映画『クルージング』が、11月8日(金)より、シネマート新宿ほか全国劇場公開される。
最初に公開されたのが1980年なので、60年以上の時を経たリバイバル上映となる!
70-80年代のゲイコミュニティやハッテン場を描いたハードな内容から、その当時アメリカで抗議が殺到した問題作だ。
舞台は1973年から79年にかけ、ニューヨークで実際に発生した猟奇連続殺人事件。
ゲイの男たちが惨殺され、バラバラ死体の一部はハドソン川に投げ捨てられていた。被害者たちの多くは、男同士が毎夜ハードなセックスを求めて集うSMクラブに出入りしていた──。
事件に興味を抱いたウィリアム・フリードキン監督は、逮捕された容疑者への面会体験、ゲイ・コミュニティに潜入した捜査官の談話、そして自ら目にした想像を絶するSMクラブ内の狂態を脚本に盛り込み、NYアンダーグラウンドのゲイ・カルチャーを背景 にした、かつてないクライム・サスペンスを完成させた。
結果的にハリウッド映画史上初めて男同士のSMセックスを正面から描いてしまったこの作品は、同性愛差別を助長するとして猛烈な抗議活動を受け、当時は批評も興行も振るわなかった。
だが近年、クエンティン・タランティーノ、ニコラス・ウィンディング・レフン、セリーヌ・シアマといった名監督たちが本作をフェイバリットに挙げただけでなく、世界各国のクィア映画祭では、HIVが世界に蔓延する前のゲイ・カルチャーを記録した貴重な作品として再上映/再評価される機会が増えている。
『クルージング』は、後の『羊たちの沈黙』や『セブン』などに先駆けた、80年代サイコ・サスペンスの重要作であり、SMゲイ・カルチャーの洗礼を受けて揺らぐ男の性的アイデンティティと精神の闇に迫った、今なお先鋭的な野心作となっている。
ぜひ70-80年代のゲイたちの空気が閉じ込められた作品を、劇場で体感してみてはいかがだろうか。