──本作にはたくさんのセックスシーンがでてきます。セックスシーンを撮る上で気をつけたことは?
今回の映画は、他の映画では珍しく「順撮り」をしているんです。
なのでファーストキスのシーンは本当に二人のファーストキスだし、3日目の夜の初めてのセックスシーンでは二人とも初めてお互いの裸を見ました。
あの二人は、リアルタイムで体験してお互いを発見していってるのですよね。これは非常に意識して撮った点です。
また、なるべく新鮮な演技をしてもらいたかったので、テイク数もなるべく少なくした。多くてもテイク2まで。
作り込まれたセックスではなく、あくまでもナチュラルに、そして二人の間に流れる電気のようなものを映像に収めたかった。
あとはカメラもたまにピントがずれたり、構図が完璧ではない場合もあるのですが、それも含めてリアリティを追求しましたね。
──エリカ自身も役同様にレズビアンです。彼女を主役に抜擢した理由とは?
最初はインターネットでエリカのことを知って、今回の役にピッタリだと思いました!
しかし彼女は演技未経験ですし、周りの製作陣、スポンサーを説得する必要がありました。いろいろ大変でしたが、わたしは直感で彼女しかこの役は務まらないと思っていましたね。
もう一つはエリカと相性のいい相手役をキャスティングすることでした。相手役のジャスミン役を選ぶ上でいろんな女優と台本の読み合わせしたんです。
決定したナタリーは、ルックス的にも性格的にもエリカと対照的だったので、二人の相性は非常に抜群ですね。とても満足しています。
──今回エリカは初めての演技でした。彼女の演技はどうでしたか?
エリカはとても演技の吸収が早かった。
最初は演技の”え”の字もわかっていない状態で、初日は専門用語も何もわからない状態からスタートし、数日間でメキメキ上達していきました。
今回の役はエリカにとっては相当なプレッシャーがあったと思います。周りの期待も大きいし、過激なセックスシーンもある。一糸まとわぬ状態で自分をさらけ出さなければいけないので。
しかしながらよく頑張ってくれました。演技は本当に素晴らしかったです。
──自分に正直に生きてきたダラスと、固定観念に縛られているジャスミン。二人は外見だけではなく、中身も対照的ですよね
往往にして人は「枠の外を見てみる」ということを忘れがちなんだと思います。
人種、宗教、今の生活、セクシャリティなど、人によってその「枠」は違います。
そんな自分にある「枠」を突っぱらった状態を想像してみること。なにも行動に移さなくても、考えてみるだけでもいいと思うんです。
ジャスミンの場合、幼少期に女の子に興味があったのにそれを否定されて大人になった。良い子でいたい人ほど、自分の本当の気持ちに蓋をしてしまうんです。
だからこそ、自分の枠の外のことにも目を向けて見る。
もしかしたらそのこと、その人があなたの運命を大きく変えることになるかもしれないのだから思い切って飛び込んでみてほしい。それを作品のメッセージとして含めています。
──これまでのレズビアン映画というと悲恋ものが多かった。しかし本作はポジティブに描かれているのが印象的でした
ネタバレになるので内容は伏せますが、本作はポジティブに描くことを意識しています。
脚本家のステファニーはレズビアンなのですが、彼女が話すに、レズビアンの恋愛映画だと、片方が病気になったり、自殺したり、生き別れなど、見ていて辛いエンディングが多かった。
だからこそ「二人が幸せになる」というのは、本作を作る上で意識したことですね。
──本作は国際的なLGBT映画祭で高い評価を得ています。今後、LGBT映画を撮る予定はあるのでしょうか?
ぜひまたLGBTテーマの作品を撮ってみたいと思っています!
未だにあまり描かれていないと思うんですよね。LGBTの”Q”も含めて。かつ、女性監督の視点から語ったモノも少ない。
LGBTや女性の視点って、TV、映画で描かれたとしても、それが端役だったりする。
私は今後も女性目線であることに使命感を感じているので、今後の作品にもぜひ期待していてほしいですね。
『アンダー・ハー・マウス』は、2017年10月7日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか、全国順次ロードショー。