焼いてみたりとか。蚊に噛まれて痒いって言ってたから、ムヒ買って帰ろうとか（笑）本当に些細な事なんですけど。

何かをしてあげたいって思った時に、ただしてあげたいと思ったらしたらいいと思うんですよ。ただそれをすることによって相手から何かを得ようとするならしないほうがいい。無償っていうと少し大袈裟かもしれないですけど、それに近い。だからこそ、相手からのありがとうって言葉がむちゃくちゃ嬉しいなって。

それが僕にとっての愛です。

言葉を変えてしまえば、それはただの偽善とか究極の自己満足なのかもしれないですけどね。

写真：宮本七生 ／ 聞き手：朴成理

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